eぶらあぼ 2024.11月号
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CDCDCDCD114ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」/秋山和慶&東響チャイコフスキー:四季/ブルース・リウなんと美しいバッハだろうか。27歳の若さで無伴奏の高峰に挑戦したのは、この世代を代表するヴァイオリニストのひとりとして、独自の活動が光る髙木凜々子。卓越した「知情意」のコントロール。直球のアプローチながら、誰よりもしなやかで流麗。しかし表面的ではなく「情」も豊か。快速の楽章がこれほど美麗に奏でられるのは驚きで、ときおり現れる攻めた表現も絶妙に決まる。特にソナタ第1番やシャコンヌ中盤では「意」が勝り覇気も十分、軽い興奮すら覚える。端整な造りの裡にある、激しいまでの胆力。髙木の実力を伝えるばかりか、多くの人の愛聴盤になり得るバッハだ。(林 昌英)大ベテラン・秋山和慶の指揮生活60周年の年頭を飾る2024年ニューイヤーコンサートのライブ録音。全体を通して、真摯かつ堅牢な音楽の中に柔軟性や活力が宿った、堂々たる演奏だ。「新世界より」の序奏から丁寧な造作とじっくりとした運びに耳を奪われる。この方向性は全曲にわたって続き、第2楽章のしみじみとした味わいも心に染みる。リズムの明確さや強弱のきめ細かさも際立っているが、大きく見れば全てがあくまで自然体。まさに円熟のタクトによる“大人の演奏”といった感がある。国宝的重鎮の貫禄の好演および覇気衰えぬ記録として傾聴すべき1枚。 (柴田克彦)フランス作品集にサティ。ショパン国際ピアノコンクールの優勝者というイメージから抜け出したいかのような選曲でブルース・リウの新譜は続く。今回はチャイコフスキー。12曲からなる「四季」をからっとした響きで、その技巧をさりげなく隠しながら、リラックスした落ち着きで弾いた。まるでアップライトのピアノで鳴らしたようなインティメートな瞬間も。主部を軽快でスマートに駆け抜け、中間部では一転してナイーヴな表情を開けっ広げに見せる。そうしたコントラストが計算尽くではなく、このピアニストの人となりが自然に表れているところがいい。  (鈴木淳史)英国歌曲の魅力を伝えるコンビ(ご夫婦)によるシリーズ最新作。前作がいわゆる愛唱歌を主軸とした内容だったのに対して今回は様々なタイプの、伝承を語るように歌われる「バラッド」が中心。伝統への敬意に溢れた編曲としなやかな歌唱で〈蛍の光〉や〈ダニー・ボーイ〉のようなお馴染みの曲にも歴史の厳かな重みが感じられる。サイモン&ガーファンクルのヒット曲で知られる〈スカボロー・フェア〉のオリジナルも必聴だが、シェイクスピア戯曲の劇中歌、オフィーリアが歌う〈誠の恋人をどう見分けるのでしょう?〉(『ハムレット』)やデズデモーナの〈柳のうた〉(『オセロ』)も味わい深い。(東端哲也)BRAVO RECORDSBRAVO-10014/15(2枚組) ¥4400(税込)ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」/J.シュトラウスⅡ世:ワルツ「春の声」秋山和慶(指揮)東京交響楽団チャイコフスキー:四季、ロマンスブルース・リウ(ピアノ)イギリス民謡(なかにしあかね編):蛍の光(遠く懐かしい日々)、カッコウ、柳のうた(あぁ柳 柳よ柳)、スカボロー・フェア(スカーバラの市)、ダニー・ボーイ、誠の恋人をどう見分けるのでしょう?、三羽のカラス、アフトンの流れ、酔いどれ水夫(酔いどれ水夫をどうする?) 他辻裕久(テノール)なかにしあかね(編曲/ピアノ)コジマ録音ALCD-7306 ¥3300(税込)収録:2024年1月、横浜みなとみらいホール(ライブ)マイスター・ミュージックMM-4534 ¥3520(税込)ユニバーサル ミュージックUCCG-45102 ¥3300(税込)J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ BWV1001-1006(全6曲)/髙木凜々子J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第1番〜第3番、無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第1番〜第3番髙木凜々子(ヴァイオリン)Danny Boy―イギリス愛唱歌集II―/■裕久&なかにしあかね

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