eぶらあぼ 2024.10月号
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第166回 東京オペラシティ定期シリーズ11/13(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール第1008回 オーチャード定期演奏会11/17(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール第1009回 サントリー定期シリーズ11/19(火)19:00 サントリーホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 https://www.tpo.or.jp53の良さのなかに、数々のクセのあるエピソードを念入りに描きつつ、光と闇がシャープなコントラストを成す彫りの深い演奏が堪能できるはずだ。 そして、チョン・ミョンフンはもちろんのこと、これまでも尾高忠明やダン・エッティンガーらと培ってきたマーラー演奏の伝統をもつ東京フィル。 そして後半は、若き日から愛奏してきたレパートリーであるムソルグスキーの「展覧会の絵」。彼ならではの骨太で力強い音、クレイジーとの境界に迫る表現が生かされる作品だ。研ぎ澄まされた強靭なテクニックで、音楽がもつエネルギーや精神世界を私たちにそのまま提示してくれることだろう。 全く異なる多様な角度から、現在の清水和音の音楽性、ピアノ表現の美点、格好良さを確かめることができる、魅力的な作品が並ぶ。生身のピアニストが今は亡き作曲家たちと向き合い、真剣に遊ぶ姿をみせてくれることに期待したい。アンドレア・バッティストーニ ©上野隆文新しい伝説の誕生を期待していいのではないか。文:鈴木淳史文:高坂はる香 ©Yuji Hori11/10(日)14:00 大阪/ザ・シンフォニーホール問 キョードーインフォメーション0570-200-888 11/23(土・祝)14:00 サントリーホール問 サンライズプロモーション東京0570-00-3337https://www.promax.co.jpアンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団初めて挑む「夜の歌」で描き出すマエストロのマーラー観 今年、バッティストーニが東京フィルの首席指揮者に就いてから8シーズン目を迎えた。毎回スケールの大きな演奏を繰り広げる若きマエストロは、マーラーの交響曲をこれまで3曲取り上げている。交響曲第1番(2014年1月)、第8番(19年1月)、第5番(22年9月)だ。 今回は、いよいよ交響曲第7番の登場となる。大曲ながらも、つかみ所に欠ける作品とされたせいか、かつては演奏会では他のマーラー作品と比べ、いささか取り上げにくい交響曲と見なされていたこともあった。近年は、作曲家の優れた管弦楽書法の集大成であり、そのドラマトゥルギーに頼らない幻想性、革新性に脚光が当たり、オーケストラの年間プログラムを華やかに彩る「勝負曲」ともなりつつある。 バッティストーニ自身も、多彩な魅力がふんだんに詰まった傑作だとして、かねてから指揮したいと思っていた交響曲という。彼らならではの全体の流れ清水和音 ピアノ・リサイタル満を持してのソロ・コンサートで知る求道者の“いま” 清水和音といえば、コンチェルトに室内楽シリーズにと多忙な演奏活動を続けている印象だが、驚くことにソロ・リサイタルを行うのは東京では4年ぶり、大阪では10年ぶりなのだそう。 用意されたのは、久しぶりに清水のピアノの音にどっぷりと浸かることができる、そんな機会にぴったりのプログラムだ。 演奏会は、新しいレパートリーだというレスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア」で、軽やかかつ華やかで品格のある空気とともに幕を開ける。そこに続けられるのは、全曲録音を行うなど長らく向き合い続けているベートーヴェンのピアノ・ソナタから、最後の第32番だ。60代に入りますます円熟を極める清水が、ベートーヴェンがピアノ音楽の高みに上り詰めたかのようなこのソナタを今届けようと選んだ想いを、音を通じて受け止めることができるだろう。

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