eぶらあぼ 2025.1月号
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©Abby Mahler前田妃奈 ©Taira Tairadateハン・ジェミン ©Shin Joong Kimチョン・ミョンフン ©上野隆文チョン・ミョンフン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団同時期に作曲した楽聖の名品をピアノ弾き振りと渾身のタクトでクァルテット・ウィークエンド 2024 - 2025 クァルテット・インテグラシリーズ最終回を「3大B」の各3番で締めくくる48文:飯尾洋一文:林 昌英 東京フィルの2月定期に登場するのは、名誉音楽監督のチョン・ミョンフン。ベートーヴェンの「ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲」、および交響曲第3番「英雄」をとりあげる。 ベートーヴェンの三重協奏曲は3人のソリストを必要とする珍しい作品だが、今回、ピアノを務めるのはチョン・ミョンフン自身。つまり弾き振りだ。三重協奏曲で弾き振りをする例はなかなかないと思うが、マエストロは1974年チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門で第2位を獲得したピアニストでもあり、室内楽でピアノを弾くこともしばしば。チョン・キョンファ(ヴァイオリン)、チョン・ミョンファ(チェロ)とともに「チョン・トリオ」を組んで、この曲をレコーディングもしており、いわば自家薬籠中の物といえる。今回はヴァイオリンを前田妃奈が、チェロをマエストロ推薦のハン・ジェミンが務める。前田は2022年のヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールの優勝者。ハン・ジェミンは21年 クァルテット・インテグラの第一生命ホール「3大B」シリーズが、全3回の最終回を迎える。“弦楽四重奏界の「3大B」”はベートーヴェン、バルトーク、ブラームス、と掲げることで、圧倒的な存在と認められてきた前2者に劣らぬ価値がブラームスの四重奏曲にもあることを、広く再認識させてくれた好企画である。 なにより強調したいのは、いまクァルテット・インテグラが弾くなら、どんな楽曲でもその魅力を十全に味わえる、充実の体験が約束されていること。近年の彼らの実演は毎回が話題となっていて、例えば秋の王子ホールでのシューベルトは、勢いに頼らず楽曲に秘められたエネルギーと情熱を明らかにする名演で、既に達人のような域に達していた。バルトーク国際とミュンヘン国際コンクールでの活躍から、ロサンゼルスのコルバーン・スクールでのレジエネスク国際コンクールに史上最年少の15歳で優勝した新星。若い奏者たちの躍動も楽しみだ。 交響曲第3番「英雄」では、ベートーヴェンを音楽家としての原点とするマエストロが、確信に満ちた演奏を聴かせデンス・アーティストとしての学びと経験、チェリストの交代など激動の数年を経て、進化のスピードをむしろ上げているかのよう。 この最後の「3大B」は各第3番。優しさと機知にあふれた名品のベートーヴェン、短い時間に無二の個性が凝縮された傑作のバルトーク、不思議な透明感と複雑なテクスチュアを備えたユニークな魅力作のブラームス(ヴィオラの活躍も注目!)。この曲順自体が彼らの1/11(土) 14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 https://www.triton-arts.netてくれることだろう。三重協奏曲と「英雄」は同時期の作品であり、ともに1804年の同日にパトロンのロプコヴィッツ侯爵邸で試演された作品でもある。中期ベートーヴェンの燃え上がるような創作力が伝わってくる好プログラムだ。意気込みと自信を示すものだし、得意のバルトークはもちろん、構築の難しいブラームスこそ決定的体験ができそうな期待が膨らむ。クァルテット・ファンは聴き逃がせない。第1010回 オーチャード定期演奏会2/24(月・休)15:00 Bunkamura オーチャードホール第1011回 サントリー定期シリーズ2/25(火)19:00 サントリーホール第167回 東京オペラシティ定期シリーズ2/26(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール 1/7(火)発売問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 https://www.tpo.or.jp

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