eぶらあぼ 2025.1月号
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CDCDCDCD114ベートーヴェン:弦楽四重奏曲「ラズモフスキー第3番」 他/クァルテット・インテグラ展覧会の絵/ARK BRASSA.スクリャービン:ピアノ作品集/三膳知枝J.S.バッハ/ネマニャ・ラドゥロヴィチベートーヴェンのラズモフスキー四重奏の掉尾を飾る第9番、そしてバルトークの第5番を組み合わせたセッション録音。クァルテット・インテグラは几帳面に和音を奏で、丁寧な手つきで音楽を進めてゆく。ベートーヴェン作品の終楽章、動機の受け渡しなど、提示部から展開部へと緊迫感をもったまま進み、コーダに向けてそれが解放感へと転じるヨロコビ。伝統へ回帰し、晩年様式への第一歩といわれるバルトーク作品も、丹念にそれぞれの主題を描き分けていくことで、活気に満ちた生命力を内側から沸き上がらせる。対照的ともいえる2つの作品を緩やかに結びつけた巧さ!(鈴木淳史)スクリャービンの初期の小品を中心に集めたアルバム。エモーションへダイレクトに訴える魅惑の音楽を、三膳は実に淡々と弾いていく。ほとんどイン・テンポで、もったいぶったところや大げさな身振りとは無縁。声部の音色づけは丁寧かつ細やかで、和声やリズムのツボをさりげなく、しかし過たず突いてくる。構えの大きな作品では音勢がぐっと増すが、高揚感の生み出す息の乱れはほとんどない。そういう作品との絶妙の距離感によって、まるでプリズムを通過したかのように、その美の秘密が鮮やかに解析される。曲に語らせる姿勢を貫いた正攻法のスクリャービン演奏は、意外に新しいのかもしれない。(江藤光紀)佐藤友紀(トランペット)や福川伸陽(ホルン)をはじめとする名手揃いのコアメンバーに、トップ奏者が随時加わる夢のブラス・アンサンブルのCD第2弾。極めて鮮やかな演奏で、名曲と金管の定番曲を満喫させてくれる。「展覧会の絵」は金管五重奏だけで色彩感や情感が巧みに表現され、山中惇史のピアノが的確な効果を付与。〈古城〉のトロンボーン+ホルンの色合いや、〈リモージュの市場〉等の快速フレーズの滑らかさも大いなる聴きものだ。豊潤なエヴァルド作品、ブリリアントで愉悦感満点のラングフォード作品も、日本の金管勢のレベルの高さを示す快演。   (柴田克彦)“常識”をひっくり返される。冒頭「シシリエンヌ」数秒で、思わず演奏楽器を確認し直したほど。もちろん間違いなくヴァイオリンなのだが、完全に未体験の音色。しかし彼なら楽器や録音の調整なしでこの音が出せるはずと確信させるのが、ラドゥロヴィチというスーパーアーティスト。緩徐な楽曲では楽器を超えた絶美の歌を、快速楽章では超人的な超絶技巧を軽々と。協奏曲では完璧な彫琢と自在な表現を両立、それが息つく余地なくノンストップで続く。なにより全ての音に熱い血がたぎっている。圧倒的な世界観の60分。このCDタイトルがただ『J.S.バッハ』とは。超然。(林 昌英)クァルテット・インテグラ【三澤響果 菊野凜太郎(以上ヴァイオリン) 山本一輝(ヴィオラ) パク・イェウン(チェロ)】三膳知枝(ピアノ)ARK BRASS山中惇史(ピアノ)ネマニャ・ラドゥロヴィチ(ヴァイオリン/ヴィオラ) ドゥーブル・サンス ステファニー・フォンタナローザ(チェンバロ) 他J.S.バッハ:フルート・ソナタ 変ホ長調より「シシリエンヌ」、無伴奏チェロ組曲第1番より「プレリュード」、ヴァイオリン協奏曲 ホ長調、同ニ短調、管弦楽組曲第2番より「バディネリ」 他ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第9番「ラズモフスキー第3番」/バルトーク:弦楽四重奏曲第5番ナミ・レコードWWCC-8020 ¥3300(税込)スクリャービン:24の前奏曲より、ピアノ・ソナタ第2番「幻想ソナタ」、3つの小品 op.2より、12の練習曲より、8つの練習曲より、2つの詩曲、幻想曲 ロ短調コジマ録音ALM-9272 ¥3300(税込)ムソルグスキー(大橋晃一編):組曲「展覧会の絵」/エヴァルド:金管五重奏曲第1番/ラングフォード:ロンドンの小景エイベックス・クラシックスAVCL-84169 ¥3300(税込)ワーナーミュージック・ジャパン2173.239954 ¥オープン価格

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