eぶらあぼ 2025.2月号
123/141

それでも踊るそれでも踊る者たちのために者たちのために第124回 「香港のフェスで『開かれた評論』を熱く語った」Profileのりこしたかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』『ダンス・バイブル』など日本で最も多くコンテンポラリー・ダンスの本を出版している。「ダンス私塾オンライン」開設。皆様の参加をお待ちしております!のドラマトゥルクのメリッサ・レウン Melissa Leungさん。オレはプログラムの概要、内容や助成など赤裸々に語った。 評論を書くメディアが紙しかなかった時代、執筆者も掲載量も限られたため、評論誌にはエリート意識や仲間意識という閉鎖性がついて回った。やがて紙媒体の専門誌の休刊が相次ぐと、彼らはとたんに「書く場がない」と騒ぎ始めたが、冗談じゃない。 自由に無限に書けるネットの時代、「書く場」は格段に増えているのは自明だろう。「エリートの権威付け」がなくなっただけのことだ。これからは「開かれた評論の時代」なのである。 質を担保するために必要なのはエリート仲間意識ではなく、教育である。オレが「舞踊評論家【養成→派遣】プログラム」を始めたのはそのためだ。応募に際してキャリアは一切問わないので、プロの評論家から学生、建築家や教頭先生など、多様な才能が集まっている。 ⋯⋯と語ったところ、教授の一人は「うちの学校でも授業してほしい」と言ってくれ、鋭い質問も多く出た。 HDX芸術監督のダニエル・ユン Daniel Yeung は、現役のダンサー・振付家だが、じつは評論家としても有名な存在なのである。そういう芸術監督だからこそオレを呼んでくれたのだろう。今年はこうした輪を広げていくことにも尽力していきたい。 新年あけましておめでとうございます。 2024年は、新刊上梓やオンラインダンス私塾や「舞踊評論家【養成→派遣】プログラム」(以下「養成プログラム」)など新しい挑戦の年だった。 で、先月号でも述べたように、12月には、この「養成プログラム」に関心を示してくれた香港のフェスに招かれて行ってきた。 「香港ダンスエクスチェンジ(HDX)」は隔年開催の香港を代表するフェスだ。マカオの姉妹フェスと連携して行われる。 アジア各国はもちろん世界各国からダンサーとディレクター達が集まった。プログラムは非常に多彩で魅力溢れるものとなった。香港のアーティストだけでも、馬師雅(アリス・マー)『溺』は冒頭、舞台一面の黒い布の中から逆さの足が伸びているインパクトのある舞台。HOTPOTでも上演された邱加希(KT ヤウ・カーヘイ)『The Moment 刻』は裸体モデルになるデッサン会に母親や元カレを招き、自分をさらけ出す覚悟が伝わる。李思颺(イ・ジャスティン)『一個人∞共舞』は、同じ曲で踊る男女のソロ2つをひとつの作品として見せた。また伝説的なダンサー・梅卓燕(ムイ・チェックイン)の『Whispering Flower』は伝統的な楽器と真っ赤な傘を効果的に使った。 香港以外でも本連載で以前書いたラオスのオレ・カムチャンラや、イタリアのカンパニア・ベランダ、イスラエルのアナベル・ドヴィーユなど充実。特に北京の龔興興(ゴン・シンシン)& 柏樺(フア・バイ)『外套』は、身体能力の高い男性ダンサーの高速で変態的な動きが強烈な印象を与えた。日本からも髙瑞貴、黒瀧保士が参加した。 で、オレのレクチャーだが海外ゲストに加え香港演藝學院(HKAPA)の教授や生徒も聴講した。モデレーターは香港を代表する城市當代舞蹈團(CCDC)120乗越たかお

元のページ  ../index.html#123

このブックを見る