eぶらあぼ 2024.11月号
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CDSACDCDCD116チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」/大友直人&東響イタリアのチェロソナタを集めて/山本徹フランク、グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ集/ダニエル・ロザコヴィッチ&ミハイル・プレトニョフ藤田真央のソニークラシカル待望の第2弾アルバムは、ショパン、スクリャービン、矢代秋雄による「24の前奏曲」を収めた2枚組の大作だ。24の全調を網羅した、作曲家それぞれの着想の宝庫のような作品群を、藤田は説得力のあるテンポ設計や、声部の立体感を生む恐るべきコントロール力によって理知的に描き分ける。ショパンの情念、スクリャービンの陰影が鮮やかに浮かび上がる一方、1945年に15歳の矢代が残した前奏曲は、五音音階が随所に聞かれる作品で、藤田はほのぼのとした繊細な世界観を表現。出版されてまだ日が浅い作品だが、一つの決定盤がここに誕生した。(飯田有抄)現在の好調に至るまでの東京交響楽団を支え続けた大友直人が、35年にわたり同楽団と演奏を重ねてきた「悲愴」はなんと16回目。1989年といえばカラヤンの没年。この間に多様な演奏の流行が生まれる中、ぶれずに正攻法を貫いてきた大友の面目躍如たる、まさにオーソドックス、「これぞ悲愴」という過不足のない構築。外連味とは無縁、安心して浸れる流れを作りながら、いつの間にか深淵を覗くような響きを生み出す。その深い懐こそ、あらゆる表現が可能になった東響の進化、そして揺るぎない名匠となった大友の深化の表れ。「オーソドックス」であり続けることの重みをも伝える。(林 昌英)すでに多くのピリオド楽器アンサンブルやオーケストラで活躍している山本徹、待望の初ソロ・アルバムだ。まずプログラムが素晴らしい。D.ガブリエッリに始まりランゼッティに終わる、チェロ音楽草創期のイタリア・バロック名曲集。あの名手アンナー・ビルスマの最初期録音もそうだった。ラプソディックなガブリエッリのソナタから、ヴィヴァルディやカルダーラのバロックど真ん中を経て、古典派の入口へ。山本のチェロはガット弦の生々しい質感を生かし、時に荒々しいまでに強いアタックで楽曲を活気づける。通奏低音も好サポート。今まさに原木から掘り出される、チェロ音楽の初期形態だ。(矢澤孝樹)2001年スウェーデン生まれの俊才のワーナー移籍第1弾。大家プレトニョフのピアノと共演した注目のアルバムだ。二人は44の年齢差があり、しかもプレトニョフにとってヴァイオリン・ソナタの録音は初という点で、興味深い1枚でもある。果たして演奏は、プレトニョフの雄弁極まりないピアノに導かれて、濃厚・濃密でスケールの大きなヴァイオリン音楽が展開されており、コラボの意味と成果を実感させられる。なかでもフランクのソナタは二人の激しい応酬が際立つ快演。1970年ウクライナ生まれのショールの珍しいソナタもことのほか美しい聴きものだ。 (柴田克彦)ショパン:24の前奏曲/スクリャービン:24の前奏曲/矢代秋雄:24の前奏曲藤田真央(ピアノ)チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」大友直人(指揮)東京交響楽団ドメニコ=ガブリエッリ:チェロソナタ ト長調/ヴィヴァルディ:チェロソナタ イ短調/カルダーラ:チェロソナタ第13番 ヘ短調/ペルゴレージ:シンフォニア ヘ長調/ランゼッティ:チェロソナタ 嬰ヘ短調 他山本徹 野津真亮(バロックチェロ)上尾直毅(チェンバロ)フランク:ヴァイオリン・ソナタ/アレクセイ・ショール&ミハイル・プレトニョフ:ヴァイオリン・ソナタ/グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番 他ダニエル・ロザコヴィッチ(ヴァイオリン)ミハイル・プレトニョフ(ピアノ)ソニーミュージックSICC 30894〜5(2枚組) ¥4000(税込)収録:2023年9月、ミューザ川崎シンフォニーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00847 ¥3850(税込)ナミ・レコードWWCC-8017 ¥3300(税込)ワーナーミュージック・ジャパン2173.228580 ¥オープン価格72 Preludes/藤田真央

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