第50回九州公演 日本フィル in KYUSHU 2025記念すべき年、シェフが王道プログラムを携え待望の登場!カーチュン・ウォン ©Ayane Sato仲道郁代 ©Kiyotaka Saito宮田 大 ©NIPPON COLUMBIA©Seiichi Saito現代に見る2大作曲家の新たな魅力57金子三勇士 ピアノ・リサイタル〜時空を超えた運命の出会い〜 ベートーヴェン × リスト文:林 昌英文:飯田有抄 日本フィルが毎年行っている九州公演が、2025年、2月に開催される。1975年から開始され、今回で第50回という大きな節目を迎える一大イベントで、各地の市民が自主的に実行委員会を結成し、運営しているという点も特筆される。半世紀もの間、大切な企画として地元で愛され、育てられてきたのである。今回は長崎、大牟田、北九州、大分、都城、鹿児島、福岡、佐賀、熊本で9公演が行われる。 記念の回にふさわしく、首席指揮者のカーチュン・ウォンが九州公演に初帯同して、全公演を振る。ソリストはピアノの仲道郁代とチェロの宮田大という、名実ともにトップクラスの名手たちが交代で出演。ショパンのピアノ協奏曲第1番とエルガーのチェロ協奏曲で、名旋律をたっぷりと聴かせる。 日本フィル首席指揮者にカーチュン・ウォンが就任して以来、高水準かつ個性的なパフォーマンスを維持しており、 ベートーヴェンとリスト、クラシック音楽の巨頭であるこの二人を、真っ向から対峙させようというリサイタルを、金子三勇士が横浜みなとみらいホールで開く。題して「~時空を超えた運命の出会い~ ベートーヴェン × リスト」。 デビュー時より、自身のルーツでもあるハンガリー生まれの音楽家リストの魅力を伝えるべく、多様な視点からアプローチを続ける金子。アイドル並みの人気を誇ったピアニスト時代のみならず、宗教者としても教育者としても影響力を持ったリストの人物像を紹介し続けてきたが、今回は「時代のパイオニア」として、リスト自身も大きな尊敬を抱いたベートーヴェンとのプログラミングを披露。前半は、リストの華麗なる代表曲「ラ・カンパネラ」と「マゼッパ」を取り上げ、ベートーヴェンの「熱情」ソナタと組み合わせる。単に技巧的で熱血な演奏に留めないのが金子だ。「理系作曲家の対比」という目の覚めるような解釈とバランス感覚で楽曲を再構築、新たな姿を提示し続け、東京の聴衆を唸らせている。今回のツアーはムソルグスキー(ラヴェル編)の組曲「展覧会の絵」とチャイコフスキーの交響曲第5番という超名曲を用意。彼らのチャイコフスキーは筆者も聴く機会があったが、この人気作が2/8(土)~2/19(水) 長崎、大牟田、北九州、大分、都城、鹿児島、福岡、佐賀、熊本※公演の詳細は右記ウェブサイトでご確認ください。 https://japanphil.or.jpコンセプトも打ち出し、ロジカルに二人の音楽的特性を捉え、コントラスト豊かに提示してくれることだろう。 さらに注目すべきは、本公演限りの特別編として演奏する、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」ピアノ版だ。リストはベートーヴェンが交響曲で成し遂げた功績を広めるべく、ピアノ1台ないし2台で演奏可能な編曲作品に仕立てたが、今回のアレンジには金子自身の手も加わる。まさに時空を超えて出会った三人の音楽家による「運命」。そこに今を生きる私たちが何を聴き出すことができるのか、非常に楽しみである。2/22(土)14:00 横浜みなとみらいホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp初演かのように洗い直され、かつこれしかないと思わせる説得力で、全編が発見と興奮の連続だった。カーチュンの清新かつ緻密、求心力の強い指揮ぶりは、名曲でこそ存分に発揮される。このコンビの新鮮な熱気にあふれた演奏は、九州でも旋風を起こすに違いない。
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