eぶらあぼ 2024.11月号
70/145

第375回 定期演奏会2025.1/17(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp12/13(金)19:00 J:COMホール八王子問 八王子市学園都市文化ふれあい財団042-621-3005https://www.hachiojibunka.or.jp12/20(金)18:30 豊中市立文化芸術センター問 豊中市立文化芸術センターチケットオフィス06-6864-5000https://www.toyonaka-hall.jp67 このオルケスタ・ティピカを復活させたいという小松の野望のもとに、バンドネオン奏者の北村聡、早川純、鈴木崇朗をはじめ腕達者たちが集結。アルゼンチン・タンゴの名曲として知られるが、実はウルグアイのマトス・ロドリゲスが作曲した「ラ・クンパルシータ」、小松と共演したこともあるバンドネオンの巨匠、ビクトル・ラバジェンの「ブエノスアイレアンド」など、「ピアソラだけではない」タンゴの名曲を届ける今回のコンサート。ゲストには元宝塚スターの彩吹真央を迎え、小松による編曲でアニメ版『ベルサイユのばら』の主題歌「薔薇は美しく散る」を披露する。TV番組の主題歌やアニメソングなどを通高関 健 ©大窪道治を、若い奥井がどんな視点から表現するかに期待が高まる。 そして、作曲家の深い音楽的意図を残された楽譜から読み取り、新しい展望を開いてくれる高関にも期待したい。「夜の歌」と呼ばれることも多いマーラーの交響曲第7番だが、書かれたス奥井紫麻 ©Takahiro Watanabeコアは複雑、かつ重厚で、そこにマーラー自身の音楽史的な視点も投影されたかのような複雑な音の世界が秘められている。膨大な情報を処理しながら指揮する高関の音楽作りによって、また新しいマーラーの表情を見ることができるに違いない。小松亮太 ©Arata Katoじてタンゴの普及にも努める小松の多彩な魅力を味わえるだろう。文:片桐卓也文:原 典子高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団精緻な解釈により築き上げる「夜の歌」 9月のブルックナー、10月のスメタナと高関健による意欲的な演奏が続く東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の定期演奏会。楽団創立50年を迎える2025年最初の定期となる1月17日の第375回には、ロシアで学びヨーロッパで活躍する注目のピアニスト・奥井紫麻(2004年生まれ)が登場し、さらにはマーラーの大曲、交響曲第7番が高関の指揮により演奏される。 奥井はモスクワ音楽院付属中央音楽学校を経てグネーシン特別音楽学校でタチアナ・ゼリクマンに師事。さらにジュネーヴ高等音楽院のネルソン・ゲルナーのもとで学んでいる。9歳から世界各国の音楽祭に招かれ、数々のコンクールを制覇しつつ、ロシア国内のオーケストラだけでなく、日本の楽団とも共演してきた。今回彼女が取り上げるのはサン=サーンスのピアノ協奏曲第2番(1868年初演)。リストが高く評価したことで知られるロマン派の代表的傑作小松亮太(バンドネオン) & オルケスタ・ティピカ with 彩吹真央(歌)黄金期を彷彿とさせる編成で浮かび上がるタンゴの真髄 小松亮太にインタビューするたび、タンゴの現状と未来に危機感を抱いているという話を聞く。だが、それは決して悲観にもとづくものではない。タンゴ演奏家の両親のもとに生まれ、バンドネオン奏者として第一線を走り続けてきた小松の「本当のタンゴを聞いてほしい」というひたむきな願いから出る言葉である。 では「本当のタンゴとは何か?」という問いに対する小松からのひとつの回答が、「オルケスタ・ティピカ」とのコンサートであろう。オルケスタ・ティピカとは、バンドネオンが3~4人、ヴァイオリンが3人以上(ヴィオラやチェロが加わることも)、ピアノ、コントラバスという、アルゼンチン・タンゴの黄金期を象徴する楽器編成のこと。第二次世界大戦後、好景気に沸いたアルゼンチンでは、このようにゴージャスな編成が「標準=ティピカ」となっていたが、現在では見る機会も少なくなった。

元のページ  ../index.html#70

このブックを見る