左より:佐渡 裕 ©Peter Rigaud c/o Shotview Artists/大竹しのぶ/高野百合絵 ©Takayuki Abe/櫃本瑠音 ©Masatoshi Yamashiro/ハインツ・ホリガー ©Priska Ketterer/吉野直子 ©Akira Muto左より:アンドレイ・ボレイコ ©Michał Zagórny/ツォトネ・ゼジニゼ ©Sophia Melkidze/トーマス・ダウスゴー ©Thomas Grøndahl/クリスティアン・テツラフ ©Giorgia Bertazzi/久石 譲 ©Nick Rutter/ロバート・マクダフィー ©Artist Management Partners Worldwide LLC/上原ひろみ44文:柴田克彦問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp※2025-2026シーズンの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。 新日本フィル(NJP)の2025-26シーズンは示唆に富んだ公演が目白押し。以下、柱となる定期演奏会の要点を見ていこう。 開幕の4月は、3年目を迎えた音楽監督・佐渡裕が、師バーンスタインの作品主体のプログラムを披露する。メインの交響曲「カディッシュ」は多様な要素が交錯する力作。語りの大竹しのぶ、ソプラノの高野百合絵に合唱も加わって、「平和への祈り」が表現される。また「『ミサ』からの3つのメディテーション」は精鋭・櫃本瑠音(ひつもとるね)のチェロ独奏が要注目。加えて冒頭のベートーヴェン「レオノーレ」序曲第3番と「カディッシュ」は、1985年の「広島平和コンサート」でバーンスタインが指揮して感銘を与えた組み合わせでもある。これは、戦後80年の節目に相応しい、渾身の名演必至の内容だ。 5月は、大御所ハインツ・ホリガーが登場。オーボエ奏者、作曲家、指揮者として尊敬を集める巨匠が、自身深い影響を受けた作曲家と作品を取り上げる。ルトスワフスキの二重協奏曲では、ホリガーのオーボエと吉野直子のハープの共演が見どころ。得意の20世紀ものと新鮮な解釈で魅せるメンデルスゾーン作品の対比も興味深い。 6月は、ワルシャワ・フィルの前音楽・芸術監督アンドレイ・ボレイコが、故国ロシアの作品を聴かせる。ショスタコーヴィチの交響曲第11番「1905年」では名匠の劇的な造形が聴きもの。バレンボイムやラトルが絶賛する2009年ジョージア生まれの天才ピアニスト、ツォトネ・ゼジニゼがソロを弾く華麗なストラヴィンスキー作品もむろん大注目だ。 9月は、デンマークの名指揮者トーマス・ダウスゴーと、現代最高のヴァイオリニストの一人、クリスティアン・テツラフの共演が実現。この名手が弾くベートーヴェンの協奏曲ではハイクラスの競奏、ブラームスのピアノ四重奏曲ではシェーンベルクの編曲がもたらす色彩感が耳を奪う。 10月は、久石譲がミニマル・ミュージックの巨匠フィリップ・グラスとジョン・アダムズの作品を指揮する。ミニマル~は、作曲家・久石が「ルーツ」と語り、自作にも取り入れている手法ゆえに期待は大。グラスの「アメリカン・フォー・シーズンズ」では、同作を献呈され、世界初演で独奏を務めたヴァイオリニスト、ロバート・マクダフィーが共演し、極め付きの演奏を展開する。一方アダムズの「シティ・ノワール」は、コラージュ風&シンフォニック・ジャズ風の作品。曲調的にも久石&NJPの真骨頂が発揮される。 2026年1月は、佐渡裕がアメリカ在住のジャズ・ピアニスト、上原ひろみと共演。演目のガーシュウィン「ピアノ協奏曲ヘ調」は、ジャズ奏者に最適な上に、ノリの良い佐渡とのコラボとなれば、聴く者の心も大いに弾む。もう1曲はバルトークの「管弦楽のための協奏曲」。各楽器にソロがある同曲では、NJP楽団員の名人芸と佐渡との良き相性が明示される。 最後の3月は、佐渡裕が掲げる「ウィーン・ライン」の名作=マーラーの交響曲第6番「悲劇的」。マーラーの交響曲中、構築性や凝縮度が最も高い本作は、終楽章のハンマーをはじめ聴きどころも満載。これがどう響くのか? 期待は募るばかりだ。 また金・土午後の「すみだクラシックの扉」も開催。こちらは国や地域をテーマにした名曲プロで、佐渡裕の「イギリス・プロ」、久石譲とHIMARIの共演等、話題性抜群の公演が並ぶ。完売続出のシリーズだけにチェックはお早めに!新日本フィルハーモニー交響楽団 2025-2026シーズン 定期演奏会の聴きどころ新たな響きの地平を切り拓く佐渡音楽監督の3年目
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