eぶらあぼ 2024.11月号
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それでも踊るそれでも踊る者たちのために者たちのために126Profileのりこしたかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』『ダンス・バイブル』など日本で最も多くコンテンポラリー・ダンスの本を出版している。「ダンス私塾オンライン」開設。皆様の参加をお待ちしております!乗越たかお第121回 「自分の身体を『いちばん居心地のいい場所』に」  『ぼっち・ざ・ろっく!』『古見さんは、コミュ症でせだと思った瞬間、居場所がないと感じた時を詩にす。』など、近年漫画やアニメでもコミュニケーショするなどして発表し共有していくのである。ン不全がテーマの作品に良作が多い。 意外なことに、コミュニケーションを取ることが目 コンテンポラリー・ダンスが登場した1980年代、的なのではない。「自分の存在と意見には価値があり大切なものであると子どもたちに感じ自信を持っコミュニケーションそのものが大きなテーマだった。だがそれは「コミュニケーションは、わかりあえないてもらうこと」が目的だというのだ(TJF2022-2023前提で始めるべきなのでは」という問いかけだった事業報告書より)。これにはハッとさせられた。のだ。熱血スポーツや学園ドラマで量産されていた 現代ではコミュニケーションスキルの向上を謳う風潮は強い。しかし本来「人間は自分自体に価値が「熱い涙を流して怒鳴りあったり殴り合ったりしたあと、夕日に向かって走り出すと、なぜか心が通いああるのだ」と実感させることが重要だろう。コミュニう物語」への反動が大きかったのだ。ケーションはその先にある。承認欲求もいいが、そ しかし1990年代以降、急速にネットが生活に浸透の奴隷になっては元も子もない。 PCAMPでは、その実感のためにダンスや演劇をし、やがて個人レベルで行き渡り、デジタルネイティブと呼ばれる世代が育ってくると、コミュニケーショ採り入れている。むろんプロのダンサーや俳優を目ンのあり方は一変した。深い理解より「つながってい指すわけではない。自分の価値を知り、居場所を発ること」が重要かつデフォルトであり、秒単位でつな見するために最適なのだ。「ひとつとして同じ身体はなく、自分の身体はユニークな存在である」とするのがりを確認していないと不安に駆られたりする。 その一方で人と関わる煩わしさそのものを避けるがコンテンポラリーの基本だからである。ようになる……。だが「人と関わることが苦手なだけ ステップを覚えて再現することだけがダンスではで、嫌いなわけではない」人もいる。だからこそ冒頭ない。「自分の身体は存在する価値があり、大切なものだ」という、人生にとって最も重要な基盤となるに挙げたような作品が支持されるのだろう。 オレが夏に取材した富山のオーバード・ホールの実感を手に入れる。自分の身体を「最も居心地の良PCAMP(パフォーマンス合宿)は公益財団法人国い居場所」にするためにコンテンポラリー・ダンスを際文化フォーラム「TJF」が推進してきたもの。10代使えばいい。みんな踊ろうぜ!の中高校生が3泊4日の合宿で寝食を共にし、最終日には成果のパフォーマンスを発表させる。海外交流ではなく、日本の中に内在する二世などさまざまな背景を持った子ども(アイデンティティーを持ちづらい人も多い)との交流を目的としている。 この中で採用されていたNYの芸術財団ピンチョンアンドカンパニーのプログラム「I am from」が面白かった。タイトルの通り自分のルーツや、今まで幸

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