eぶらあぼ 2025.1月号
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→C 松島理紗(ソプラノ)□□□□□□□太田 弦 ©ai uedaアレクサンダー・ガジェヴ ©Andrej Grilc太田 弦(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団若き才能が共鳴するブラームスのコンチェルト東京オペラシティ B声でたどる現代ドイツ音楽シーンの諸相53文:飯田有抄文:柴辻純子 新日本フィルハーモニー交響楽団が、広く愛される名曲を中心に届けるマチネのコンサート・シリーズ「すみだクラシックへの扉」。今回のプログラムは、ドイツ音楽の情熱的かつシリアスな表情、そして爆発的なエネルギーとを聴かせる演目だ。前半はブラームスのピアノ協奏曲第1番ニ短調、そして後半はベートーヴェンの交響曲第5番「運命」である。 本公演でタクトをとるのは若手実力派の指揮者、太田弦だ。2015年の東京国際音楽コンクール〈指揮〉第2位・聴衆賞を受賞以来、国内主要オーケストラから期待と信頼を寄せられ、端正かつみずみずしい音楽創りで人気を集める。そして協奏曲のソリストは、21年のショパン国際ピアノコンクール第2位および聴衆賞で飛躍的に知名度を高めたイタリア生まれのピアニスト、アレクサンダー・ガジェヴである。新日本フィルの公演には初登場となる。 東京オペラシティの「B→C」シリーズ、1月はドイツ・ケルンを拠点に活躍するソプラノの松島理紗が、刺激的かつ挑戦的なプログラムで登場する。高校から大学院まで桐朋学園で学び、ウィーン市立音楽芸術大学大学院を修了後、現在はケルン音楽舞踏大学大学院現代音楽科で研鑽を積む。今回のプログラム、松島は全体のコンセプトを「静けさに耳を傾ける。耳を開く。音の素材、その美しさを楽しむ」とする。2つのバッハ作品(「コーヒー・カンタータ」「ヨハネ受難曲」からのアリア)以外は、すべて1950年代以降に書かれたもの。特殊唱法は封印し、伝統的な発声法で勝負というのが彼女のこだわりだ。 前半は、同時代のライマン(1936~2024)、ピンチャー(1971~)、ムンドリー(1963~)の声や言葉の響きを探求する作品が並ぶ。そこにフランクフルトを拠点に活動するピアニスト・作曲 太田とガジェヴは同い年で、ともに1994年生まれ、30歳を迎えるアーティストだ。太田が2015年に東京国際音楽コンクール〈指揮〉で注目を集めたその年、ガジェヴは浜松国際ピアノコンクールで優勝を飾り、日本および世界にその名を知らしめた。同時期に音楽家の小倉美春への委嘱新作が加わり、現代ドイツの声楽作品の諸相が示される。 後半は、戦後のオペラを代表するヘンツェ「若い恋人達へのエレジー」(1959~61/87)やB.A.ツィンマーマン「兵士たち」(1958~60/63~64)のほか、イタリアの巨匠ノーノ「イントレランツァ(不寛容)1960」(1961)、グラインドボーン音楽祭やメトロポリタン歌劇場の上演で注目のブレット・ディーン「ハムレット」(2013~16)を取り上げるのが非常にレア。松島の鋭い感性と豊かな音楽性が発揮される話題性十分のコンサートだ。パワフルでドラマティックな歌唱に期待したい。ピアノは青木ゆり。1/21(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp家として一つのターニングポイントを迎えた二人が、若き日のブラームスによる熱量たっぷりの協奏曲で、どのように意気投合し、重厚な音楽を聴かせてくれるのか、非常に楽しみだ。そして何度聴いてもその革新性に胸を打たれる「運命」にも、じっくりと耳を傾けたい。すみだクラシックへの扉 第29回3/14(金)、3/15(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp

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