eぶらあぼ 2024.10月号
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68倉自身の編曲による組曲第4番(原曲:チェロ)とソナタ第3番(原曲:ヴァイオリン)を演奏し、その多面性を披露。リハーサルでは、ホールの響きを瞬時にとらえ、完璧な準備をするという。 これまで内外の作曲家への委嘱も積極的に行い、世界初演も数多く手がけたが、今回もバッハに続いてそれらが披露される。ピアノとの二重奏2曲では、室内楽的な空間を目指す。バリトンとのデュオでは、声との共演で、マリンバの新たな表現世界を探求する。 「現代の作曲家と共同で作品を作り上げ、世に送り出す活動はとても意義深いことです。自分のそうした姿勢を、次世代のマリンバ奏者に興味をもってもらえたら嬉しいですね」なくてもいいか、ともおもう。それでも敢えて、そう言うのは、詞がゲール語であるからか。よく知らないことばだな、なんておもいわずらわなくていい。ことばは意味より音、うたうための媒体で、重心は声そのものにある。声そのものの力、神秘は、ことばの音と声とはあいまってじかに伝わってくる。 全国で9回の公演が予定されているアヌーナ。東京・すみだトリフォニーホールでは、小泉八雲の『雪女』をテーマに、能舞(津村禮次郎)、大10/28(月)19:00 東京文化会館(小)問 ムジカキアラ03-6431-8186 https://www.musicachiara.com他公演 10/26(土) 神戸新聞松方ホール(078-362-7191)12/7(土)17:30 すみだトリフォニーホール問 プランクトン03-6273-9307 https://plankton.co.jp他公演11/22(金) 西宮、11/23(土・祝) 大阪、11/24(日) 東海、11/26(火) 札幌、11/29(金) 静岡、11/30(土) 横浜、12/1(日) 所沢、12/8(日) 三鷹※ツアーの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。鼓(柿原光博)、笙(東野珠実)を迎え、ステージをつくるという試みもあることを、つけ加えておこう。文:伊熊よし子文:小沼純一名倉誠人60 マリンバ・リサイタル Aspirations:夢を追い続ける者60年の歩みの集大成はバッハと自ら息を吹き込んだ作品で ニューヨーク在住のマリンバ奏者、名倉誠人が生み出す音は、オーケストラのような多種多様な響きが印象的で、原始的な木の音色に奏者が編み出すヒューマンなぬくもりが加わり、聴き手の心の奥にゆったりと染み込む。その彼が60歳を記念し、「Aspirations:夢を追い続ける者」と題したコンサートを開く。プログラムはJ.S.バッハの無伴奏作品に加え、委嘱作品のピアノとの二重奏、マリンバとバリトンのための新作で構成され、それぞれ日本初演/世界初演というこだわりの内容だ。 「長年対峙してきたバッハは大切な存在です。この作曲家の作品はマリンバで演奏しても、奏法や様式が理解できていれば大丈夫なのです。本当に強固な音楽だと思います」 過去の取材でこう語っていた名倉は、自身のマイルストーンを意味するコンサートで、バッハの無伴奏作品をいかにマリンバで演奏するかを探求する。名アヌーナ(コーラス) 来日公演2024アイルランドが世界に誇るコーラス・グループが10年ぶりに来日 声があわさる、かさなる。誰だって声をだす。からだから声をだす。だから声たちのひびきは楽器とはちがったなじみ、したしみを感じる。声の、声のあわさった音楽を、耳を、いや全心身を声のかさなりにかたむけたい。そういうひとにアヌーナを勧めたい。 アヌーナはすでに8回来日しているアイルランドのコーラス・グループ。アイルランドで伝承された音楽をベースとしているが、リーダーにして作曲家のマイケル・マクグリンの手による新しい楽曲をとおして、さまざまな新しい試みを数々おこなっている。 美しい声のひびきに癒される、という言いかたも可能かもしれないが、それだけではない。美しいひびきがどうやってつくられるのかを試行し、ときに不協和音をまぜ、おもいがけない転調をし、奏でられる音楽はひとつの楽曲のなかでも、さまざまに色を変える。もうアイルランド云々とわざわざいわ

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