eぶらあぼ 2025.1月号
39/137

©Kazuhiko Suzuki取材・文:長井進之介 「食と温泉の国」山形を拠点とし、“ここでしか聴くことのできない響き”を届けるべく多彩な活動を展開している山形交響楽団。2024年も意欲的なラインナップによる定期演奏会を行ってきたが、25年の注目公演や最近の山響について、常任指揮者の阪哲朗に話を聞いた。 「まずは『演奏会形式オペラシリーズ III』の《トスカ》ですね(2/2)。これまで《ラ・ボエーム》や《椿姫》といった、親しみやすい作品を上演してきました。今後オーケストラ、そしてお客様にオペラをさらに深く知ってもらうために何をやるべきかといろいろ考えました。《トスカ》はプッチーニの作品の中でも一、二を争う傑作ですし、上演時間、登場人物など色々な面で非常にコンパクトにまとまっているので良いのではないか、そしてそこに山形交響楽団ならではの機動力やアンサンブルの緻密さをマッチさ36せることができればと考えました」 今回の《トスカ》、合唱には山響アマデウスコアをはじめ、山形県立の高等学校が3校、さらに児童合唱として村山市立楯岡小学校合唱部が参加する。地元に密着した活動を展開している山響ならではの試みである。 「次の世代を担う子どもたちに劇場の舞台で歌う楽しみや喜びをぜひ感じてほしいのです。舞台にあがって共演した経験があるのとないのとでは、その後の音楽との向き合い方は大きく変わると思います。たとえば“昔オペラで歌ったことがあるから『第九』にも出てみようかな”というモチベーションにもつながるはずです。だからこそ合唱には若い世代の方々に参加していただくようにしています」 《トスカ》は、これまで山響が上演してきた作品よりもさらにオーケストラが雄弁であり、場面転換も劇的。常任指揮者・阪 哲朗が語る山形交響楽団のトスカ

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る