eぶらあぼ 2024.09月号
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9/4(水)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677https://www.proarte.jp56Interview田崎瑞博(チェロ/古典四重奏団)“ショスタコーヴィチの時代”と繋がりを持つ最後の世代の奏者として取材・文:林 昌英 古典四重奏団の「ムズカシイはおもしろい!!」は、毎年開催されるレクチャー付きの恒例シリーズ。昨年からはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲15曲に3年がかりで取り組んでいる。いまこの作曲家の作品を演奏する意義を、チェロ奏者の田崎瑞博が語った。 昨年の第1番~第5番(公演「その1・2」)に続き、今年は第6番~第11番(「その3・4」)。この作曲家の中期から後期に差し掛かる6曲について、田崎は「抒情的で柔らかいものを感じさせる曲が多い。それはむしろショスタコーヴィチの重要な部分だと思います。厳しさや苦しさが強調されがちな作曲家ですが、ベートーヴェンと同じで非常に多様性のある人です」と考える。 公演「その3」は「柔らかく優しい」6番、「凝縮感があり、終わりは寂しく儚い」7番、「彼の四重奏曲としては例外的に物語性が強い」8番。「その4」は演奏順に、「重量感としては軽めで、中間的な色合い」の10番、「晩年5作の1曲目で、短いけれどますます凝縮されている」11番、「構成がシンフォニック。この作曲家のいいところが全部乗っかり、沈んだ感じがない。8番と対照的かつ双璧」という9番。 古典四重奏団はどんな曲であっても、背景やメッセージ等を音楽に当てはめようとはしない。特に当時の社会情勢や人生経験と絡められがちなショスタコーヴィチには、より注意深く接し、「音楽そのものに入り込む」感覚を重視している。 「ショスタコーヴィチは、不協和音も変拍子も、自分の欲求の中に整合性が取れる範囲で、それがマッチする感じさえあれば使うし、汚いと思えば使わない。彼がそう判断した思考をたどって、体に入れる感覚です。音名象徴とか背景はもちろん認識しますし、“この音は○○を表している”と決めつける方がある意味簡単ですが、彼の真の思いと同一には絶対になりません。音から彼の思考をたどるのは大変ですが、そこに意味や魅力があるはずです」 ショスタコーヴィチほどの天才でも、弦楽四重奏曲を書くのはかなり消耗したのではと推測する田崎。その渾身の作品群の演奏については、ある種の重い義務感を意識しているという。 「ショスタコーヴィチはできるだけ演奏しないといけないと考えています。古典四重奏団 ムズカシイはおもしろい!! ショスタコーヴィチの時代 2024その3の夜 9/24(火)19:00  その3の昼 9/27(金)14:00その4の夜 10/25(金)19:00 その4の昼 10/30(水)14:00ルーテル市ヶ谷ホール問 ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977 https://www.bflat-mp.com左より:花崎淳生、田崎瑞博、川原千真、三輪真樹 ©藤本史昭私たちは彼の時代に少し被っているからです。ソヴィエト連邦がまだ存在し、様々な事件が起こった時代を生きたということは、国は違っても何らかの当事者であるわけで、その連鎖を引き継ぐ最後の世代なんです。当時の社会でわずかでも繋がっていた人間の一人であることは、どこかに自ずと音として出るものと信じています」©Shouhei Yokoyama文:長井進之介白石光隆 ピアノリサイタル Vol.37研ぎ澄まされたピアニズムで識るアメリカ音楽の魅力 後半は近年白石が意欲的に取り組 ソロにアンサンブルにと幅広く活躍んでいるアメリカの音楽。魅力的な旋を続けるピアニストの白石光隆が、37回目のリサイタルを開催。リズミカル律にリズムがあふれるバーバーの「遠でエネルギーに満ちた演奏で多くの足」にはじまり、アメリカの音楽史にお人々を魅了する彼のピアニズムを存分いて重要な存在であるゴットシャルク、に味わえる内容だ。前半はバルトーク「ジャズ側からのクラシックへのアプの「ミクロコスモス」から、華麗な〈ブルローチではどんな作品が生まれたか」ガリアのリズムによる6つの舞曲〉にリという観点から、ジャズ・ピアニストでミストのドラマティックなバラード第2番ヨーに作曲を師事したブルーベックのが並ぶ。「彼らの緻密な書法を目の前作品も並ぶ。白石の華麗なピアニズにすると、意識せざるを得ない」というムを堪能できるのはもちろん、アメリことでバッハ=リストの前奏曲とフーガ カ音楽の粋にも触れる貴重な機会となイ短調も選ばれている。りそうだ。

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