eぶらあぼ 2024.10月号
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CDCDCDCD128アメリカン・ロード・トリップ/アウグスティン・ハーデリヒ&オライオン・ワイスピアノ愛奏小品集/深沢亮子フェリシダージ/小暮浩史ジョン・ブル:ヴァージナル作品集/マチェイ・スクシェチュコフスキドイツ人の両親のもとイタリアに生まれながら19歳で渡米し、2014年に同国の国籍を取得したハーデリヒが、室内楽に長けたアメリカの名ピアニストと共に、19世紀終盤〜21世紀のアメリカのヴァイオリン音楽を収録したアルバム。有名作曲家と一般に知られていない作曲家の作品を並列した多彩な選曲と周到な構成、そして高度にして自在のテクニックで、ヴァイオリン音楽の新たな世界へと誘ってくれる。中でも、日本の伝説等に基づくハートキの「根付」は様々な技法が駆使された興味深い作品だし、アンコール的な短い楽曲の数々も実に愉しい。   (柴田克彦)デビュー70年を超えるレジェンド深沢亮子の、今年5月のリサイタル後のセッション録音。モーツァルトは溌溂として若々しい。若い息吹が感じられる。内面の歌も軽やかなロンドも、とてもきれい。シューベルト「楽興の時」は、不思議な問いかけ、夢想の歌、とり憑かれた楽想、切迫した運動、ためらいがちなしぐさなど、様々な要素が楽しめる。助川敏弥「夜の詩」は深沢が初演した曲で、静かな抑えた情感が、きれいな音色の中で明滅する。バルトークは民謡素材を躍動感たっぷりに堪能させてくれる。ブラームスは豊かに絡み合った声部の交錯から、実に味わい深い音楽が滲み出てくる。心が豊かになるアルバムだ。(横原千史)タイトルとなったジョビンの「フェリシダージ」、編曲の始まり方が意表を突いているのだが、おなじみのメロディへと接続していくときのリズム感やムードの転換がクールだ。楽器を開放的に鳴らし抒情や郷愁をしっかりと捉えているだけではなく、このクールさ、センスがあちらこちらで顔を出し、胸にじわじわと染みてくる。ちぐはぐにもなりかねない多彩な選曲を小暮の個性がまとめているのだ。「コユンババ」(ドメニコーニ)終楽章の打楽器のように空気を震わせるリズム、「神楽歌」の〈舞(Danza)〉(大坪純平)の技のキレなど、テクニカルにも秀でており、ギターの醍醐味を味わえる一枚。(江藤光紀)ジョン・ブル。16世紀から17世紀にかけて英国で活躍した鍵盤音楽の大家で、ユニークな人物だ。学識は豊かだが、性格は激しいトラブルメーカー。その二面性は音楽にも反映されており、高度な対位法を駆使したファンタジアの一方で「私自身」のような自画像作品はどこか放埓、「ブル博士の『おやすみ』」のように楽しげだが死の不穏さを感じさせる曲も書く。当盤でのマチェイ・スクシェチュコフスキの演奏は全編でヴァージナルを用いているのが特徴だ。この時代の英国の雰囲気を伝える、輝きの背後に渋みと陰影が漂う鍵盤楽器が、奇想の音楽家の心の襞まで分け入ってゆくかのよう。(矢澤孝樹)ナミ・レコードWWCC-8015 ¥3300(税込)マイスター・ミュージックMM-4533 ¥3520(税込)エイミー・ビーチ:ロマンス/アイヴズ:ヴァイオリン・ソナタ第4番「キャンプの集いの子供の日」/スティーヴン・ハートキ:根付/エディ・サウス:ブラック・ジプシー/ジョン・アダムズ:ロード・ムーヴィーズ/コープランド:ホー・ダウン 他アウグスティン・ハーデリヒ(ヴァイオリン)オライオン・ワイス(ピアノ)ワーナーミュージック・ジャパン2173.228790 ¥オープン価格モーツァルト:ピアノ・ソナタ K.330/シューベルト:楽興の時/助川敏弥:夜の詩、夢逢い、Prelude 春/バルトーク:ルーマニア民俗舞曲/ブラームス:「幻想曲」より第2番、第5番、第6番、第7番深沢亮子(ピアノ)ジョビン(R.ディアンス編):フェリシダージ/リョベート:「カタルーニャ民謡曲集」より/バリオス:大聖堂、フリア・フロリダ/ドメニコーニ:コユンババ/ヨーク:ムーンタン/大坪純平:ギターのための“神楽歌”、タップ・スラップ/閑喜弦介:スプレッド・アウェイ 他小暮浩史(ギター)ジョン・ブル:キャロル「御子がわれらに生まれたもう」、ラムリー卿のパヴァン、ラムリー卿のガリアード、ブランズウィック公のアルマン、ブランズウィック公夫人のトイ、私自身、ファンタジア第1番、同第15番、イン・ノミネ第5番、同第9番、ブル博士の「おやすみ」 他マチェイ・スクシェチュコフスキ(ヴァージナル)Ricercar/ナクソス・ジャパンNYCX-10488 ¥3300(税込)

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