eぶらあぼ 2024.10月号
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71 東京藝術大学がなにやら面白そうな公演を企画している。有名なハイドンの弟であるミヒャエル・ハイドンがザルツブルクで上演した音楽舞台劇《ティトゥス・ウコンドン、不屈のキリスト教徒》(1770/74)を、完全なかたちとしては250年ぶりに復活上演するというのだ。この「ウコンドン」という言葉の響きに引っかかるひともいるかもしれない。実はこの作品、日本のキリシタン大名・高山右近らをモデルにした「日本劇」と呼ばれるものなのだ。登場人物には、秀吉と家康がモデルの「ショーグンサマ」をはじめ、日本語の響きがたくさん漂っている。小泉将臣伊藤キム なぜ、日本が鎖国しているときに日本をテーマにした作品を、と思われるかもしれない。実は、17世紀から19世紀初頭にかけての欧州では日本におけるキリスト教信仰をテーマにした演劇作品が150以上も作られている。布教活動が目的だった。東洋にこんなにも熱心に信仰しているひとびとがいる、と。 さらに興味深いのは、ミヒャエルの同僚で友人でもあったモーツァルトが、この作品を通して、日本という国を知っていたのではないか、ということも演奏しているが、「二度と同じ演奏はしない」ことをモットーにしている彼の新たな一面を見ることができそう。国分寺ではリサイタルに加えてコンクールの本選審査員を務め、公開マスタークラスも担当する予定。常に前向きで、挑戦する心を失わないケンプ。「作曲家の背景を知ること、作品の生まれた土地の文化などを知ること、本を読んだり絵を見たりすることが演奏を肉厚なものにしてくれる」と以前語っていたが、彼の演奏は、五感を刺激する、深い味わいのあるピア朝岡 聡戸田 薫中山美紀 ©Martin Chiang布施砂丘彦 ©Martin Chiangである。 構成・演出を担当するのは、ここ数年ミヒャエル作品の普及に尽力しているコントラバス奏者で音楽批評家の布施砂丘彦。藝大生による古楽オーケストラと合唱を率いるのは教員の戸田薫(バロック・ヴァイオリン)と卒業生の中山美紀(ソプラノ)だ。ダンスの伊藤キム、司会の朝岡聡、そして俳優は小泉将臣(俳優座)ら10名以上が出演。豪華メンバーによる記念すべき復活上演に胸が高まる。ニズム。若きピアニストにもお手本となるに違いない。文:砂岡 弦文:伊熊よし子10/20(日)15:00 東京藝術大学奏楽堂問 東京藝術大学演奏藝術センター050-5525-2300 https://www.geidai.ac.jp12/8(日)14:00 入間市産業文化センター問 入間市産業文化センター04-2964-8377 https://www.iruma-bunka.jp12/14(土)14:00 国分寺市立いずみホール問 国分寺市立いずみホール042-323-1491 https://www.kokubunji-izumihall.jp藝大プロジェクト2024 第1回「西洋音楽が見た日本」キリシタン大名を描いたミヒャエル・ハイドンの音楽劇、復活上演!フレディ・ケンプ ピアノ・リサイタル華麗な技巧と豊かな抒情の世界を味わう 1998年のチャイコフスキー国際コンクール入賞後、世界各地で演奏。また、マスタークラスの指導、コンクールの審査員など幅広い活動を展開しているフレディ・ケンプが、入間と国分寺でリサイタルを開く。シューベルトの「楽興の時」、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番「熱情」、ラフマニノフの「楽興の時」というプログラム。シューベルトの「楽興の時」は即興的な小品6曲で構成され、各曲は軽やかで豊かな歌心と親しみやすい旋律が特徴。特に第3番の人気が高い。ラフマニノフの同名作品は作曲者のインスピレーションが色濃く表れた豊かなテクスチュアをもつ6曲構成で、ショパンの影響を感じさせるが、超絶技巧が随所に挟み込まれているのはラフマニノフならでは。今回は趣きの異なるシューベルトとのコントラストが堪能できる。 さらにケンプにとってベートーヴェンは欠かせない作品で、日本でも何度

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