eぶらあぼ 2024.10月号
62/153

第765回 東京定期演奏会 11/1(金)19:00、11/2(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp59“二刀流”名手の音楽づくりを吹き振りと傑作シンフォニーで堪能 オーボエ界の頂を極めた吹き手のひとりがフランソワ・ルルーだ。バイエルン放送響の首席奏者を経てミュンヘン音大教授。レ・ヴァン・フランセのメンバーとして来日の機会も多く、アンサンブルの中で発揮する存在感と音楽の牽引力の強さは圧巻というほかない。ちなみに奥さんはヴァイオリン界が誇る閨秀ソロイストのリサ・バティアシュヴィリ。羨ましい音楽家人生! そのルルーは指揮者としても気を吐いている。すでにオスロ・フィルやバーミンガム市響など錚々たる楽団から招聘を受け、客演歴も長いスコットランド室内管と2020年にリリースしたCDでは、ビゼーの交響曲 ハ長調や「カルメン」組曲で才気煥発な音楽作りを披露。25年の秋にはカンマーアカデミー・ポツダムの芸術監督に就任。昇り竜の勢いすら感じる。 22年11月に初共演を果たした日本フィルの指揮台に彼が帰ってくる。プグランプリ・コンサート2024 カピバラ・ピアノ・クァルテット動物の名を冠したユニークな俊英四重奏団が凱旋! 2023年に開かれた大阪国際室内楽コンクール・第2部門で第1位を獲得したカピバラ・ピアノ・クァルテットが今年11月、「グランプリ・コンサート2024」として、大阪・住友生命いずみホールを含む全国11ヵ所で公演を行う。ピアノ三重奏/四重奏を対象とするこの部門でピアノ四重奏団が優勝したのは同コンクール史上、初めてであり、注目を浴びた。とりわけファイナルで演奏したブラームスのピアノ四重奏曲第3番では、生き生きとした表現力と精緻なアンサンブルが見事に融合していた。 ソリストとしても室内楽奏者としても優秀なメンバーが集まった国際色豊かなグループ。ピアノのマリオ・ヘリングは故ラルス・フォークトの愛弟子で、リーズ国際ピアノ・コンクールの入賞者。母は日本人。ヴァイオリンの岡田脩一はボルドー生まれ、パリ国立高等音楽院で学んだ逸材。アムステルダム育ちのヴィオラの近衞剛大は、近衞ログラムは絶好の内容だ。ラフの「シンフォニエッタ」は木管楽器とホルン各2本ずつの10人編成。その第1オーボエの椅子に座ったルルーが合奏を仕切りながら、演奏仲間と聴衆の両方を幸福感で結ぶという、確信に満ちた行為にいそしむ姿が目に浮かぶ。彼一流の美音と濃密な歌心を堪能させるのは、メンデルスゾーンの「無言歌集」(抜粋)のオーボエと弦楽合奏版(A.タルクマン編)。そしてメンデルスゾーンは“指揮者ルルー”が得意とする作曲家だけに、秀麿のひ孫。チェロのミンジョン・キムは韓国出身、クロンベルク・アカデミー等で学んだ。弦楽器の3人は小澤征爾国際アカデミー出身。 そして気になる名前の由来だが、カピバラを選んだのは、4人とも好きな動物で温和なイメージを持つことと、特定の作曲家やレパートリーに縛られない名前だからだそう。 大阪公演のプログラムはマーラー、メンデルスゾーンの第2番、シュニト11/11(月)19:00 大阪/住友生命いずみホール問 日本室内楽振興財団06‐6947‐2184 https://jcmf.or.jp他公演11/17(日) トッパンホール(日本テレビ小鳩文化事業団03-5259-5533) 他※全国ツアーの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。ケ、そしてコンクールで弾いたブラームスの第3番と意欲的だ。とくにシュニトケ(1988年)は、マーラーの未完の楽章に基づいているので、2曲を一緒に聴けるのは貴重な機会である。フランソワ・ルルー ©ThomasKost交響曲第3番「スコットランド」も通り一遍の域を超えた解釈を得て鳴り響くことだろう。文:木幡一誠文:後藤菜穂子©Anton Spronkフランソワ・ルルー(指揮/オーボエ) 日本フィルハーモニー交響楽団

元のページ  ../index.html#62

このブックを見る