eぶらあぼ 2024.10月号
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40Interview山根一仁(ヴァイオリン)集大成でありスタートでもある“今”のバッハ無伴奏 山根一仁が20代の最後の年、J.S. という。夏にインドネシアでバッハを弾バッハに集中的に取り組んでいる。無いて早くも録音からの変化を感じたと語伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルる山根は、その滞在時に現地のガムランティータ全6曲、5月に彼のファーストア奏者たちと特別な経験ができたという。 「出会ったその場で彼らの演奏をすぐルバムとなる録音を行い、11月にはトッに覚えて加わりましたが、音楽そのもパンホールで全曲公演を開催する。 山根は20代でミュンヘン留学、クリのだけで人がつながり、垣根なく互いストフ・ポッペンに師事したことで、「そに歩み寄ってコミュニケーションをとれまでに積み重ねたものを壊す」経験る、本当の意味で“音楽に国境はない”になったと振り返る。と思えた初めての経験になりました。 「それまでバッハは重厚で確固たるもクラシック音楽の垣根をこえないと、の、神々しいものを念頭に置いていましもはやクラシック音楽家ではあり続けたが、ポッペン先生からは、自然界にあるられないのかもしれません。“変わら曲線のような、自然なものを大切にしなないために変わる”というか、自分の理ければいけない。一方で、曲が書かれた想や、大好きなクラシック以外のこと時期の文化、宗教、ダンスや教会音楽をも理解して、ボーダーなく同じ音楽とし踏まえ、バッハが想像していた音を探すて共有していくことを大切にしたい」努力もしないといけない。それらを探し 各曲についても熱心に語ってくれて、詳細の掲載はできないが、BWV番求めながら自分の心に落とし込み、自由号順にト短調のソナタ第1番からホ長に音楽をする、ということを教わり、バッ調のパルティータ第3番まで、綿密かハ演奏の感覚が変わっていきました」 バッハ無伴奏6曲をまとめて弾くことはつ大きなストーリーのイメージがあり、「大きな挑戦ですが、3時間ずっとは緊バッハについて「ヴァイオリンを知り尽張し続けられず、場面によってはリラックくしていた人で、本当に難しいけど不スして曲に身をゆだねる楽しさもある」可能ではない音ばかりなのが憎たらしを謳った詩なのだ。名手ぞろいのノマドによる魅惑の世界に乞うご期待!いくらいです(笑)」と笑顔も浮かぶ。 「そのときにしか生まれない音楽があります。それを気楽に、というと語弊があるかもしれませんが、あまり固く考えず、ちょっとした時間を、バッハとそれを伝える媒体(演奏家)である私と一緒に過ごしていただければと思います」 不動の自分を貫くために、変化も厭わない。レコーディングから半年、“2024年秋の山根一仁のバッハ”をステージで刻み付ける。取材・文:林 昌英文:伊藤制子©Maki Takagi©T.TairadateCD『J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲』キングレコードKICC-1621/2(2枚組) ¥5500(税込)9/25(水)発売山根一仁J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲演奏会11/4(月・休)14:00 トッパンホール問 カジモト・イープラス050-3185-6728https://www.kajimotomusic.com10/5(土)14:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 キーノート0422-44-1165 https://www.ensemble-nomad.comアンサンブル・ノマド 第82回定期演奏会 ダイバーシティ・多様性 Vol.2 私もここにいるわ!中世と現代、6人の女性作曲家の作品を集めて口恭子への委嘱新作「溶解炉」 「私もここにいるわ!」。作家カーラまで、女性作曲家の「今」を知イルの才能ある妻ジェーンによるこの悲痛な言葉は、かつての女性の社会的るにはうってつけである。演奏会の最後に置かれたのは、地位、生き様を想起させる。アンサンブル・ノマドの第82回定期は、「多様性ヴィオラとピアノのための武満(ダイバーシティ)」を掲げた女性作曲徹「鳥が道に降りてきた」。な家特集。これまでひとひねりあるプロぜ?と思うかもしれないが、実グラムで魅せてきたノマドだけに、今はこの美しい作品の発想の源回の選曲も多彩だ。中世の女性作曲泉は、武満が愛してやまなかった女性家ヒルデガルト・フォン・ビンゲンから、詩人エミリー・ディキンソンの自然と愛ギタリストでもあるスペインのイネス・バダロ、気鋭の作曲家・小栗舞花、そしてドイツで個展を開催した実力派の山

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