eぶらあぼ 2024.12月号
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CDCDCDCD102素晴らしき仲間と共に/柴田美穂オルフ:カルミナ・ブラーナ/アンドレア・バッティストーニ&東京フィルオルフ:世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」アンドレア・バッティストーニ(指揮)東京フィルハーモニー交響楽団ヴィットリアーナ・デ・アミーチス(ソプラノ) 彌勒忠史(カウンターテナー)ミケーレ・パッティ(バリトン) 新国立劇場合唱団 世田谷ジュニア合唱団収録:2024年3月、サントリーホール(ライブ)日本コロムビアCOCQ-85626 ¥3500(税込)これは角野隼斗の、真の意味での「ファースト・アルバム」だ。単にクラシックの楽曲を弾くだけでなく自作も加え、グランド・ピアノとアップライト・ピアノを併用し、多重録音やエレクトロニカも導入。そしてマクロコスモス(大宇宙)と人間の内なるミクロコスモス(小宇宙)との照応を音楽で描く、という壮大なテーマが立ち上がる。冷静にコントロールされたタッチに情熱を潜ませ、パーセル、バッハからショパン、ドビュッシー、ラヴェルやハンス・ジマー、坂本龍一まで自作と共に星座を描く。角野のビジョンで隅々まで満たされた本盤は、「アルバム」という名の宇宙なのだ。   (矢澤孝樹)大野と彼が2022年9月から音楽監督を務めるベルギーの実力派楽団とのCD第2弾。聴衆の大喝采も収録されたライブ録音である。「英雄の生涯」は、じっくりと細やかかつ豊潤に描かれ、その瑞々しい英雄像が新鮮な感覚をもたらす。中でも「英雄の伴侶」の歌い回しや表情豊かなヴァイオリン・ソロが耳を奪い、「英雄の戦い」も勢い任せにならず、細かな動きに命が与えられている。「ドン・ファン」も同様で、全体によく歌われた好演。オケの技量の高さと大野との相性の良さが明示されたこのアルバムを聴くと、今後のコンビネーションにも期待が寄せられる。 (柴田克彦)柴田美穂を中心とする“ピアノ三重奏”曲集。モーツァルト「ケーゲルシュタット」は、クラリネットが雄弁に語り、ヴィオラと絶妙に絡む。メヌエットもロンドも楽しい。ショパンのピアノ三重奏曲は、チェロにヴィオラが加わる。18歳の若きショパンが真面目に取り組んだ4楽章の労作。緩徐楽章の歌は美しく、弦の柔らかな表情がいい。ピアノは全曲の至る所で煌めいている。シューマンの「おとぎ話」ではロマンティックなポエジーが、そこここで香り立つ。フォーレのピアノ三重奏曲は、クラリネットが甘美なメロディを歌い、入り組んだテクスチュアに、晩年の明鏡止水の境地が味わい深く語られる。(横原千史)中世の放浪楽師たちの歌の写本をテキストにした「カルミナ・ブラーナ」は、時代を超えた人間賛歌である。自然の賛美に始まり、酒の歓び、肉の歓びをストレートに表現した言葉に、オルフはシンプルだが力強い音楽を付けた。だから、あまり澄ました演奏ではつまらない。本盤ではテノールをカウンターテナーに歌わせるなど(第12曲)、遊び心が随所で顔を出す。バッティストーニは豪華独唱陣、鉄壁な合唱を巧みに制御しながら、活き活きと造形。勢いがあって熱気を帯びながらも、どこをとってもフレッシュな響きになっているあたりに、この人らしいサウンドに対する並外れたセンスを感じる。(江藤光紀)R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」、交響詩「ドン・ファン」大野和士(指揮)ブリュッセル・フィルハーモニック収録:2023年9月、ブリュッセル(ライブ)Evil Penguin Classic/東京エムプラスXEPRC 0067 ¥3300(税込)角野隼斗:HUMAN UNIVERSE/J.S.バッハ:主よ 人の望みの喜びよ/パーセル:グラウンド ハ短調/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ/ショパン:ノクターン第13番/ドビュッシー:月の光/坂本龍一:solari/ハンス・ジマー:DAY ONE 他角野隼斗(ピアノ)ソニーミュージックSICC-30896〜7(初回生産限定盤・2枚組・CD+Blu-ray) ¥4400(税込)SICC-30898(通常盤) ¥3300(税込)モーツァルト:ケーゲルシュタット・トリオ/ショパン:ピアノ三重奏曲/シューマン:おとぎ話/フォーレ:ピアノ三重奏曲 他柴田美穂(ピアノ)武田忠善(クラリネット)大野かおる(ヴィオラ)ドミトリー・フェイギン(チェロ)収録:2024年5月、東京オペラシティ リサイタルホール(ライブ)ナミ・レコードWWCC-8018-9(2枚組) ¥4400(税込)HUMAN UNIVERSE/角野隼斗R.シュトラウス:英雄の生涯、ドン・ファン/大野和士&ブリュッセル・フィル

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