葉J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第一巻、同第二巻□□□CDCDCDCDブラームス:交響曲第1番、同第2番/R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」収録:2024年8月、キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)(ライブ)ユニバーサル ミュージックUCCD-45032/3(2枚組) ¥4400(税込)ベートーヴェン:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第9番「クロイツェル」/シューマン:「ミルテの花」より第1曲〈献呈〉/トイヴォ・クーラ:無言歌/グリーグ:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番/ドビュッシー:2つのロマンス/武満徹:妖精の距離 他森下幸路(ヴァイオリン)川畑陽子(ピアノ)ナミ・レコードWWCC-8025 ¥3300(税込)コジマ録音ALM-9273,9274,9275,9276(4枚組) ¥5500(税込)ベンダ:チェンバロ協奏曲 ヘ短調、同ロ短調/C.P.E.バッハ:スペインのフォリアによる12の変奏曲、「チェンバロと管弦楽のためのソナチネ」よりアンダンテ/W.F.バッハ:シンフォニア ニ短調、チェンバロ協奏曲 ニ長調フランチェスコ・コルティ(チェンバロ/指揮)イル・ポモ・ドーロArcana/ナクソス・ジャパンNYCX-10504 ¥3300(税込)110J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第一巻・第二巻/遠藤志ブラームス:交響曲第1番&第2番 他/沖澤のどか&サイトウ・キネン・オーケストラ妖精の距離/森下幸路&川畑陽子極端の時代、多感様式の音楽/フランチェスコ・コルティ&イル・ポモ・ドーロブラームスの2つの交響曲は、沖澤がネルソンスの代役として指揮台に上がった2024年のライブ録音。第1番は、重心低く、しっとりと湿度をもった響き。終楽章は適切な表情付けやテンポで、自然な高揚感を作り出す。第2番は、よりしなやかな運び。楽器の響きを溶け合わせ、終楽章の展開部など、影がそっと差しかかるような色彩の移ろわせ方は見事だ。R.シュトラウスの「ドン・ファン」は、同年の首席客演指揮者としての初の演奏会から。完成度はこちらが高い。鋭いフレージングから官能的に歌わせ、無常観を漂わせるラストまで、より細部に神経が行き届いた演奏だ。(鈴木淳史)武満徹の「妖精の距離」を表題作としている当該盤は、初心者向けのコンセプト・アルバムであろうか? その解釈に立ち入ることは避けるが、単なるオムニバス小品からなる作品集ではない。アルバムの「核」は2つある。前半のベートーヴェンの「クロイツェル」と後半のグリーグである。それぞれその後には音楽史の時系列に沿った作品が並ぶ。最も印象に残ったのはベートーヴェンである。このヴァイオリン・ソナタは規模も大きく技術的にも高度だが、常にピアノ・パートが重くなってしまう傾向にある。が、森下、川畑の演奏では戦略的な「黄金の均衡」が実現している。 (大津 聡)遠藤志葉はバッハ研究で博士号を取得したピアニスト。第9回J.S.Bach国際音楽コンクール ピアノ部門では第4位に入賞し、ドレスデン音楽大学でも研鑽を積んだ。演奏活動もバッハを主軸に置き、鍵盤楽器のための作品はもちろん、編曲作品も演奏するなど、様々な角度からこの作曲家に取り組んでいる。そんな彼女が満を持してリリースしたのが本盤。すべての楽曲に真摯に向き合い、旋律線、構造、あらゆる要素を鮮やかに聴き手へと届ける誠実な演奏で、バッハへの深い愛情が浮かび上がってくる。理知的でありながら、それだけにとどまらず、歌心にもあふれ、様々な可能性を楽曲から引き出している。(長井進之介)フランチェスコ・コルティとイル・ポモ・ドーロのコンビは既に、ペンタトーン・クラシックスにJ.S.バッハのチェンバロ協奏曲集を録音している。コルティの豪壮さと繊細さを兼ね備えた独奏に厚みと色彩を併せ持つオーケストラが柔軟に絡み合う、屈指の出来栄えだった。両者のコラボの続編は、G.ベンダ、W.F.およびC.P.E.バッハらの多感様式あるいは疾風怒濤の作品群。かつてバロックから古典派への過渡期的な扱いを受けていたこれらの楽曲から、むしろ形式を逸脱し「個」の激しい感情が噴き上がる、革命的な美の世界を読み取り描出している。特にベンダの2曲は高密度で圧巻。来日公演が楽しみだ。(矢澤孝樹)沖澤のどか(指揮)サイトウ・キネン・オーケストラ遠藤志葉(ピアノ)
元のページ ../index.html#113