eぶらあぼ 2024.11月号
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第1部では田原のヴィオラ独奏による西村朗「C線のマントラ」や、ヴァイオリンとヴィオラによるバルトークの「44のデュオ」抜粋他が演奏される。第2部は森山のダンスと演出による「死と乙女」。弦楽四重奏とダンスのコラボレーションが実現する。シューベルトの弦楽四重奏曲「死と乙女」は、第2楽章が自身の歌曲〈死と乙女〉に基づくことからこの題で呼ばれている。歌曲で描かれているのは病に伏す乙女と死神の対話だ。はたしてこの楽曲からどんな世界観が導き出され、ダンスとして結実するのか。森山開次の創造性と身体能力が新たなシューベルトの世界を切り拓く。62 佐渡裕が新日本フィルと第九を初共演したのは1992年。以来佐渡は、93年、94年、99年、2000年、02年、03年、22年、23年と9度にわたり指揮をしてきた。今年は節目の10度目の登場となる。 佐渡にとってベートーヴェンの第九は、1999年に初めて「1万人の第九」を指揮し想像をはるかに超える作品の可能性を体験して以来、特別なレパートリーとなったにちがいない。その後も東日本大震災やコロナ禍など未曾有の危機に直面した時には、第九を通して人々の心に寄り添い、人と人との絆を深めるシラーの歌詞とベートーヴェンの音楽が持つ力を伝えてきた。 佐渡のベートーヴェンは真摯に作品Live Performance SHIBUYA 森山開次「死と乙女」研ぎ澄まされた身体表現と弦楽で紡ぐシューベルト 国際的に活躍するダンサー・振付家、森山開次のチャレンジに注目するクラシック音楽ファンは少なくない。2024年度の全国共同制作オペラ《ラ・ボエーム》では井上道義指揮のもと、演出家としても優れた手腕を発揮した。また、今年3月に渋谷区文化総合センター大和田で開かれた「春の祭典2024」では、ソロダンスによってストラヴィンスキーの傑作を踊った。その驚異的な身体表現は「春の祭典」という作品の可能性を広げるものだった。 そして25年1月、森山は新たな創作舞台とともに渋谷区文化総合センター大和田に帰ってくる。題材はシューベルトの弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」。共演を果たすのは日本の若い世代を代表する名手たち。山根一仁と毛利文香のヴァイオリン、田原綾子のヴィオラ、森田啓介のチェロによりクァルテットが組まれる。 プログラムは2部構成となっている。左より:佐渡 裕 ©Takashi Iijima/高野百合絵 ©Takayuki Abe/谷口睦美/林 眞暎 ©T.Tairadate/笛田博昭/平野 和 ©武藤 章つ盟友である。林眞暎(12/19のみ出演)は国内外で活躍中の気鋭のメゾソプラノ。栗友会合唱団は3年連続の共演であり、佐渡にとって頼もしい存在。 23年4月の音楽監督就任以来、お互いの信頼を深めている佐渡と新日本フィルによる第九は、今年を締めくくるにふさわしい、記憶に残るコンサートとなるに違いない。なお、14日のサントリーホール公演では前半に梅干野安未(ほやのあみ)のオルガン演奏がある。と向き合う王道を行く演奏であり、スケールが大きい。細部まで丁寧に描きながら歌うべきところはたっぷりと歌う。今回も「世界中の人々よ、抱き合え」と歌い上げる最後は聴く者に大きな感動をもたらすことだろう。 ソリストの高野百合絵(ソプラノ)、谷口睦美(メゾソプラノ)、笛田博昭(テノール)、平野和(バリトン)は、佐渡がオペラなどで長年にわたり共演を重ね、直前の「1万人の第九」でも同じステージに立12/14(土)14:00 サントリーホール 12/15(日)14:00 すみだトリフォニーホール12/19(木)19:00、12/22(日)18:00 東京オペラシティ コンサートホール12/20(金)19:00 横浜みなとみらいホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp他公演 12/13(金) 水戸市民会館 グロービスホール(029-350-6060)2025.1/9(木)19:00 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール問 渋谷区文化総合センター大和田 ホール事務室03-3464-3252https://www.shibu-cul.jp森山開次 ©Shingo Shimizu文:長谷川京介文:飯尾洋一佐渡 裕(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団 「第九」特別演奏会2024成熟を深める力強いタクトが感動を呼び起こす

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