eぶらあぼ 2024.11月号
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4名の気鋭のピアニストの響宴「2台ピアノ協奏曲コンサート」ソロもオケも! 名コンチェルトを若き才能たちがベーゼンドルファーで文:長井進之介 1台でオーケストラの楽曲も演奏できてしまうピアノという楽器の魅力を最大限に味わえるコンサートが開催される。ベートーヴェンの「皇帝」にラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲など、人気のピアノ協奏曲が2台ピアノで演奏されるのだが、出演者が凄い。第20回リーズ国際ピアノコンクール第2位の小林海都、葵トリオとして第67回ARDミュンヘン国際音楽コンクールで優勝を果たした秋元孝介、2015年ロン=ティボー=クレスパン国際コンクール第3位の實川風、そして22年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールでジョン・ジョル2025.2/23(日・祝)17:45 東京文化会館(小) 10/26(土)発売問 サポート・アーティスツ・アソシエーション sprt.artists.ticket2023@gmail.comhttps://primesartists.wixsite.com/supportartists/66Interview印田千裕(ヴァイオリン)& 印田陽介(チェロ)知られざる佳作を探し求めて やや意外な気もするが、ヴァイオリンとチェロのデュオというのは珍しい。東京藝術大学を卒業後、それぞれイギリスとチェコで学んだ印田千裕と陽介の姉弟が毎年開催しているリサイタルが13回目を迎える。テーマは「往古来今」だ。陽介「この編成には有名な曲が少なくて、よく弾かれるのはラヴェルとコダーイぐらい。でも曲は山ほどあるんです(笑)。少しずつ発掘しながらいろんな曲を紹介しています。 今回はイタリアのルイジ・ボルギとロシアのイワン・ハンドシキンという18世紀の作品から、カステルヌオーヴォ=テデスコ、そして現代のホリガー、一柳慧まで、さまざまな時代と国の作品を取り上げます。ボルギとハンドシキンは二人ともヴァイオリニストとしても活躍していた作曲家です」千裕「ボルギは歌劇場ともつながりが深く、イタリアらしい歌心を感じます。ハンドシキンは“ロシアのパガニーニ”として知られた人ですが、今回演奏する『ロシアの愛の歌による変奏曲』は、もともと民謡をもとにした曲で、楽器の技巧的な面よりも、すべてが歌から始まっているということを感じさせます。そんな“歌”の時代から現代に向かっていく、“歌心”も今回のテーマです」 毎回のプログラムには必ず邦人作ダーノ審査員長特別賞を受賞した田所光之マルセルという若き才能たち4名である。彼らがお互いにソリスト、オーケストラの役割を交代しながら熱演を繰り広げていく。さらに使用楽器は2台とも色彩豊かな音色が魅力のベーゼンドルファー。卓越した技術と圧倒的な表現力を併せ持つピアニストたちの夢の共演をぜひご堪能あれ。品も組み込んでいる。一柳慧の「デュオ・インターチェンジ」は2011年の作品。陽介「“インターチェンジ”は“交換/交流”という意味で、ヴァイオリンとチェロが完全に同じことを入れ替わって弾いたりします」千裕「シンプルですがノリのいい作品です。昨年、一柳先生の追悼コンサートに出演した際、この作品を初演したヴァイオリンの新井淑子先生がいらして、お話を伺うことができました」 耳にする機会の少ない編成だからこそ新たな出会いが楽しめると語る。陽介「僕らの演奏会は、知らない曲しか出てきません(笑)。初めての出会いを楽しんでほしい」千裕「逆にいえば、ふだんクラシックを聴かないという方でも、マニアの方と差がなく楽しんでいただけます(笑)。全部同じ編成でも、いろんな曲がある。この2つの楽器でどんなことができるかという幅を感じていただけたら印田千裕 & 印田陽介 デュオリサイタル 〜ヴァイオリンとチェロの響き Vol.13〜11/23(土・祝)14:00 王子ホール問 マリーコンツェルト music@malykoncert.comhttps://chihiroinda.com https://yohsukeinda.comと思います」陽介「2つの楽器だけなので、音が薄くならないように、どの作曲家もかなり工夫を凝らしています。どう鳴らすかというところから考えなければならない。それぞれのセンスがすごく感じられる編成だと思います」千裕「見た目的にも響き的にも、ちょっと想像を超えると思いますよ!」左より:小林海都 ©Tsutomu Yagishita/秋元孝介 ©Kosuke Atsumi/實川 風 ©T.Tairadate/田所光之マルセル ©Shigeto Imura左:印田千裕 右:印田陽介 ©Ayane Shindo取材・文:宮本 明

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