eぶらあぼ 2025.1月号
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曽 4月の見もの・聴きものル・オペラで上演した実績もあり、決して無謀な選曲というわけではない。むしろ、超絶技巧を持つベルリン・フィルをギリギリ絞り込んだプッチーニがどう心に響いてくるのか、これまたサロネンの「ホヴァンシチナ」とは別の未知の魅力がある。なお、ペトレンコは他にベートーヴェンの「第九」を演奏するほか、客演指揮者としてはマケラとフルシャが起用されている。一時はベルリン・フィルからダメ出しを食らったというマケラがどう変身して帰ってくるのか? ベルリンの「フェストターゲ2025」は、本来ならば新音楽監督となったティーレマンが全般を仕切るところだろうが、就任がかなり急だったため、スケジュール的に2025年の「フェストターゲ」には登場できなかったものと思われる。そのため、ウィリス=ソレンセン主演のベッリーニ「ノルマ」などを用意してはいるものの、ややインパクトに欠ける印象もある。では、ティーレマンはどうしているかというと、4月には、ウィーン国立歌劇場でR.シュトラウス「アラベラ」とワーグナー「ローエングリン」を振り、さらにはウィーン・フィルの定期にも登場するという、まさにウィーン三昧状態。ティーレマンは2025年秋にベルリン州立歌劇場でワーグナー「リング」を上演するとの噂もあり、次のシーズンからがベルリンでの本格始動となるようだ。フランスの「エクサン・プロヴァンス復活祭音楽祭」□□□□□□ウィーン国立歌劇場◎4月1日 モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ 指/P.ジョルダン、演出/B.コスキー、出/E.デュピュイ、A.イェルクニカ、L.オルダー、E.ロチャ、E.ダンジェロ◎4月2日 モーツァルト:フィガロの結婚 指/P.ジョルダン、演出/B.コスキー、出/L.ネイヴァ、H=E.ミュラー◎4月3日 モーツァルト:コジ・ファン・トゥッテ指/P.ジョルダン、演出/B.コスキー、出/L.オルダー、E.ダンジェロ◎4月4、6日 チャイコフスキー:イオランタ[25年3月プレミエ] 指/T.ソヒエフ、演出/E.ティトフ、出/I.スタンチェフ、B.ピンハソヴィチ、D.ポポフ、A.モクス4月5、7、10日 R.シュトラウス:サロメ 指/Y.ガムゾウ、演出/C.テステ、出/J.シュナイダー、T.コニエチュニー、尼子広志4月8、12、15日 ジョルダーノ:アンドレア・シェニエ 指/P.G.モランディ、演出/O.シェンク、出/M.ファビアーノ、L.サルシ、S.ヨンチェヴァ◎4月13、16、19、22日 R.シュトラウス:アラベラ 指/C.ティーレマン、演出/S=E.ベヒトルフ、出/W.バンクル、C.ニールンド、S.ドゥヴィエル、M.フォッレ◎4月17、20、23日 ワーグナー:パルジファル指/A.コーバー、演出/K.セレブレンニコフ、出/L.テジエ、G.グロイスベック、K.F.フォークト、A.カンペ4月25、28日 モーツァルト:魔笛[25年1月プレミエ] 指/A.フィッシャー、演出/B.ホラコヴァ、出/F=J.ゼーリヒ、C.デュボワ、C.ウンターライナー、S.サエンツ◎4月27日 ワーグナー:ローエングリン 指/C.ティーレマン、演出/J.ヴィーラー、S.モラビト、出/G.グロイスベック、D.B.フィリップ、C.ニールンド、A.カンペ4月30日 M.フォッレBr【本文中の記号】★=プレミエ[新演出]公演、◎=注目公演〔注〕2022年より継続していた改修工事が終了し、2024/25シーズンは本来の劇場で公演が行われます。◎4月2(19:00)、5(19:00)、7(19:00)、9(19:00)日 プロコフィエフ:修道院での婚約[25年3月プレミエ] 指/D.マトヴィエンコ、演出/D.ミキエレット、演奏/ウィーン放送響4月8(19:00)日 ヘンデル:時と真理の勝利(オラトリオ) 指/R.ドゥブロフスキー、演奏/バッハ・コンソート・ウィーン(曽雌裕一・そしひろかず)(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)[会場:ムジークフェライン(ウィーン)]◎4月5(15:30)、6(11:00)、8(19:30)、9(19:30)日 C.ティーレマン指揮 ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲、交響曲第4番 独/A.ハーデリヒvn、G.カプソンvc[会場:無印=コンツェルトハウス(ウィーン)、(TRS)=ポリテアマ・ロセッティ(トリエステ)◎4月11(20:30)(TRS)日 P.ポペルカ指揮 ヴェルディ:マクベス/アイーダ/ドン・カルロ〜バレエ音楽集、ワーグナー:ワルキューレ〜第1幕 出/M.スパイアーズ、S.ヴェゲナー、G.ツェッペンフェルト4月12(19:30)(TRS)日 P.ポペルカ指揮モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」、マーラー:交響曲第4番 独/J.クライターS4月13(16:00)(TRS)日 P.ポペルカ指揮J.シュトラウスⅡ、ヨーゼフ・シュトラウス、プッチーニ、フランツ・シュミット、チャイコフスキーの作品4月26(19:30)、27(11:00)日 L.シャニ指揮ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番、シェーンベルク:ペレアスとメリザンド 独/M.アルゲリッチp、司会/B.レット(27日のみ)4月27(19:00)日 L.シャニ指揮 シェーンベルク:ペレアスとメリザンド 司会/M.グリュン 他[ウィーン](主要公演のみ)◎4月3(19:30)日 M.グラジニーテ=ティーラ指揮ミュンヘン・フィル → 〔ミュンヘン・フィル〕参照◎4月4(19:30)日 D.ダムラウS、J.カウフマンT 共/H.ドイチュp◎4月5(15:30)、6(11:00)、8(19:30)、9ウィーン・フォルクスオーパー4月1(19:00)、21(19:00)日 J.シュトラウスⅡ:こうもり 演出/R.ヘルツル4月3(19:00)、13(18:00)、16(19:00)、20(19:00)日 ニコライ:ウィンザーの陽気な女房たち 演出/N.スペイケルス4月5(19:00)、7(19:00)、9(19:00)日 オッフェンバック:地獄のオルフェ(天国と地獄)演出/スパイモンキー、A.バサウリ、T.パーク4月6(18:00)日 J.ハーマン:ラ・カージュ・オ・フォール(ミュージカル) 演出/M.キング◎4月11(19:00)、23(19:00)、26(18:00)日カールマン:チャールダーシュの女王[25年3月プレミエ] 演出/J.エラート★◎4月12(19:00)、17(19:00)、25(19:00)、30(19:00)日 S.ソンドハイム:フォリーズ(ミュージカル)[プレミエ] 指/B.グラスバーグ、演出/M.G.ベルガー◎4月19(19:00)、29(19:00)日 世界を忘れよう-フォルクスオーパー1938年(Lass uns die Welt vergessen - Volksoper 1938)(J.ベネシュ「ヴァッハウからの挨拶とキス」=1938年にフォルクスオーパーで上演予定だったオペレッタ。ナチス侵攻により公演中止=の残存資料からK.カガルリツキーがスコアを再構築) 演出/T.ボアマンス4月24(11:00)日 J.アロウアス:ボタン戦争[24年11月プレミエ] 演出/J.アロウアスアン・デア・ウィーン劇場 2025年4月20日のイースターを迎えて、早くも「復活祭」関連音楽祭の紹介時期となった。 まずは「ザルツブルク復活祭音楽祭」。今年のレジデント・オーケストラはフィンランド放送響で指揮者はエサ=ペッカ・サロネン。この組み合わせで取り上げるオペラがムソルグスキーの「ホヴァンシチナ」という、異色の選曲だ。だが、サロネン・ファンにとっては逆に興味津々の出し物かもしれない。もちろん、この意外なオペラの他に、マーラーの交響曲第2番「復活」やシベリウスの交響曲第2番などの十八番(おはこ)物も並べてファンを安心(?)させている。ちなみに、この音楽祭には、2026年から再びベルリン・フィルが戻ってくる(ご承知の通り、元々はカラヤンとベルリン・フィルによって始められた音楽祭)ため、ゲストオーケストラを呼ぶ形の音楽祭のあり方は2025年がとりあえず最後となる。 そのベルリン・フィルが2025年までの主戦場としている「バーデン=バーデン復活祭音楽祭」の目玉となるオペラは、キリル・ペトレンコ指揮のプッチーニ「蝶々夫人」。えっ、ペトレンコの「蝶々夫人」?!と眉をひそめられる方もいらっしゃるであろうが、ペトレンコは元々多くのオペラハウスで様々な作品を指揮してきたオペラ指揮者でもある。「蝶々夫人」もすでに英国ロイヤでは、ヴァイオリンのルノー・カプソンが指揮にも登場。 音楽祭以外に注目のオペラは、アムステルダム国立オペラのR.シュトラウス「影のない女」。ケイティ・ミッチェルの演出が非常に魅力的。チューリヒ歌劇場のコルンゴルト「死の都」もヴィオッティの指揮、チェルニアコフの演出と興味をそそられる。ミラノ・スカラ座のF.フィリデイ「薔薇の名前」は、同名の大ヒット映画と同じく、ウンベルト・エーコの小説を題材とする注目作。フィレンツェのR.シュトラウス「サロメ」やグリゴリアン出演のパリ・バスティーユ・オペラのプッチーニ「三部作」、モネ劇場のモンテヴェルディ三部作を再構成した改変異色作なども要注目。 その他、時節柄、バッハの受難曲は演奏頻度が高いが、ピション指揮ピグマリオン(ウィーン、フランクフルト、ミラノ等)、ヘレヴェッヘ指揮コレギウム・ヴォカーレ(ケルン)や、コープマンのケルン・ギュルツェニヒ管への客演(マルコ受難曲)などは手堅いところ。オーケストラでは、ラトルがチェコ・フィルに客演してのヴァイル「7つの大罪」、ソヒエフがバイエルン放送響を振るショーソンの交響曲など、お国ものでない選曲がとても面白い。〔Ⅰ〕オーストリア124ウィーン・フィルウィーン響ムジークフェライン[楽友協会]大ホール雌裕一 編2025年4月の

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