CDSACDCDCD110ベートーヴェン：ピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」、遥かなる恋人に／辻井伸行ブルックナー：交響曲第2番／ジョナサン・ノット＆東響天使たちの音楽〜ボッケリーニ：チェロ協奏曲、ソナタ＆五重奏曲集／スティーヴン・イッサーリスシベリウス 作品番号のない小品集／渡邉規久雄この春老舗の名門レーベル、ドイツ・グラモフォンとグローバル専属契約を結んだ辻井。本CDは同レーベルからのデビュー盤となる。予告されていたとは言え、デビュー盤のメインがベートーヴェンの「ハンマークラヴィーア」であることに改めて驚かされる。技術面のみならず、その音楽的内実においても言わずと知れた超難曲である。しかし演奏はいかに周到に準備されてきたかが分かる。揺るぎない造形感を感じさせるソナタ形式による第1楽章。何より「幾分自由な3声のフーガ」に始まる終楽章の極めてアカデミックで難解な音楽でも、常にその構造は明瞭で、同楽章に有機的な流れを与えている。（大津 聡）ノットと東響のブルックナーにはある種の烈しさがある。長年のコンビネーションにより、東響は柔軟な反応とアンサンブル精度を兼備、美しさや雄大さも十分。ノットはその土台の上で、ブルックナーを神聖視せず古典から連なる作品として臨もうとしている。整っているのにゴツゴツした手触り、どの声部もクリアなのにライブ感満点の熱量。これらの特徴は初期の第2番の魅力にも同化。各楽章に興奮がこもるし、端整かつ美麗な仕上がりのアンダンテには陶然。第2稿使用だが、アンダンテを第3楽章に置くなど第1稿を採用した場面も多い、いわば「ノット版」になっている。 （林 昌英）世界的チェリストが、協奏曲とソナタ、弦楽五重奏曲を通して、看過されがちなイタリア古典派の作曲家ボッケリーニに光を当てた好アルバム。最初の協奏曲ニ長調はチェロの高音が見事だし、ソナタハ短調の第1楽章、五重奏曲ニ短調の第3楽章等を聴くと、同作曲家の意外な深みを実感させられる。ソナタヘ長調は（鍵盤楽器とのコラボではなく）2本のチェロで演奏されている点、協奏曲イ長調は「蛙」の愛称の由来となった動きが、それぞれ興味深くかつ耳に新鮮。イッサーリスが「一貫した優雅さを持つ」と語るボッケリーニの魅力の再発見を促されること必至だ。 （柴田克彦）シベリウスのピアノ音楽全曲シリーズやそのCD録音など、第一人者として活躍してきた渡邉規久雄の小品集。作品番号なしということは、ほとんど未出版で、最近JS番号が付けられて整理されるようになった珍しい作品群。20代前半の音楽院時代の習作が多い。簡潔な小品の中には、若々しい感性の煌めき、躍動感や後年にみられる内面性を感じさせる曲もある。ニンフとの交情と破局を描いた組曲「フロレスタン」や「6つのフィンランド民謡」のような連作、「スペイン風に」「あこがれに」「O.パルヴィアイネンに」といった円熟期の曲も。シベリウスの作品の新たな多様性と拡がりを感じさせる味わい深いアルバムだ。（横原千史）辻井伸行（ピアノ）ジョナサン・ノット（指揮）東京交響楽団スティーヴン・イッサーリス（チェロ/指揮）オーケストラ・オヴ・ジ・エイジ・オヴ・インライトゥンメントHyperion/東京エムプラスJCDA 68444 ￥3500（税込）ベートーヴェン：連作歌曲集「遥かなる恋人に」（リスト編）、ピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」ユニバーサル ミュージックUCCG-40132（初回限定盤・2枚組・CD+DVD） ¥3900（税込）UCCG-45109（通常盤） ￥3300（税込）ブルックナー：交響曲第2番（1877年ノーヴァク版第2稿）収録：2022年10月、ミューザ川崎シンフォニーホール＆サントリーホール（ライブ）オクタヴィア・レコードOVCL-00852 ￥3850（税込）ボッケリーニ：チェロ協奏曲 ニ長調、同イ長調「蛙」、チェロ・ソナタ ハ短調、同ヘ長調、弦楽五重奏曲 ニ短調、同ホ長調よりメヌエットシベリウス：ラルゴ イ長調、スケルツォ 嬰ヘ短調、黄昏時に、スペイン風に、あこがれに、コン・パッショーネ、O.パルヴィアイネンに、ワルツ 変イ長調「ベッツィ・レルケのために」、ピウ・レント-ワルツのテンポで 変ホ長調、組曲「フロレスタン」、6つのフィンランド民謡 他渡邉規久雄（ピアノ）収録：2023年11月、東京文化会館（小）（ライブ）妙音舎MYCL-00054 ￥3410（税込）
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