eぶらあぼ 2024.09月号
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25取材・文:山田治生 この10月、「Music Fusion in Kyoto 音楽祭」が初めて開催される。京都府が主催し、今年は府下5つの市町(舞鶴市、宮津市、城陽市、長岡京市、京丹波町)で室内楽コンサートがひらかれる。その音楽監督には、ヴァイオリニストで京都市立芸術大学教授でもある豊嶋泰嗣が就任した。 「京都府内のすべての市町村に音楽を届けたいという西脇隆俊知事の思いを受け、私が音楽監督を仰せつかりました。京都といえば、京都市中心のイメージがもたれていますが、海もある、山や森もある、知られていない京都を世界にアピールする、広域の音楽祭となります。京都市内にはすでに十分に音楽を楽しめる機会があるので、今回は、それ以外の地域でコンサートをひらきます。 “Music Fusion”という名称を掲げたように、クラシックに限らず、音楽を広めることを意図して、敷居を高くしないで、気軽に来ていただける音楽祭を目指しています。2025年には大阪・関西万博があり、それに合わせて、京都府も関西を盛り上げていくということで、今回は、来年へ向けてのプレ事業という意味もあります。 私自身、京都府民ホール・アルティで20年以上、アルティ弦楽四重奏団として活動を行っていますし、京都市立芸術大学でも10年以上教え、京都市交響楽団でも特別名誉友情コンサートマスターを務め、京都と関わってきました。 今回のコンサートは、僕が声をかけた京都や関西にゆかりのある演奏家が中心となっています。ピアノの田村響さんは京都市立芸大の准教授で、チェロの上村昇さんは京都の音楽界の重鎮。クラリネットの中ヒデヒトさんは京丹波町の出身。そしてプロオーケストラのコンサートマスターや首席奏者で構成される関西弦楽四重奏団。ポップスでは京都出身のパーカッションの斉藤ノヴさんにも参加していただきます。海外からはクラリネットのポール・メイエさん、昨年の大阪国際室内楽コンクールの優勝団体であるクァルテット・インダコに来ていただきます」 天橋立で有名な宮津では、社寺等の文化財や歴史的建築物など4ヵ所で公演が行われ、街歩きと共に音楽が楽しめる「プロムナード・コンサート」となっている。田村響のピアノ・リサイタル、林七奈(ヴァイオリン)、豊嶋泰嗣(ヴィオラ)、上森祥平(チェロ)による弦楽三重奏曲、メイエとクァルテット・インダコによるモーツァルトのクラリネット五重奏曲、そして、上村によるバッハの無伴奏チェロ組曲という充実のプログラム。舞鶴では、この音楽祭に参加する音楽家たちが集結し、スペシャル・ガラ・コンサートがひらかれ、クラシックからジャズまでが演奏される。京丹波は自然の豊かな町。メイエとクァルテット・インダコに加えて、地元出身の中ヒデヒトも参加する。城陽では、豊嶋、上村、田村によるトリオがメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番を演奏。そして、長岡京では、「ベートーヴェン・マラソン」と題して、清水和音、豊嶋、上村、関西弦楽四重奏団、クァルテット・インダコが、それぞれベートーヴェンのピアノ・ソナタ、ヴァイオリン・ソナタ、チェロ・ソナタ、ピアノ三重奏曲、弦楽四重奏曲を奏でる6時間に及ぶコンサートが開催される。 「この音楽祭は音楽の魅力+場所の魅力ということで、みなさんが海の京都、森の京都に足を延ばすきっかけ、その魅力を知るきっかけになればと考えています」 そのほかにも、京都府内の小中学校などを訪問する教育プログラムも用意されている。 「府内の小中学校などに声を掛け、手を挙げていただいた学校をまわることにしました。音楽祭では、コンサートをするだけでなく、もっと若い世代に種を蒔いて未来につなげていきたいと思っています」 豊嶋自身もピアニストとのデュオで、複数の学校を訪れ、クァルテット・インダコや関西弦楽四重奏団も巡演する。 「僕らの教育プログラムでは、自信をもって本当に良いものをお届けします」海の京都、森の京都、知られていないKYOTOを世界にアピールしたい

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