第1012回 定期演奏会Bシリーズ 12/4(水)19:00 サントリーホール第1013回 定期演奏会Aシリーズ 12/5(木)19:00 東京文化会館問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp2025.1/15(水)19:00 王子ホール問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jp49る本作の意義が、残念ながらますます重い意味合いを帯びる世界情勢の現在、必聴の大作。これをショスタコーヴィチ演奏に長けた都響の強烈なサウンドと、大野の渾身のタクトで体験できるのである。 ハイドンとショスタコーヴィチの組み合わせもいい。「交響曲」の形式を完成させた古典派の巨匠と、廃れかけた「交響曲」を高みに引き上げ直した20世紀の巨人。その精神は深く通じ、共鳴し合う。演奏生したもので、原曲への加筆修正はわずかであるにもかかわらず、まぎれもなくバッハらしい個性を聴き取ることができる。ジャンルの起源の面でイタリアと深く関わるトッカータのBWV912と914は青年期に書かれたと推測され、瑞々しい感性の奔放なほとばしりが魅力的な作品だ。「半音階的幻想曲」はトッカータ風の敏捷な走句を中心とする名作。 演奏会のテーマと曲の選定からは作品の歴史的意義に迫りつつ正統派チェンバロ奏者としての実力を示す意図が見て取れる。新たなステップを刻まんとする貴公子の演奏をぜひ聴きとどけたい。大野和士 ©Fumiaki Fujimoto伊東 裕 ©T.Tairadate会全体でハ調の長→短→長の流れになるのも興味深い。俊英による爽やかな愉悦から壮絶な大編成の迫力まで、コンサートならではの得難い時間になる。©Julien Benhamou文:林 昌英文:近松博郎大野和士(指揮) 東京都交響楽団若きチェロ首席が満を持して披露する協奏曲 音楽監督・大野和士の登壇する12月の都響定期は、聴きどころ多数。まず挙げたいのは、ハイドンのチェロ協奏曲第1番 ハ長調で伊東裕がソロを務めること。2022年に都響チェロ首席奏者に就任した伊東は、日本音楽コンクール第1位、葵トリオのメンバーとしても知られる、若手を代表する名手のひとり。その音色と歌心のすばらしさは無二のもので、聴けば誰もが“推し”になってしまうほど。いよいよソリストとしても登場する好機、お聴き逃がしなきよう。 そして、ショスタコーヴィチの交響曲第8番をいま聴けること。大戦中の1943年に書かれた作曲家の代表的傑作で、暗い空気に覆われた緻密な音楽が、当時のソヴィエトにおける心象風景を喚起する。全5楽章約60分、深刻なハ短調で始まり、かそけき弱音から破滅的大音響までの多様な場面を経て、不思議に柔和なハ長調の結尾に至る。戦争の恐怖や専制政治の理不尽さを伝えジュスタン・テイラー(チェンバロ)古楽界注目の俊英が描くバッハ × イタリア音楽の煌めき 2015年、23歳にしてブルージュ国際古楽コンクール優勝の快挙を成し遂げて以来、「フランス古楽界の貴公子」の愛称で親しまれてきたチェンバロ奏者、ジュスタン・テイラー。まさに貴公子然としたその風貌と、いかなる重力も感じさせず自由自在に楽器を奏で音楽を操る独特なスタイルは多くの聴衆を魅了し、CDのリリースも数多い。その彼が王子ホールで3度目となる公演を行う。 前回のフランス作品特集から一転し、今回のテーマは「バッハとイタリア」。バッハは生涯を通じてドイツから出ることはなかったが、ヴァイマルの宮廷に仕えていた時代に、主君のヴィルヘルム・エルンスト公爵の甥ヨハン・エルンスト公が留学先のオランダで入手してきたイタリア音楽の楽譜に接して多大な影響を受けた。今回演奏されるヴィヴァルディやA.マルチェッロの協奏曲からの編曲作品はこうして誕
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