Information旬の名歌手シリーズ―Ⅺバンジャマン・ベルナイム テノール・コンサート2025.1/14(火)19:00 東京文化会館2025.1/19(日)15:00 サントリーホール出演:バンジャマン・ベルナイム(テノール)、マルク・ルロワ゠カラタユー(指揮)演奏:東京フィルハーモニー交響楽団曲目:チャイコフスキー:歌劇《エフゲニー・オネーギン》より〈青春は遠く過ぎ去り〉/ドニゼッティ:歌劇《愛の妙薬》より〈人知れぬ涙〉/ヴェルディ:歌劇《マクベス》より〈おお、わが子たちよ! 〜ああ、父の手は〉(1/14)、歌劇《シモン・ボッカネグラ》より〈ああ地獄だ、ここにアメーリアが〉〜〈慈悲深い天よ〉(1/19)/プッチーニ:歌劇《トスカ》より〈妙なる調和〉/マスネ:歌劇《マノン》より〈消え去れ、優しい面影よ〉(1/14)、歌劇《ウェルテル》より〈春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか〉(オシアンの歌)/ビゼー:歌劇《真珠採り》より〈あの声は、なんという動揺を僕に〉〜〈耳に残るは君の歌声〉(ナディールのロマンス)(1/19)/グノー:歌劇《ロメオとジュリエット》より〈恋よ、恋よ! ああ、太陽よ昇れ〉 他■ NBSチケットセンター03-3791-8888 https://www.nbs.or.jp19 バンジャマン・ベルナイムは、世界中のオペラ・ファンから熱い視線が注がれるフランス人テノールだ。「International Opera Awards 2024」では最優秀男性歌手に選ばれるなど、その評価は鰻登りである。今年8月に行われたパリ・オリンピックの閉会式ではフォーレの「アポロン讃歌」を熱唱し、その名はオペラやクラシック音楽の枠を超えて広く知れ渡った。そんなベルナイムのオペラ歌手としての魅力を隅々まで味わえる待望のソロ・コンサートが2025年1月に東京で開催される。共演するのは、彼の盟友で、ヨーロッパ各地で共演を重ねている指揮者マルク・ルロワ=カラタユーと、オペラの領域では国内屈指の演奏経験を誇る東京フィルハーモニー交響楽団である。 初来日は2009年。リヨン国立歌劇場管弦楽団の引越し公演で、大野和士の指揮のもと、マスネの《ウェルテル》シュミット役を歌った。それから15年の時を経て、スターへと飛躍を遂げた彼が東京のステージに帰ってくる。 声楽家の両親のもと、パリに生まれたベルナイムは、4歳でジュネーヴに移り住み、モーツァルトやドニゼッティ、ヴェルディなどのオペラに囲まれた環境で育った。 「幼い頃からヴァイオリンとピアノを学び、地域の児童合唱団にも参加していました。オペラ歌手がとても難しい仕事であることは両親を見て知っていましたが、自分に向いているのは声楽だったこともあり、18歳で家族のもとを離れ、ローザンヌ高等音楽院の声楽科に入学しました」 世界の檜舞台で輝かしい歌声を響かせる今日の姿からは想像もつかないが、20代のベルナイムは壁にぶつかり、歌手としてのキャリアに思い悩んだという。 「音楽院を卒業後、チューリヒ歌劇場に所属したものの、次第に歌やオペラに対するモチベーションを失ってしまい、24歳の半年間は音楽から離れて過ごしました。それからまた少しずつ声楽と向き合うようになり、自分に合った歌い方を模索しましたが、オペラの世界で仕事を続けられる自信を得たのは27歳のときでした。2012年にザルツブルク音楽祭で上演されたモーツァルトの《羊飼いの王様》でチャンスを掴み、それが私のオペラ歌手としてのターニングポイントになりました」 今回の2日間のコンサートはいずれも2部構成。第1部ではチャイコフスキーやドニゼッティ、ヴェルディ、プッチーニの名アリアの数々が歌われる。第2部はプログラムの目玉となる、19世紀のフランス・オペラの傑作選である。マスネの《マノン》や《ウェルテル》、グノー取材・文:八木宏之の《ロメオとジュリエット》、ビゼーの《真珠採り》は、いずれもベルナイムの十八番と言うべきレパートリーだ。 「プログラムのコンセプトは“日本の皆さまへの自己紹介”です。《シモン・ボッカネグラ》と《真珠採り》はまだ劇場で歌っていないレパートリーですが、そのほかは、この10年間で取り組んできた、私のキャリアを象徴する役ばかりです。ロシア、イタリア、そしてフランスの異なるスタイルのアリアを通して、私の声が持つさまざまな音色やキャラクターを知っていただきたいと思います。 コンサートの後半では、フランス・オペラの魅力的なアリアの数々を聴いていただきます。フランス・オペラは、イタリア・オペラやドイツ・オペラに比べて馴染みの薄いものかもしれませんが、19世紀の作曲家たちは国境を超えて互いに影響を与え合っていましたから、ヴェルディやワーグナーを理解するうえでも、グノーやビゼー、マスネの音楽を知ることは意義のあることです。私はティーンエイジャーの頃にロベルト・アラーニャやナタリー・デセイの録音を通してその魅力を知り、音楽院に入学してから、少しずつフランス語のレパートリーに取り組んできました。私がアラーニャやデセイの演奏によってフランス・オペラの世界に引き込まれたように、ひとりでも多くの日本のお客さまが、私の演奏をきっかけに扉を開いてくだされば、なにより嬉しいです」 偉大な先人、アラーニャの背中を追うように、祖国フランスのオペラの伝道者として世界各地のステージに立ち続けるベルナイム。作品を知り尽くした彼のエレガントな歌声で、フランス・オペラの一番美味しいところを堪能できるこの機会をぜひ逃さないでほしい。プログラムのコンセプトは“日本の皆さまへの自己紹介”
元のページ ../index.html#22