eぶらあぼ 2024.10月号
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SACDCDSACDCD126コスタンツィ チェロ・ソナタ集/懸田貴嗣&渡邊孝モーツァルト&ハイドン:協奏交響曲/アンサンブル of トウキョウブルックナー&ミヨー/ミュージックダイアログ・アンサンブル日本屈指のピアニスト・河村尚子が、デビュー20周年を記念してリリースした小品集。彼女が大きな影響を受け、折に触れて愛奏してきた作品が22曲収録された、正真正銘“珠玉”のアルバムだ。バッハから坂本龍一まで多様な地域や時代の楽曲が絶妙な配列で登場。どの曲も丁寧なタッチで磨き抜かれた表現がなされ、小品といえども大曲に負けない手応えを感じさせる。中でも、「エリーゼのために」や矢代秋雄の「夢の舟」に代表される慈しむような優しさには感嘆の念を禁じ得ない。ピアノ音楽と河村の魅力が凝縮された、ぜひとも皆に聴いてほしいディスクだ。  (柴田克彦)初期チェロ音楽は未開拓の沃野だ。ジョヴァンニ・バッティスタ・コスタンツィ。18世紀中葉のローマで活躍した音楽家が、自身の楽器であるチェロのために書いたソナタ等を、懸田貴嗣が渡邊孝と共に録音してくれた。約12年前のランゼッティ録音以来、十分な研究と準備を経ての快挙だ。ボッケリーニの師でもあったコスタンツィ。広い音域を駆け回り、ユーモアもあるソナタたちは、チェロが「自らの歌」を歌い始めた清新の気に満ちる。懸田のバロック・チェロは歯切れよく、フレーズの彫りは深く、小気味よい。渡邊も当意即妙の合いの手で、ソロでガスパリーニのトッカータが聴けるのも嬉しい。(矢澤孝樹)18世紀後半のパリでとりわけ人気のあった協奏交響曲。同ジャンルの作品をモーツァルトは「マンハイム・パリ旅行」後に作曲し、ハイドンは交響曲の上演のために訪れたロンドンで作曲した。特にモーツァルトの作品は名作の誉高く、人気も高い。マンハイム楽派の先進的な音楽語法と当時のパリの趣味を反映したメランコリックな音楽を玉井菜採と大野かおるは深々と歌い上げ、ヴァイオリンとヴィオラの対話は高い次元で実現されている。オーボエの青山聖樹が登場するモーツァルトのコンサートアリアやディヴェルティメントを含め、華やかで社交的な音楽と共に名手たちの競演を存分に味わえる。(大津 聡)「室内楽を通して真の音楽創りを学ぶ」活動を継続するMusic Dialogue設立10周年で初のセッション録音が実現。その理念にふさわしい達人がそろい、生誕200年ブルックナーと没後50年ミヨー、9月4日生の二人の佳品に取り組んだ。ブルックナーはあらゆる瞬間が情感にあふれ、伸びやかで、精妙で、ひたすら美しい。全員が同質の音色・奏法で溶け合い、かつ矛盾せずに各自の個性も際立つ、理想的な室内楽でのみ起きる名演で、「何とすばらしい音楽なのか」と作品の世界に浸れる。これこそ彼らの理念の証しとなろう。ミヨーも同様に丁寧で洒落たセンスも光る。 (林 昌英)R.シューマン(C.シューマン編):歌曲集「ミルテの花」より〈献呈〉/ベートーヴェン:エリーゼのために/矢代秋雄(岡田博美編):夢の舟/バッハ(E.ペトリ編):カンタータ第208番「楽しき狩こそわが悦び」より〈羊は安らかに草を食み〉/坂本龍一:20220302 サラバンド 他河村尚子(ピアノ)コスタンツィ:チェロ・ソナタ 変ロ長調、同ハ短調、同ヘ長調、同ト長調、チェロのためのシンフォニア/ガスパリーニ:スピネッタのためのトッカータ「イザベッラ婦人のために」 他懸田貴嗣(チェロ)渡邊孝(チェンバロ)モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲、コンサートアリア〈ああ やさしい星よ もし天に〉、ディヴェルティメント第11番より第3楽章/ハイドン:協奏交響曲アンサンブル of トウキョウ青山聖樹(オーボエ) ダーク・イェンセン(ファゴット) 玉井菜採(ヴァイオリン) 大野かおる(ヴィオラ) 河野文昭(チェロ)収録:2022年5月、東京文化会館(小) 他(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00851 ¥3850(税込)ブルックナー:弦楽五重奏曲/ミヨー:バレエ音楽「世界の創造」(ピアノ五重奏版)ミュージックダイアログ・アンサンブル【石上真由子 水谷晃(以上ヴァイオリン) 大山平一郎 村上淳一郎(以上ヴィオラ) 金子鈴太郎(チェロ) 吉見友貴(ピアノ)】ソニーミュージックSICC 19080 ¥3630(税込)コジマ録音ALCD-1225 ¥3300(税込)キングレコードKICC-1619 ¥3300(税込)20-Twenty-/河村尚子

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