©Tsutomu Yagishita取材・文:長井進之介倒的なアンサンブル力をもったピアニストである。 「もともと室内楽は大好きでよく演奏してきました。またピアノ協奏曲についてはリーズ国際ピアノコンクールで第2位をいただいてから演奏の機会が増えましたね。特に昨年は各地で多くのマエストロ、オーケストラと共演し、たくさんの経験を積むことができました。実践的にピアノとオーケストラの対話の仕方やその魅力を学ぶことができたのだと思います。室内楽の延長でできることもあれば、また違うところもあり、そのバランス感覚が特にわかってきました」 今回のコンサートで共演するのは東京交響楽団。浜松国際でも演奏を共にしたばかりである。 「とてもフレキシブルなオーケストラ、という印象です。こちらの望む音楽の流れを敏感に察してくださります。バルトークのときも、音楽の持つ力を皆さんと一緒に共有して、そのなかに入り込んで演奏できました。またマエストロの出口大地さんとは初共演ですが、年齢が近いということもあって、密にコミュニケーションをとりながらより深く音楽をつくっていけると思います」 浜松国際ではあえて全くレッスンを受けずに臨み、一人の芸術家としての存在感も示した。今後も様々な挑戦や演奏で聴衆を強く魅了することであろう。今回のコンサートはその大きな一歩となるはずだ。Kaito Kobayashi/ピアノ浜松国際入賞を経て、思い出深いショスタコーヴィチを披露Interview 小林海都は、2021年9月にイギリスで行われた第20回リーズ国際ピアノコンクールにて46年ぶりに日本人歴代最高位の第2位を獲得し注目を集めたピアニスト。この11月には浜松国際ピアノコンクールで第3位入賞を果たし、さらなる活躍が期待される彼の演奏を、2025年1月、ミューザ川崎シンフォニーホールで聴くことができる。曲はショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番だ。 「はじめてオーケストラと弾いたピアノ協奏曲で思い出の曲です。小学校6年生のとき、『かながわ音楽コンクール』小学5・6年生の部でいただいた最優秀賞の副賞で演奏しました」 演奏機会の多い作品ではないが、当時から小林はこの曲に惹かれるものがあったという。 「当時、いくつか候補を出したのですが、そのなかで圧倒的な第一希望でした。ショスタコーヴィチらしさの中に、親しみやすさも兼ね備えた楽曲で、独特な世界観があります。子どもながら、それに夢中になっていました。演奏会が秋だったこともあり、小学6年の夏休みはハチマキを巻いて、大汗をかきながら練習していましたね。今回のコンサートでこの曲をご提案いただいたときはとてもうれしかったです。最初に弾いたときと、いまの私に見えている世界はかなり違うものになっていると思うので、自分自身どんな演奏ができるかとても楽しみです」 小林は、浜松国際ピアノコンクールの本選では難曲であるバルトークのピアノ協奏曲第3番を選択。第3次予選でもモーツァルトのピアノ四重奏曲第2番で見事な演奏を披露していた。ソロはもちろんだが、圧32ミューザ川崎シンフォニーホール & 東京交響楽団名曲全集 第203回1/18(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール□ ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200https://www.kawasaki-sym-hall.jp小林海都
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