©大窪道治/2024小澤征爾音楽塾小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXXIヴェルディ:歌劇《椿姫》(新制作)3/14(金)、3/16(日)各日15:00 ロームシアター京都□ ロームシアター京都チケットカウンター075-746-3201https://rohmtheatrekyoto.jp3/20(木・祝)、3/22(土)各日15:00 東京文化会館□ 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650https://ozawa-musicacademy.com取材・文:山崎浩太郎役に必要な歌唱力と美しい容姿、繊細ですが圧倒的な存在感があります。アルフレードは、情熱的だけれど未熟。そういう面をカン・ワンは表現できるし、とにかく歌がうまい。ジェルモン役のクイン・ケルシーは、キャリアの絶頂期にある世界最高クラスのバリトンなので、このプロダクションに参加してくれるのは、とても喜ばしいことです」 また、合唱指揮者に「他の誰も持っていないような知識を、数々の偉大な指揮者たちから学んで、自らのものにしている人」という、メトロポリタン歌劇場のドナルド・パルンボが加わることも大きな魅力。指揮のディエゴ・マテウスについては「プロのヴァイオリニストでもあったことが長所。音楽を表情豊かに歌い、感情を高められる。ヴェルディの音楽にはぴったりの特性」だと語る。 最後に、改めてニースにとって小澤征爾とはいかなる存在だったのか尋ねた。 「何よりも、偉大な友人です。そして非常に影響を多く与えてくれたメンターです。初めて会ったのは1980年。そのときはお互いにオペラの初心者でしたから、いっしょに学び合ってきました。これからも音楽塾を継続し、そしてセイジの魂がここにいるように続けることが、今後は大事です。今回の《椿姫》も、全員がさらなる高みを目指していく上での、ステップとなるようにしたいと思います」David Kneuss/演出小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト初のヴェルディ作品《椿姫》を上演Interview 2000年にスタートした「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト」はオーディションで選ばれた若手音楽家たちで構成されるオーケストラが、ベテラン奏者の指導を受けながら、世界的な歌手や指揮者、演出家とステージを共にする教育プロジェクト。21回目の今年は初めて《椿姫》を取り上げる。長年、塾で演出を手がけるデイヴィッド・ニースに話を聞いた。 「《椿姫》のストーリーは、私自身にとっても感情移入しやすいものでした。アメリカでは、誰と結婚するか、誰とお付き合いするかといったことに、親が介入することがありがちなのです。特にお金のことがからむと、口出ししてくることが多いですから。 そして、もっと生きられるはずの人が不治の病で亡くなることに、周囲の人がどう反応するか。これが物語の重要なテーマだと思います」 新制作のプロダクションは、1950年代の設定だというが、その意図とは? 「私はメトロポリタン歌劇場などで70回ほど《椿姫》の上演にかかわってきました。そこで学んだのは、豪華にすればいいというものではないということです。《椿姫》のストーリーは、とてもシンプルで、情熱的なラブ・アフェアですね。だから、歌手が素直に演じるだけでとても感動的なものになる。それなのにセットなど視覚的な効果を求めすぎると、焦点がぼやけてしまう可能性が高くなる。そこで今回は、1950年代のパリに設定しました。モノクロ映画、『フィルム・ノワール』の時代です。スタイルが洗練されていて、背景に注意をそらされることなく、登場人物に焦点をしぼりやすいのです」 歌手陣は、アルメニア出身のソプラノ、ニーナ・ミナシアンをはじめ実力者たちが集まった。 「ヴィオレッタを歌うニーナ・ミナシアンには、この32デイヴィッド・ニース
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