eぶらあぼ 2024.11月号
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 1月の神奈川フィルの定期演奏会では、まず、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を弾き振りする。カデンツァはベートーヴェン自身のピアノ編曲版をヴァイオリンにアレンジし直したものを演奏。ドイツの伝統のなかで育ったブラッハーが正統的なベートーヴェンを聴かせてくれることだろう。彼は近年、指揮活動にも取り組んでいるが、日本で披露するのは初めて。オーケストラでの経験も豊かなコリヤ・ブラッハーがチャイコフスキーの交響曲第5番でどんなタクトさばきをみせるのか興味津々である。12/4(水)19:00 高崎芸術劇場 音楽ホール問 高崎芸術劇場チケットセンター027-321-3900https://www.takasaki-foundation.or.jp/theatre/みなとみらいシリーズ定期演奏会 第401回2025.1/18(土)14:00 横浜みなとみらいホール問 神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107 https://www.kanaphil.or.jp品。清水のセンスに期待である。続いてスイスの作曲家マルタンの「バラード」は、モダンな響きの中に格調の高さも感じさせる一曲で、ジュネーヴで学んだ清水ならではの選曲でもあろう。シューベルトの「しぼめる花の主題による序奏と変奏」では、歌曲に由来する美しい旋律美と冴えた技巧を堪能したい。締めくくりとなるプロコフィエフのソナタも、20世紀のフルート・ソナタの名作のひとつなので、この作品にどのように肉薄するか、非常に楽しみである。ピアノは望月晶。 才能豊かな清水は、今回のリサイタルを糧に、演奏家として大きく羽ばたいていくにちがいない。そんな気鋭の「今」にじっくり耳を傾けるコンサートになることだろう。61高崎芸術劇場 大友直人 Presents T-Shotシリーズ vol.14清水 伶 フルート・リサイタル次代を担う逸材が登場! ロマン派〜20世紀の秀作を集めて フルート界の新星として注目を浴びている清水伶(りょう)。先日、ARDミュンヘン国際音楽コンクールでの木管五重奏「クインテット樹」のメンバーとしての活躍も記憶に新しい。日本音楽コンクール優勝ほか数々のコンクール受賞歴をもち、高校時代から演奏家として活動してきた若手が、高崎芸術劇場の「大友直人 Presents T-Shotシリーズ」vol.14に登場する。芸術監督の大友が次代を担う逸材を選び、リサイタルを開催。併せて収録も行ってCD、DVDとしてリリースするユニークな企画で、これまでにヴァイオリンの戸澤采紀、ピアノの北村明日人、そしてチェロの上野通明など未来の巨匠候補が出演してきた人気シリーズである。 東京音大、ジュネーヴ高等音楽院で学んだ清水のプログラムは、まずプーランクのソナタで始まる。この楽器のソナタの中でも名曲中の名曲で、明朗な響きと洒脱なリズム感が際立つ作コリヤ・ブラッハー ©Felix Broede文:山田治生文:伊藤制子コリヤ・ブラッハー(ヴァイオリン/指揮) 神奈川フィルハーモニー管弦楽団ベルリン・フィルの元コンマスが、指揮者として日本初登場 ドイツを代表するヴァイオリニストの一人である、コリヤ・ブラッハーが神奈川フィルに客演し、弾き振り及び指揮を披露する。ブラッハーは、1963年、ベルリン生まれ。ジュリアード音楽院でドロシー・ディレイに、ザルツブルクでシャーンドル・ヴェーグに師事。1993年から99年までベルリン・フィルのコンサートマスターを務め、アバド&ベルリン・フィルとヒンデミットの協奏曲も録音。その後はソリストとして活躍。アバドからの信頼が厚く、彼が晩年に音楽監督だったルツェルン祝祭管弦楽団でもコンサートマスターを務めた。現在は、ハンス・アイスラー音楽大学教授として後進の指導にもあたり、門下生には金川真弓もいる。また、彼の父は20世紀ドイツを代表する作曲家の一人であるボリス・ブラッハーであり、ボリスの残したヴァイオリン協奏曲を録音したほか、2025年4月に日本フィルでも演奏する。

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