びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 https://www.biwako-hall.or.jp/滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールは、関西随一のオペラ劇場として、一流のオペラやバレエに加えコンサートも開催。また、国内外の実力派アーティストが充実したアンサンブルやソロを披露するほか、講座なども開催しています。このコーナーでは、びわ湖ホールが主催する注目の公演をご紹介します。 2007年3月から始まった「びわ湖ホール オペラへの招待」シリーズは、オペラ鑑賞の裾野を広げるという目標を掲げ、よく知られた名作から上演機会の少ない作品まで、バラエティ豊かな演目を取り上げてきた。演出はプロダクションによって様々だが、基本的には初心者でもわかりやすく、親しみやすいものが多い。その「オペラへの招待」シリーズが25年1月に上演するのは、ベルトルト・ブレヒトが台本を書き、クルト・ヴァイルが作曲した《三文オペラ》。12年にびわ湖ホールで初演された故・栗山昌良の演出によるプロダクションは、翌13年には新国立劇場で上演されチケットが売り切れるなど大きな話題となった。今回はこの栗山版《三文オペラ》を、栗山の弟子であり、前回の公演に演出助手として携わった奥野浩子の再演演出で上演する。 両大戦間のベルリンで初演された《三文オペラ》は、様々な芸術文化が爆発的な盛り上がりを見せたワイマール共和国時代のドイツを代表する作品であるとともに、20世紀のオペラ史にその名を刻む傑作として知られている。ワイマール共和国は当時もっとも民主的な憲法に基づく国家だったが、第一次大戦の敗戦による巨額の賠償金に端を発した経済破綻と、それによって引き起こされた社会不安などが表面化し、ついにはナチスの台頭を許してしまった。《三文オペラ》はそうした社会状況をアクチュアルに諷刺しつつ、さらに「オペラ」というジャンルそのものを根本的に解体するような過激で画期的な作品だった。例えば従来のアリアに代わって「ソング」と呼ばれる形式が導入されたこともそのひとつだ。「ソング」は単純で親《三文オペラ》前回の公演よりしみやすいメロディに挑発的な歌詞を持つが、「芝居」の要素が非常に大きい音楽だ。事実、初演で起用されたのは声楽の専門教育を受けていない俳優たちだった。これが、《三文オペラ》を上演する際に最も大きな課題となることは想像に難くない。 栗山昌良は初演時のプログラムで、「オペラ歌手は俳優でなければならない」と記しているが、同時にクラシックの声楽技法も必要であると説いていて、そうした理想的な「歌手=俳優」のあり方をびわ湖ホール声楽アンサンブルに求めていたことがわかる。実際、当時の舞台では西洋音楽の歌唱法をベースにしながら、ミュージカルやジャズ、ポピュラーソングなど多様な表現方法をミックスしたパフォーマンスが繰り広げられ、それが高い評価に繋がった。 12年の時を経て蘇る栗山版《三文オペラ》だが、今回もびわ湖ホール声楽アンサンブルを中心に、高い実力を備えた「ソロ登録メンバー」も加わった充実の歌手陣を配した。そして、園田隆一郎指揮のザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団がヴァイルの特色あるスコアに挑む。ちなみにピアノは前回と同様、寺嶋陸也が担当する。寺嶋はオペラシアターこんにゃく座で作曲家・ピアニストとして多くの新しい音楽劇の創造に携わってきており、「ソング」の演奏にも長けている。2025年は年明け早々、刺激的なオペラの世界を体験できそうだ。文:室田尚子園田隆一郎 ©Fabio Parenzan2025.1/24(金)、1/25(土)、1/26(日)、1/27(月)各日14:00 びわ湖ホール 中ホールびわ湖ホールPreviewびわ湖ホール オペラへの招待 クルト・ヴァイル作曲 《三文オペラ》日本オペラ界のレジェンドがのこした名演出が蘇る!
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