eぶらあぼ 2024.11月号
57/145

第402回 横浜定期演奏会 11/23(土・祝)17:00 横浜みなとみらいホール第408回 名曲コンサート  11/24(日)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp11/12(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp54ルは《ラインの黄金》、「クレルヴォ交響曲」等の大作で絶大な成果をあげているし、同曲は21年の演奏予定がコロナ禍で叶わなかった念願の演目でもある。これらに《指環》での自信が加わった今回は当然聴き逃せない。 前半はグラズノフのヴァイオリン協奏曲。ロマン性や抒情美と民族的な色彩感を併せ持つ、近代ロシア屈指の重要作だ。ここは、成熟度や深みを増した名手・神尾真由子のソロも相まって、生演奏の少ない名作の真価を堪能できるに違いない。青柿将大の「Soli 2」など、幅広い世代の作曲家によるライブ・エレクトロニクス作品が並ぶ。ニュネスはポルトガル生まれ、青柿は日本生まれだが、国籍を問わず、才能溢れる作曲家が互いに影響を与え合ってムーブメントを形成するのは、リュリ以来のフランス音楽の伝統であり、このリサイタルは「フランス音楽のいま」に触れるまたとない機会となる。ピエール・ブーレーズの無伴奏ヴァイオリン作品「アンテーム 1」やバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番、やはりパリ在住の坂田直樹に委嘱した新作など、河村のヴァイオリニストとしての素顔に触れることができる独奏作品も演奏されるので、拡張性を持ったライブ・エレクトロニクス作品とのコントラストをじっくりと味わいたい。ピエタリ・インキネン ©Mechthild Schneider文:柴田克彦文:八木宏之神尾真由子 ©Makoto Kamiya加えて、ヴァイオリニストでもあるインキネンと神尾は名匠ブロンの同門ゆえに、二人の対話も聴きものとなる。これは見どころ満載の注目公演だ。©井田純代ピエタリ・インキネン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団待望の帰還を彩る壮大な音絵巻 ピエタリ・インキネンが日本フィルの指揮台に帰ってくる。彼は、2009年から同楽団と関係を持ち、16~23年には首席指揮者を務めて数多の名演を残した。23年5月が最後のコラボだったので、今回は1年半ぶりにして離任後初の共演。まずはこれだけでも期待値が高い。インキネンは、様々な楽団のシェフを歴任し、コンセルトヘボウ管、バイエルン放送響、クリーヴランド管等に客演している世界的指揮者だが、何と言っても23年バイロイト音楽祭の《ニーベルングの指環》で賞賛された実績が光る。そこでひと回り大きくなった彼が、この凱旋&再会公演でいかなる音楽を聴かせるか? 実に楽しみだ。 演目ではまずR.シュトラウスの大作「アルプス交響曲」が目をひく。オルガンや舞台外のホルン隊、数々の打楽器をはじめとする同曲の巨大管弦楽に身を浸すこと自体が、生演奏でこその醍醐味。しかもインキネン&日本フィ東京オペラシティ B■■■■■■■→C 河村絢音(ヴァイオリン)エレクトロニクスとの融合による新しい表現の可能性を求めて バッハから委嘱作品の初演まで、気鋭の若手演奏家が350年の音楽史を駆け抜けるリサイタル・シリーズ「B→C」に、パリ国立高等音楽院で研鑽を積んだヴァイオリニスト、河村絢音が登場する。 河村のプログラムの大きな特徴は、ライブ・エレクトロニクス作品を多く含むことだ。「ミクスト音楽」とも呼ばれる器楽と電子音響のための音楽は、1980年代以降のフランス音楽の大きな潮流のひとつであり、河村の長年の研究テーマでもある。電子音響を担うのは、パリ音楽院とIRCAMで学んだ佐原洸。河村と佐原はミクスト音楽の可能性を探求するユニットとしても活動している。 90年代から2000年代にかけてパリ音楽院の作曲科教授を務めたエマニュエル・ニュネスの「アインシュピールング I」やIRCAMから羽ばたいた大器、サッシャ・ブロンドーの「アトラス II」のほか、河村と交流を重ねるパリ在住の

元のページ  ../index.html#57

このブックを見る