eぶらあぼ 2024.11月号
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(op.9-3)に加え、第2回東京音楽コンクール木管部門の優勝者、上野由恵をアルトフルートに迎えた「Silo」などのマヌリ作品が3曲演奏される。12月1日の公演には、同コンクールの歴代入賞者で構成される東京文化会館チェンバーオーケストラのメンバーが出演し、シューベルト12/20(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール12/21(土)19:00 サントリーホール(完売)12/22(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 https://www.tpo.or.jp56 年末といえばベートーヴェンの「第九」。毎年12月になると、さまざまな指揮者の演奏で聴くことができる。「第九」は暮れの風物詩であると同時に、新たな才能に出会う好機でもある。 今年、東京フィルの「第九」特別演奏会を指揮するのはケンショウ・ワタナベ。本来であれば2021年の「第九」に出演するはずであったが、コロナ禍により来日ができず、今回ようやく出演がかなう。 ケンショウ・ワタナベは1987年横浜生まれ。5歳より渡米し、カーティス音楽院に学び、2013年から15年にかけてヤニック・ネゼ=セガンのもとでカーフェスティヴァル・ランタンポレル レ・ヴォルク弦楽三重奏団フランスから招かれた名手の演奏で、古典×現代の刺激的な音楽体験を!文:八木宏之 東京文化会館の「フェスティヴァル・ランタンポレル(仏語で“時代を超越した”の意)」は、古典と戦後の作曲家をペアにしてプログラムを構成するなど、ユニークな音楽祭だ。第1回の今年はベートーヴェンとフィリップ・マヌリ、シューベルトとヘルムート・ラッヘンマンの2組が取り上げられる。 この音楽祭はフランス、ニームの「レ・ヴォルク音楽祭」と提携しており、東京でもレ・ヴォルク弦楽三重奏団によるコンサートが2公演行われる。レ・ヴォルク音楽祭の中核を担うのはピリオド楽器オーケストラ、レ・シエクルのメンバーで、来日するトリオのヴィオリスト、キャロル・ロト=ドファン(レ・ヴォルク音楽祭芸術監督)とチェリストのロビン・マイケルも同楽団の首席奏者である。ヴァイオリンのオード・ペラン=デュローもモンペリエ国立管弦楽団のコンサートマスターを務める名手だ。 11月27日の公演では、ピリオド楽器によるベートーヴェンの弦楽三重奏曲ティス音楽院指揮科フェローを、16年から19年にかけてフィラデルフィア管弦楽団のアシスタント・コンダクターを務めた。17年にはネゼ=セガンの代役として同楽団定期演奏会にデビューを果たした。以後も定期公演にくりかえし招かれ、ヒューストン響、デトロイト響、ロンドン・フィルやトゥールーズ・キャピトル国立管他とも共演。18年にはセイジ・オザワ松本フェスティバルでサイトウ・キネン・オーケストラを指揮してプラチナ・シリーズ第2回 レ・ヴォルク弦楽三重奏団 et 上野由恵(フルート)〜ベートーヴェン&マヌリ〜 11/27(水)19:00レ・ヴォルク弦楽三重奏団&東京文化会館チェンバーオーケストラ・メンバー〜シューベルト&ラッヘンマン〜 12/1(日)15:00東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp左より:ケンショウ・ワタナベ ©Abigel Kralik/吉田珠代/中島郁子/清水徹太郎/上江隼人キャロル・ロト=ドファンロビン・マイケルオード・ペラン=デュロー日本デビューを飾っている。 東京フィルとは19年の定期演奏会でも共演しているが、今回は「第九」とあって一段と大きな注目を集めそうだ。歌劇《フィデリオ》序曲の後に、吉田珠代、中島郁子、清水徹太郎、上江隼人の独唱に新国立劇場合唱団(合唱指揮:三澤洋史)が加わる万全の声楽陣とともに、ベートーヴェンの大作に挑む。ケンショウ・ワタナベの名が多くの聴衆の記憶に刻まれることだろう。後期の傑作、八重奏曲をレ・ヴォルク弦楽三重奏団と共演する。クラリネットのアレッサンドロ・ベヴェラリらが参加する「アレグロ・ソステヌート」をはじめ、ラッヘンマンの貴重な実演も聴き逃せない。古典と現代音楽が交錯する「ランタンポレル」な音楽体験を楽しみに待ちたい。文:飯尾洋一ケンショウ・ワタナベ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団ベートーヴェン「第九」特別演奏会米国を中心に躍進続ける俊英が満を持して挑む“歓喜の歌”

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