eぶらあぼ 2024.10月号
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62狂乱 KYO-RAN 響蘭 佐藤美枝子 ソプラノ・リサイタル日本を代表するプリマドンナの超絶技巧を堪能 佐藤美枝子は今が「絶頂期」である。つまり、ソプラノにとってはチャイコフスキー国際コンクール声楽「声」という楽器を極限まで部門で日本人として初めて優勝を飾っ使って歌い上げることが求められる。1曲でも命懸けのてから26年、名実ともに「日本を代表「狂乱アリア」を4曲も歌おするプリマドンナ」である彼女に、このうとは、佐藤美枝子以外の表現はいかがなものかと思われるかも一体誰が、こんなプログラムしれないが、ここ数年のパフォーマンを考えつくだろう。スを聴けば、佐藤美枝子は声、技術、表 この究極の企画をバック現、演技すべてがこれまでで最も高いアップするのは、佐藤が「師次元で融合している「絶頂期」なのだ匠」と語る演出家の岩田達宗と感じざるを得ない。 そんな彼女のリサイタルが10月にと、今オペラのピアノを弾か開催される。タイトルは「狂乱 KYO-せたらこの人の右に出るものRAN 響蘭」。なんとベッリーニ《清はいない河原忠之のふたり。教徒》《海賊》とドニゼッティ《ランメル文字通りオペラに命を捧げてきた3人が描き出す4つの「狂モールのルチア》《アンナ・ボレーナ》の4つの「狂乱の場」を歌うのだという。乱の場」。単なるソプラノ・リ「狂乱の場」のアリアとは、過酷な運サイタルではない、ものすご命に見舞われたヒロインが正気を失っい舞台となるにちがいない。た状態で歌うものだが、そこにはソプラノの技巧や高音の響きなどがこれでもかというほど盛り込まれている。 シンガポール響を指揮するのは音楽監督で、1949年オーストリア生まれの老匠、ハンス・グラーフ。エレーヌ・グリモー独奏のラヴェルのピアノ協奏曲 ト長調、ベートーヴェンの「運命」などに加えて、地元の若手作曲家コー・チェンジンの「シンガポールの光」も演奏す左より:ハンス・グラーフ ©Singapore Symphony and Bryan van der Beek/エレーヌ・グリモー ©Mat Hennek/大友直人 ©Rowland Kirishima/LEO ©Nippon Columbiaる。一方の京響は、大友直人の指揮でブラームスの交響曲第1番に加え、伊福部昭や宮城道雄など日本人の作品も取りあげる。新世代の箏奏者で、作曲家・今野玲央としても大活躍のLEOの登場もききものだ。1200年の古都にアジアの響きを聴こう。文:山崎浩太郎文:室田尚子10/19(土)16:00 シンガポール交響楽団 10/22(火)19:00 京都市交響楽団京都コンサートホール問 日本オーケストラ連盟03-5610-7275 https://www.orchestra.or.jp/aow2024/10/12(土)15:00 紀尾井ホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jpアジア オーケストラ ウィーク 2024初の京都開催!シンガポール響&京響を聴き比べ 近年、アジアのクラシック音楽界の成長は著しい。日本フィルの首席指揮者として活躍するカーチュン・ウォンはシンガポールの出身で、ヨーロッパでも評価を高めている。また、マケラ以上の俊英と期待されるタルモ・ペルトコスキはフィンランド人だが、 フィリピン人の母をもつ。かれがフィリピンの音楽界にも目を向けたら、面白いことが起きるかもしれない。 アジアのオーケストラもやはり躍進している。日本にいながらにしてその演奏を聴ける貴重な機会となってきたのが、文化庁芸術祭主催の「アジア オーケストラ ウィーク」である。 アジア太平洋地域からオーケストラを日本に招く催しで、2002年から続けられてきた。これまでは東京中心だったが、今年は初めて京都で開催され、カーチュン・ウォンの母国を代表するシンガポール交響楽団と、京都市交響楽団が、それぞれに演奏会を行う。

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