eぶらあぼ 2024.11月号
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 年末恒例の「びわ湖ホール ジルヴェスター・コンサート」が27回目を迎える。ホールが開館した1998年から毎年行われてきた名物公演だ。今年もマチネー公演は続行。大晦日の15時開演という足を運びやすい時間帯に開かれる。ウェルカムコンサートや地域の企業、団体からの協賛による豪華賞品が当たる抽選会もあって、年越し前のひと時を過ごすのに絶好なジルヴェスター・コンサートだ。 指揮台に立つのはびわ湖ホール第3代芸術監督の阪哲朗。この演奏会には2021年以来の出演で、同ポスト就任後は初めてになる。司会はこのコンサートで毎年お馴染みの桂米團治。昨年は、びわ湖ホール他で上演された野村萬斎演出の全国共同制作オペラ《こうもり》で、賑々しく狂言回しのフロッシュ役を演じた。 一般公募のジルヴェスター・ファンファーレ隊が今年も参加して、R.シュトラウスの「ウィーン・フィルハーモニーのためのファンファーレ」で幕が上がる。ちょうど100年前の1924年に書かれた知る人ぞ知る作品。そこに続くのが、これも珍しいコルンゴルトの「シュトラウシアーナ」だ。来年3月の同ホールのプロデュースオペラでこの作曲家の代表作《死の都》が上演されることにちなんでの選曲だが、同じシュトラウスでも、こちらはヨハン・シュトラウスII世の曲を題材として作曲したもの。どちらのシュトラウスとも、ウィーンに学んだ阪とのつながりがある。 グリーグのピアノ協奏曲の独奏には中川優芽花を迎えた。2021年のクララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝していて、これから国内外でさらなる活躍が期待されるピアニストだ。中川はこの作品について「北欧の雄大な自然を感じる」と語っているが、その言葉を体現するであろう、スケールの大きな彼女の演奏をぜひ聴いてほしい。この日のオーケストラである大阪交響楽団とも今年9月の定期演奏会で共演していて、その芯の通った演奏は聴衆だけでなく、共演者たちからも絶賛されたという。 メイン・プログラムは、2025年に生誕200年を迎えるヨハン・シュトラウスII世の《ウィーン気質》よりハイライト。題名は1873年にハプスブルク帝国の皇帝であったフランツ・ヨーゼフI世の長女の婚礼を祝う舞踏会のために書かれた同名のワルツから採られていて、このオペレッタの中にもそのメロディが登場する。作曲者の没後に友人の補筆によって完成されたが、元々のコンセプトは、多忙で年齢も重ねたシュトラウスに、既存のワルツやポルカなど、オーケストラ曲を使ってオペレッタを構成してほしいという依頼だった。プロイセンとオーストリアの気質の違いがコミカルに描かれる。びわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーが主要キャストを担い(ツェドラウ伯爵:山本康寛、ガブリエーレ:船越亜弥、ギンデルバッハ:市川敏雅 他)、合唱は他の声楽アンサンブルのメンバーとともに一般公募のジルヴェスター合唱団が出演しての日本語での歌唱だ。滋賀県内、京阪神地域からはもちろん、遠方からもぜひ足を運んでいただきたい。それだけ魅力的なプログラムが揃った。華やかなだけでない、ひとひねりもふたひねりもあるジルヴェスター・コンサートだ。文:小味渕彦之阪 哲朗中川優芽花©Susanne Diesner山本康寛船越亜弥12/31(火)15:00 びわ湖ホール 大ホール市川敏雅桂 米團治びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 https://www.biwako-hall.or.jp/滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールは、関西随一のオペラ劇場として、一流のオペラやバレエに加えコンサートも開催。また、国内外の実力派アーティストが充実したアンサンブルやソロを披露するほか、講座なども開催しています。このコーナーでは、びわ湖ホールが主催する注目の公演をご紹介します。びわ湖ホール ジルヴェスター・コンサート 2024注目集める若手のピアニズムとこだわりのウィーン・プロで一年の締めくくりを!びわ湖ホールPreview

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