eぶらあぼ 2024.10月号
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収録:2023年11月、サントリーホール ブルーローズ(小)(ライブ)コジマ録音(2枚組)ALM-9270,9271オクタヴィア・レコードOVCL-00840 ¥3850(税込)配信SACDCDCD130昨年11月にスタートした久元祐子によるベートーヴェン・ツィクルスのVol.1ライブ録音がリリースされた。第1・5・4・8番(収録順)を収めた2枚組だ。今回は初期のソナタ群だが、古典期の端正なソナタ像を提示する第1番と、ベートーヴェンらしい熱量を帯びたハ短調の第5番では、すでにまったく異なる世界観を持つことを、久元は愛奏するベーゼンドルファー280VCの懐深い響きによって、見事に描き分けている。第8番「悲愴」の均整の取れた緊張美にも引き込まれる。全集として出揃った時に、32曲のそれぞれの地平が見渡されることが期待され楽しみだ。   (飯田有抄)言葉が見つからないとはこのこと。昨年12月の紀尾井ホール、青木尚佳のイザイ無伴奏ソナタ全6曲リサイタル。“実演なのに完璧”では足りず、もはや音楽に留まらず“人類はこれほどまでに進化したのか”という次元の衝撃だった。テクニックの課題をはるかに超えて、一音残らず完璧な美音で弾き切りながら、各曲の魅力を克明な解像度で伝え、巨大な感動を引き出した名演に平伏するのみ。当盤はそのコンサート前日、同ホールでのセッション録音で、ライブの感銘はそのまま、余裕すらある。イザイの名盤に加わるのはもちろん、今後世界的奏者となっていく青木の代表盤となる。(林 昌英)日本を代表するバンドネオン奏者の新譜は、ピアソラ本人とも親交深かったネストル・マルコーニ(1942-)との“師弟”コラボ盤で、2023年夏に7年振りの来日を果たした巨匠と、三浦率いる17人編成の室内オーケストラが共演したステージのライブ録音。プログラムはピアソラの代表曲(特にマルコーニ版を踏襲しつつ、三浦が自らの解釈も組み込みダブル・ソリスト版として編曲したバンドネオン協奏曲「アコンカグア」は必聴!)とマルコーニ作品のベスト選。ライナーノーツには曲目解説に加えて、師の作品の魅力などについて語る三浦のインタビューもあるのでお読み逃しなく。(東端哲也)石井琢磨は東京藝術大学を経てウィーン国立音楽大学修士課程で学び、エネスク国際コンクールで日本人初の第2位という快挙を成し遂げたピアニスト。YouTubeでの活動に注目が集まっているが、演奏は極めて正統派。本盤は幅広い顔を持つ彼ならではの一枚となっている。管弦楽作品からの編曲や超絶技巧作品などを並べ、自らの技巧とセンスをアピール。注目は石井が初めて編曲を手がけた「花のワルツ」、そして彼の存在感を高めたリストの「ラ・カンパネラ」だ。磨き抜かれた技術はもちろん、音そのものに対する鋭敏な感覚と色彩感に改めて魅せられる。名手たちとの2台ピアノの演奏も必聴。(長井進之介)久元祐子 ベートーヴェン・ツィクルス Vol.1ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第1番、同第5番、同第4番、同第8番「悲愴」久元祐子(ピアノ)イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ(全曲)/青木尚佳バンドネオン・レジェンド/三浦一馬&東京グランド・ソロイスツイザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番〜第6番青木尚佳(ヴァイオリン)ピアソラ:フーガと神秘、悪魔のロマンス、天使の死、ビオレンタンゴ、バンドネオン協奏曲「アコンカグア」(ダブル・ソリスト版)、来たるべきもの/マルコーニ:時が満ちて、アトリエ 他三浦一馬 ネストル・マルコーニ(以上バンドネオン)東京グランド・ソロイスツ収録:2023年8月、第一生命ホール(ライブ)日本コロムビアCOCQ-85617 ¥3300(税込)チャイコフスキー(石井琢磨編):バレエ組曲「くるみ割り人形」より〈花のワルツ〉/坂本龍一:インテルメッツォ/リスト:ラ・カンパネラ/ピアソラ:リベルタンゴ with 菊池亮太/ラヴェル:ラ・ヴァルス with 髙木竜馬 他石井琢磨 菊池亮太 髙木竜馬(以上ピアノ)イープラスミュージックem-0041(初回生産限定盤) ¥4500(税込)em-0042(通常盤) ¥3000(税込)Diversity/石井琢磨

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