それでも踊るそれでも踊る者たちのために者たちのために第123回 「フェスと映画と殴り込み」トの執筆を頼まれているので、ぜひ見てほしい。若いダンサーのドキュメンタリー映画なのだが、才能があってもプロとして生きていく難しさと彼を支える人々を描く感動作である。しかも「インド人の若者が、イスラエル系アメリカ人の師匠に就いてがんばる様」を描いているので、これはもう20年間にわたってイスラエルを訪れて取材し、インドのダンサーと共同制作までしているオレを措いて語れる奴はおらんだろ! ということで全力で書いている。 さらに、この号が出る頃には香港ダンスエクスチェンジというフェスティバルで、オレが主催している「舞踊評論家【養成→派遣】プログラム」についてのシンポジウムに出席しているはずだ。先方からタイトルを送ってくれと言われたので、メインは、「ダンスをアップデートせよ!」にした。サブタイトル案はふたつ。「新しいダンスと、新しいメディアと、新しい読者のために」「ダンスは新しくなっている。なぜ評論は古いままなのか?」 まあ正直、香港の舞踊評論家協会的なものがどんなテンションでオレを呼んでいるのかわからないので、向こうのお偉いさんの中には「我々を過去の遺物扱いとはけしからん!」と怒る人もいるかもしれない。だがまずはオールドメディアに準拠して発展してきた評論と一度ちゃんと決別しろというのがオレの基本スタンスなので、そこは戦ってくるしかないな。 今月は書きたいことがたくさんある。 まずヨコハマダンスコレクション(以下ダンコレ)。本稿執筆時はまだ会期中ではあるが、30周年記念の今年は濃密な内容の公演が続いている。ダンコレについては本誌に折々書いてきた。首都圏でこの規模の国際ダンスフェスはほとんど唯一と言ってよく、しかも日本のコンテンポラリー・ダンス黎明期から30年の長きにわたって支えてきた。変わりゆく国内外のダンス状況と併走しながら、自分自身の体制も柔軟に変化させ続けるという奇跡的なことをしているのだ。フランスの著名な振付賞の選考会を兼ねたコンペティションから始まり、バブルが弾けて以降は国内の若いダンサーの育成に努めながら海外との窓口であり続け、現在はさらに「HOTPOT」というアジアの3つ(横浜・ソウル・香港)の連携フェスが立ち上がっている。 特に今年のコンペティションは、それぞれの方法で自分の身体を思考し練り上げており、史上最年少13才のファイナリスト片山鉄生も参加した。彼は宮崎を拠点にしているダンスカンパニー「んまつーポス」の育成プログラム一期生である。オレは4年前、宮崎で自作のダンス作品を作っていた彼と2人の友人を取材している(今作にも出演)。彼らは、「同級生はアイドルのダンスをコピーしているけど、同じようなものばかりでつまらない。だから自分たちで作って踊っている」と言っていたのだ。当時9才にしてこの言いっぷり。4年後には本当にファイナリストになって宮崎からダンコレに乗り込んでくるのだから、胸が熱くなるではないか。 評判は良かったものの結果的に受賞はならなかったので、オレから個人的に乗越賞(賞金100円)を贈呈しておいた。ぜひさらなる成長と挑戦を待っている。 次に、まだ公開中だと思うがオレは『コール・ミー・ダンサー』という映画からトークとパンフレッ120Profileのりこしたかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』『ダンス・バイブル』など日本で最も多くコンテンポラリー・ダンスの本を出版している。「ダンス私塾オンライン」開設。皆様の参加をお待ちしております!乗越たかお
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