eぶらあぼ 2024.12月号
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問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 https://www.tpo.or.jp※2025シーズンの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。41 東京フィルの2025シーズンの定期演奏会は、名誉音楽監督チョン・ミョンフン、首席指揮者アンドレア・バッティストーニ、特別客演指揮者ミハイル・プレトニョフ、桂冠指揮者の尾高忠明、アソシエイト・コンダクターのチョン・ミンと、ポストを持つ名匠が勢揃い。楽団との絆を反映した親密な熱演を展開する。しかも彼ら以外の出演者が、世界的ヴァイオリニスト/指揮者のピンカス・ズーカーマンや話題性抜群のソリストたちだけに、興味津々の1年となる。 幕開けの2月は、チョン・ミョンフンによるベートーヴェン・プロ。マエストロは、2002~03年の交響曲全曲演奏以来、楽聖の作品の名演を度々残してきた。今回の「英雄」交響曲は、覇気と推進力が漲るベスト演目。24年の熟したコンビネーションが存分に発揮される。さらには、今や貴重な彼のピアノに、近年コンクールでの実績顕著なヴァイオリンの前田妃奈とチェロのハン・ジェミンが加わった三重協奏曲への期待も大きい。 3月は、バッティストーニがストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」とヒンデミット「ウェーバーの主題による交響的変容」中心のプロで魅了する。これは古いメロディを用いた“温故知新”プロ。ホットで躍動的なマエストロが新たな命を吹き込む音楽と、東京フィルの機能美を共に味わえる。チョン・ミョンフン ©上野隆文アンドレア・バッティストーニ ©上野隆文前田妃奈©Taira Tairadateハン・ジェミン ©Shin-Joong Kimミハイル・プレトニョフ ©上野隆文舘野 泉 ©Akira Muto尾高忠明 ©上野隆文チョン・ミン ©Lee Dayounピンカス・ズーカーマン ©Cheryl Mazak松田華音 ©Ayako Yamamoto 4月は、半世紀もの関係を持った尾高忠明がおくる、尾高惇忠の「音の旅」、エルガーの交響曲第3番(補筆完成版)を軸としたプロ。兄の作品とゆかりの深い英国の幻の交響曲が並んだ“尾高でなければ聴けない”両演目に、巨匠・舘野泉が弾くラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲が加わる。尾高と舘野は1984年の東京フィル初の欧州演奏旅行を共にした間柄。「音の旅」で始まる公演に相応しいコンビでもある。 5月は、鬼才プレトニョフが自身の編作によるショパンのピアノ協奏曲第1番とチャイコフスキーの「眠れる森の美女」で勝負する。ショパンはシンプルな管弦楽の華麗なる変貌と松田華音の表現力旺盛なソロの双方が注目点。マエストロが名盤を残している後者は、長いバレエ音楽の美味しい部分だけを劇的な表現で満喫できる。 6月は、ズーカーマンの弾き振りによるハイドンのヴァイオリン協奏曲第1番やモーツァルトの「ジュピター」交響曲等。大家の妙技はもとより、フル・オケの公演では減少傾向にある古典の魅力に触れる嬉しい機会となる。 7月は、チョン・ミンがチャイコフスキーの超名作=ヴァイオリン協奏曲と神尾真由子 ©Makoto Kamiya文:柴田克彦小曽根 真 ©鈴木陽介「悲愴」交響曲を披露。まずはロシアやイタリアで実績のあるマエストロの情熱的な表現が楽しみだ。そして2007年チャイコフスキー国際コンクールの優勝以来、着実に深化してきた神尾真由子が今奏でる十八番協奏曲のソロも要注目。 9月はバッティストーニが再登場。出身地イタリアの近代作曲家ピツェッティの「夏の協奏曲」とR.シュトラウスの「アルプス交響曲」で、対照の妙とオケの名技を聴かせる。ピツェッティの曲はバロックの流儀と新ロマン主義的な音楽が融合した作品で、生演奏は実に稀少。「アルプス~」では、パワフルで雄弁なタクトが生み出すスペクタクルな音楽に浸りたい。 10月はチョン・ミョンフンが締める。「ウエスト・サイド物語」と同物語の基になった「ロメオとジュリエット」のコラボが洒落ているし、久々にガーシュウィンを取り上げる点も目を引く。その「ラプソディ・イン・ブルー」には、大人気の二刀流ピアニスト、小曽根真が登場。ジャズの感興豊かなソロとマエストロとのコラボが興味をそそる。 ここは、各時代を網羅した多彩なラインナップを、充実の陣容のパフォーマンスで堪能しよう。東京フィルハーモニー交響楽団 2025シーズン 定期演奏会の聴きどころポストを持つ名匠が絆を示す、親密にして多彩な1年

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