eぶらあぼ 2024.11月号
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1番、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」を演奏する。ブランギエが得意とするラヴェル作品、「ダフニスとクロエ」第2組曲では、精密ながらも起伏豊かな演奏を期待したい。 2つのプログラムでキーマンとなる作曲家アレクセイ・ショールは、ウクラ45紀尾井レジデント・シリーズ III - 第2回 青木尚佳(ヴァイオリン) “Fantasy”こだわりの選曲で導く「幻想」の世界 ミュンヘン・フィルのコンサートマスターとして世界にも知られる存在となった青木尚佳。昨年12月、紀尾井ホールの「紀尾井レジデント・シリーズ」におけるイザイの無伴奏ソナタ全6曲演奏会は、日本のヴァイオリン演奏の極北というべき、驚異的なパフォーマンスによる圧巻の名演だった。今年も12月の同シリーズに登場し、今回はデュオ作品5曲、しかも全曲「幻想曲」というこだわりの演目を聴かせる。 シェーンベルク、シューベルト、シューマン、サン=サーンス、サラサーテの「幻想曲」が並ぶプログラムは壮観(全員イニシャル“S”!)。うち前4者の「幻想曲」はいずれも晩年期の作で、透徹した空気感、自由な展開が共通点となる。特に前半のシェーンベルク&シューベルトの並びは注目。いずれも知る人ぞ知る傑作かつ難曲で、硬質な現代性と抒情的なロマンの対比で、ヴァイオリンの底知れない表現力を体感できるはず。続くのは、独自の濃密な“ファンタジー”に満ちたシューマンに、旋律美とハープの響きが優雅なサン=サーンス。いずれも発見の多い名品で、ドイツで充実著しい青木の演奏で聴けるのは僥倖。やや硬派な4曲を経て、最後に理屈抜きに技巧と歌心を楽しめるサラサーテ「カ12/1(日)、12/4(水)各日19:00 東京オペラシティ コンサートホール 問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp※公演によりプログラムは異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。12/6(金)19:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールウェブチケット webticket@kioi-hall.or.jp https://kioihall.jpリオネル・ブランギエ ©Simon Pauly青木尚佳 ©井村重人ボリス・クズネツォフ ©Nikolaj Lundベフゾド・アブドゥライモフ ミハイル・プレトニョフ ©Evgeny Eutykhov©Irina Shymchakイナ生まれでニューヨークを中心に活躍。数学者、ヘッジファンドの辣腕社員を経て、40代で突然音楽の世界へ飛び込んだ。有名演奏家との親交も深く、そうしたコラボレーションとして生まれた作品はロマンティシズムあふれる作風が特徴だ。文:鈴木淳史文:林 昌英早川りさこルメン幻想曲」で、ヴァイオリン音楽の喜びを満喫できる構成だ。 ピアノはドイツを中心に活躍するボリス・クズネツォフ。サン=サーンスはN響ハープ奏者の早川りさこが共演。名人たちと共に青木が構築する「幻想」の世界、存分に浸りたい。リオネル・ブランギエ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団二人の傑出したピアニストと共演する特別な二夜 注目のブランギエが東京フィルとの初めての共演を果たす。28歳でチューリッヒ・トーンハレ管の首席指揮者に就任したことが大きな話題となった、ニース生まれのフランス人指揮者だ。東響やN響へも客演、洗練された色彩感覚を披露し、再来日が待望されていた。 今回は、2つのプログラムを用意。12月1日は、巨匠ミハイル・プレトニョフと共演、ショールとプレトニョフの共作によるピアノと管弦楽のための組曲第2番を演奏する。特別客演指揮者として東京フィルとは縁が深いプレトニョフ。息の合った演奏が期待できるはず。後半のムソルグスキーの「展覧会の絵」は、ラヴェル編曲ならではの華麗な色彩に満ちあふれることだろう。 その3日後、4日には俊英ベフゾド・アブドゥライモフと共演。上から下まで鳴らし切るダイナミックなパフォーマンスが評判を呼ぶ、ウズベキスタン生まれのピアニストだ。ショールのピアノ協奏曲第

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