eぶらあぼ 2024.09月号
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第1006回 サントリー定期シリーズ 10/17(木)19:00 サントリーホール 第165回 東京オペラシティ定期シリーズ10/18(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール第1007回 オーチャード定期演奏会10/20(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 https://www.tpo.or.jp10/16(水)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.com62ン協奏曲「ハーレムの千一夜」は、異才コパチンスカヤのために書かれた、エキゾティックかつモダンな作品。難技巧の独奏ヴァイオリンがシェエラザード役を演じながら、「アラビアンナイト」の世界が表現される。ここは、服部の冴えた技巧、そして作曲者サイのピアノと共演した経験が存分に生かされる。後半はコダーイの代表作「ガランタ舞曲」と「ハンガリー民謡『孔雀は飛んだ』による変奏曲」。ハンガリー情趣溢れる両曲では、出口が前回のハチャトゥリアンで魅せた土の香りと躍動感の再出が耳を弾ませる。なお、音楽でシューベルトの歌曲をはさむプログラムは、パドモアが提案したもの。大萩によれば、パドモアがここまでギターを熟知していることに驚かされたという選曲で、ギタリストにとってもかなり歯ごたえのある作品が並んでいるそう。 大萩自身、この公演を「今年のハイマーク・パドモア ©Marco Borggreve「ヴァレンシア~」と「孔雀~」は吹奏楽で大人気の作品。同分野のファンも原曲を生体験する貴重な機会となる。 これは終始胸が躍るオーケストラ公演だ。ライト」と位置付けて心待ちにしている。音楽シーズンたけなわの秋、演奏家にとっては大きな稼ぎ時のはずだが、パドモアとの共演に全集中すべく、10月には他にコンサートを入れていないのだとか。なんと素敵な意気込み! これは聴き逃せまい。服部百音 ©YUJI HORI出口大地 ©上野隆文大萩康司 ©SHIMON SEKIYA文:柴田克彦文:宮本 明出口大地(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団稀有の俊才たちが民族的な音楽に生気を吹き込む 東京フィルの10月定期は、出口大地の定期再登場に注目が集まる。2021年のハチャトゥリアン国際コンクール指揮部門で日本人初優勝を果たした出口は、22年7月に東京フィル定期のオール・ハチャトゥリアン・プロで日本デビュー。明解かつ生気に満ちた音楽を生み出し、大成功を収めた。以後読響や京響など日本各地の楽団へデビューし、海外でも実績をあげている。もう1つ、ヴァイオリンの服部百音のソロも大注目。数々の賞に輝く彼女は、N響などの著名楽団と共演を重ね、破格のテクニックと迫真的な表現で圧倒的なインパクトを与えている。 プログラムには東欧~西アジアの民族的な作品が並ぶ。1曲目、ハチャトゥリアンの「ヴァレンシアの寡婦」は、作曲者特有のアルメニア風味にスペインの香りを加えたメロディアスな音楽。まずはゆかりの深い作曲家における出口の真骨頂が発揮される。続くトルコの鬼才ファジル・サイのヴァイオリマーク・パドモア(テノール) & 大萩康司(ギター)奇跡の共演! 繊細な響きが交差する至福の時 抑制の効いた繊細な響きは英国テナー独特の伝統。マーク・パドモアの歌にはその典型ともいえる魅力がある。美しい声を派手にひけらかすのではなく、透明な歌と言葉で聴き手の心に直接語りかける。その美質が最もフィットするのが「語る音楽」。得意とするバッハの福音史家や、言葉と音楽が一体となる歌曲の世界だ。 そのパドモアの歌曲の多彩な陰影を、奏者の息づかいを間近で共有できる室内楽ホールで、繊細なギターとのデュオで味わえるとは幸せ。しかもそのギターが大萩康司だ。こんな顔合わせを聴けるとは思ってもみなかった。大萩の経歴と実力からすれば「抜擢」などという言い方はまったくふさわしくないけれど、意外性は十分。「奇跡の初共演」と言っても許されるだろう。じつに楽しみ。 ダウランドのリュート歌曲からブリテン、アレック・ロス(1948~)に至る英国

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