eぶらあぼ 2024.09月号
38/149

Information小山実稚恵 サントリーホール・シリーズ Concerto <以心伝心> 202410/5(土)16:00 サントリーホール出演/小山実稚恵(ピアノ)、広上淳一(指揮)、NHK交響楽団曲目/モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K.595   ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 op.15■ サントリーホールチケットセンター0570-55-0017suntory.jp/HALL/35てもかっちりしています。指揮の技術も素晴らしいですが、広上さんはそれを絶対にひけらかしません。一緒に演奏していて、いつも“今日はどこまで連れて行ってくださるのかな”という気持ちになります。最近は前よりも“歌われます”。沢山の気づきをくださるマエストロです」広上「照れるな。実稚恵さんのことを最初に知ったのは1985年、ショパン・コンクールの番組を観たときです。前の年に(オランダ、アムステルダムのコンセルトヘボウで開催された)コンドラシン・コンクールに優勝し、アムステルダムの屋根裏部屋に住んでヨーロッパでの仕事が始まった頃でした。同じ世代に、なんて素敵なピアニストがいるのだろう、と勝手に嬉しくなったものです」 二人のモーツァルトとブラームスへの想いは尽きない。小山「K.595って、ラルゲットの第2楽章もDur(ドゥア、長調、ここでは変ホ長調)なのです。モーツァルトは本当に哀しいとき、Durになるのかも知れません。付点や三連符のリズム、和音、オーケストラの編成──それぞれシンプルなのに品格があって、しかも心にすっと語りかけてくる音楽です。第3楽章のカデンツァのあと、オーケストラが、さざ波のように入ってきますが、あの場面、言葉になりません。ブラームスも最初から素敵。深く決然としたティンパニの出だし、ドラマもある弦の音。弾く前から心がかきむしられます。第3楽章のフガートもいいですよね」広上「実稚恵さんって、こういうふうにオーケストラのことを沢山話してくださるピアニストなのです。いいでしょう! オーケストラに溶け込む才能、寄り添う能力が天才的にある方なのです」小山「モーツァルトもブラームスも、オーケストラ(のパート)に、私たちを包み込むような音楽を書いていますよね。ピアノ以上に(笑)。それで自分が弾かないところも益々好きになるのです」広上「ブラームスの1番には忘れられない思い出があります。僕の日本デビュー曲なのです。1985年、アシュケナージ先生とのコンチェルト、N響でした。ピアノの弦が切れたことも覚えています。昨年の夏、実稚恵さん、N響と共演したときもブラームスの1番でした。リハーサルの間に恩師・外山雄三先生の訃報を聞きました。いろいろな縁を感じざるを得ません」 小山実稚恵と広上淳一はインタビューを次の言葉で締めくくった。「ブラームスの第2楽章アダージョをきちんと創りたいね」 10月5日土曜午後4時、サントリーホール。慈愛に満ちたニ長調の調べも客席の喜びとなる。

元のページ  ../index.html#38

このブックを見る