eぶらあぼ 2024.09月号
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紫■■■園 香(フルート)フランスの黄金時代から現代まで、フルートのマスターピースを集めて取材・文:伊藤制子 2022年にデビュー40周年を迎えたフルートの紫園香。名手の藤井一興(ピアノ)とともに、バッハから近代までさまざまなレパートリーを披露してきた紫園の9月14日のリサイタルは、「西の風 東の精神(こころ)」と題し、フランス近代からアメリカ、そして藤井への委嘱新作まで、意欲的な内容だ。 「藤井さんとは、私のデビューリサイタル以来のお付き合いです。リハーサルでは、リズムはもとより響きや音の緊張感、フレーズで合わせていく感じなので、とても刺激的です。藤井さんへの委嘱新作は3作目になります。今回の『今賜るアッシジの聖フランチェスコの教え』はより瞑想的な雰囲気の作品で、フルートの旋律がフランチェスコの教えを語っている部分もあります」 ドビュッシーからニーノ・ロータまでプログラムは多岐にわたる。 「ドビュッシーの『ビリティス』、そしてゴーベールの『古代のメダル』はともにアルカイックな魅力のある作品で、後者は同期で尊敬するヴァイオリン奏者・沼田園子さんも加わったトリオの編成です。ムチンスキーのフルートとピアノのためのソナタ(1961)は全体にメタリックな印象で、2つの楽器の対話がエネルギッシュに展開していくのが特徴。映画音楽で有名なロータの『トリオ』(1958)は書法も優れていて、華やか10/4(金)19:00 サントリーホール ブルーローズ(小)問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp70に躍動するリズムの面白さを聴いていただきたいですね」 紫園のフルートの恩師で作曲家でもある川崎優の『涙』も演奏される。 「川崎先生には、音楽家としてどうあるべきかを教えていただきました。先生は被爆者でいらっしゃるのですが、この『涙』は私がかつて委嘱した作品で、先生のご体験が投影されているかもしれません。ド♯の音を何度もニュアンスを変化させながら吹く、能の世界を思わせる作品です」 演奏活動に加え、能登など被災地でのボランティア活動、そして日本クリスチャン音楽大学・同大学院教授として教育活動にも従事している。 「38年前に信仰に目覚めクリスチャンになりました。現在までにチャペルコンサートも世界2500ヵ所で行っています。またケニアの学校でスラムの子どもたちにフルートを教える活動にも長年たずさわっています。通常の演奏活動だけではなく、コンサート会場紫園 香 フルートリサイタル 〜西の風 東の精神(こころ)〜9/14(土)14:00 王子ホール問 ミリオンコンサート協会03-3501-5638 http://millionconcert.co.jpに来ることのできない方々にも音楽を届けたいと考えています」 ムラマツ・フルート・レッスンセンターで講師も務め、同社の24K-SRのフルートを愛用。「重たいのですが、とても柔らかい響きがします」。銀座の王子ホールでのリサイタルでは愛器(Pneuma号)を手に、深みのある演奏を聴かせてくれることだろう。魚谷絵奈 ©A.Muto文:長井進之介©Mikako Ishiguroアン・ジョンドInterview魚谷絵奈 & アン・ジョンド ピアノ・デュオ・リサイタル民謡をテーマに、二つのアイデンティティが交差する「唱歌の四季」をはじめ、日本と韓国 東京藝術大学とザルツブルク・モーの民謡をテーマとしてそれぞれの国のツァルテウム音楽院で研鑽を積んだピアニストの魚谷絵奈。第13回ブラーム作曲家に委嘱した世界初演作品、そしス国際コンクール第3位に入賞し、日本てメシアンの傑作であり難曲「アーメやドイツに加え、台湾、韓国とアジアでンの幻影」。共通性とまったく違う文も演奏活動を展開している。そんな彼化的背景をもつ二つの国のピアニスト女がモーツァルテウムで共に学んだアたちが卓越した技術と研ぎ澄まされたン・ジョンドとの2回目となるデュオ・リサ音色で奏でるプログラムは、ノスタルイタルを開催。ジョンドは2012年、ロジーと大きな感動を呼び起こしてくれン=ティボー国際ピアノコンクール最ることであろう。高位に入賞した韓国人ピアニストだ。 二人が今回演奏するのは、日本人にとってなじみ深い旋律が並ぶ三善晃の

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