eぶらあぼ 2025.1月号
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ペトル・ポペルカ ©Khalil Baalbaki湯本亜美 ©Ayane Shindoラデク・バボラーク ©Lucie Cermakov兼重稔宏 ©Taira Tairadateペトル・ポペルカ(指揮) NHK交響楽団欧州を席巻するマエストロがWシンフォニエッタで初登場を飾るドイツの名門楽団で要職を務める実力者を知る好機到来!47ランチタイムコンサート Vol.131 特別企画 湯本亜美(ヴァイオリン)Frei Aber Einsam ――ブラームスという人文:飯尾洋一文:柴田克彦 楽壇から熱い注目を浴びるチェコの気鋭、ペトル・ポペルカがN響の指揮台に初めて登場する。ポペルカは2022年に東京交響楽団にマティアス・ピンチャーの代役として出演し、センセーショナルな成功を収めた。24年に首席指揮者兼芸術監督を務めるプラハ放送交響楽団と来日し、覇気にあふれた名演を披露してくれたのも記憶に新しい。ウィーン交響楽団では24/25シーズンから首席指揮者に就任するなど、急速に活躍の場を広げている。 N響との共演にあたって、ポペルカは意欲的なプログラムを用意してくれた。ツェムリンスキーの「シンフォニエッタ」で始まり、ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」で終わるという、“ダブル・シンフォニエッタ・プログラム”だ。間にはさまれるのは、ラデク・バボラークの独奏によるリヒャルト・シュトラウスのホルン協奏曲第1番と、ドヴォルザークの交響詩「のばと」。前半がウィーン・ トッパンホールの「ランチタイムコンサート」といえば、弦楽器だけでも日下紗矢子、山根一仁、三浦文彰、宮田大等のスター奏者が若き日に出演した、正真正銘の登竜門。この1月、同公演に「特別企画」としてヴァイオリンの湯本亜美が登場する。彼女は、東京藝大を経てドイツで学び、ゾフィ・シャルロッテ王妃国際コンクール優勝ほか複数の賞を受賞。そして、2017年シュターツカペレ・ドレスデンの団員となり、21年12月から同楽団の第2コンサートマスターを務めている。すなわち世界屈指の名門楽団の要職にある実力者だ。 「弦のトッパン」と称される目利きの同ホールでは、以前から「ランチタイム」出演を願っていたもののタイミングが合わず、2日前の「ニューイヤーコンサート」出演のために帰国する今回、ようやく公演が実現した。 演目も実に興味深い。まずは「F.A.E. ソナタ」。提唱者シューマン、弟子のプログラム、後半がチェコ・プログラムの二部構成ともみなせる。バボラークのソロは今回も、大きな喜びと驚きをもたらしてくれることだろう。 ツェムリンスキーの「シンフォニエッタ」を聴く機会は貴重だ。後期ロマン派スタイルの作品で知られている作曲ディートリヒと20歳のブラームスが合作し、名手ヨアヒムに捧げられた作品で、ブラームス作の「スケルツォ」だけが有名になっている。経緯や曲名こそ名高いが、全曲の生演奏は極めて稀。今回は、通しで聴いた時の感触、ドイツ・ロマン派の面々の共通性と各々の個性を肌で感じる貴重な機会となる。もう1曲1/22(水)12:15 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.com家だが、この曲は新古典主義の様式をベースにした後期の作品。一方、ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」は、金管楽器の壮麗なファンファーレを特徴とする独創的傑作。両者の性格はまったく対照的だが、ポペルカはN響とどんなサウンドを生み出してくれるのだろうか。はブラームスのヴァイオリン・ソナタ第3番。巨匠円熟期の劇的な名作を続けて聴いて、同分野の変遷を実感できる趣向もまた嬉しい。さらにこれは、ライプツィヒ留学経験の長い盟友、兼重稔宏のピアノあってこその選曲。ドイツに長く住んだ二人による本格派のアプローチをとくと堪能したい。第2031回 定期公演 Aプログラム 2/8(土)18:00、2/9(日)14:00 NHKホール問 N響ガイド0570-02-9502 https://www.nhkso.or.jp

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