eぶらあぼ 2024.09月号
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CDCDCDCD128日本の音楽界を代表する2人の巨匠による、貫録たっぷりのドヴォルザーク。冒頭楽章、管弦楽のみの第2主題提示では、ホルンをたっぷりと歌わせ、英雄的な雰囲気をぐんと引き出す。その同じ主題を朗々と歌わせる堤。第2楽章では、ニュアンスに満ちたオーケストラのなか、独奏チェロはテンポを変化させながら、独特の渋味のある音色でじっくりと歌を紡いでいく。終楽章の鮮烈なロンド主題を弾いても、そのチェロは歌心を忘れない。なんという味わい深さ。チェリストのマイペースな運びに、小林と日本フィルもしっかりと膝を突き合わせ、響きを丹念に交わし合う様子がじつに麗しい。(鈴木淳史)ピアニスト・友田恭子は、透明感のある音色と軽やかなタッチ、歌心にあふれた演奏でモーツァルトの独奏ソナタ全曲の録音を終えた。彼女が次に取り組んだのは連弾および2台ピアノのためのソナタである。実姉である笠原純子と共に奏でることで、友田の音色はさらに輝きと色彩の豊かさを増しているように思える。モーツァルトの連弾曲はシンプルであるがゆえに、少しでもほころびが見えると台無しになってしまう。しかし二人は息の合ったアンサンブルと溶け合う音色によって見事に弾きこなし、演奏を通して様々な物語や情景を見せてくれている。   (長井進之介)ニケによるフォーレのレクイエムの再録音がリリースされた。今回は自らが結成した手兵ル・コンセール・スピリチュエルとの共演である。グノーのミサ曲が併録されているが、さらに今日一般にはほとんど知られていない、同じくフランスの作曲家のオベールやカプレの宗教的小品が含まれているのは、いかにもニケと同楽団の活動らしい。まず注目されるのは、やはり傑作の誉れ高いレクイエムであろう。初演時の響きを重視した、いわゆる1893年版(ラター版)に従った最小の楽器編成での演奏は、虚飾を排し、常に声楽パートに寄り添いながら、作品の天上的な美しさを最大限に引き出している。(大津 聡)人気ヴァイオリニストで、指揮者としても上昇顕著な三浦が、著名楽団の首席級を主体とする豪華オーケストラを振った、2023年「サントリーホール ARKクラシックス」のライブ録音。三浦が望んだという“伝統に基づくブラームス”に、“今生まれる音楽”の生気が加わった演奏は、聴き応え十分。全体を通して、構築性と流動性や細やかさを兼ね備えた三浦の指揮に、高い技量と熱量を持つ名手たちが応えた、立派な演奏が展開されている。第2番第1楽章の良き流れと抑揚、第4番第2楽章のしみじみした味わいや第4楽章の堂々たる進行等々、聴きどころも多い。  (柴田克彦)ドヴォルザーク:チェロ協奏曲堤剛(チェロ)小林研一郎(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団モーツァルト:ピアノ・ソナタ K.19d,K.381(123a),K.521、アンダンテと変奏曲(以上連弾)、ピアノ・ソナタ K.545(グリーグ編、2台ピアノ)友田恭子 笠原純子(以上ピアノ)Alpha/ナクソス・ジャパンNYCX-10483 ¥3520(税込)ブラームス:交響曲第2番、同第4番三浦文彰(指揮)ARK PHILHARMONIC収録:2016年3月、サントリーホール(ライブ)マイスター・ミュージックMM-4532 ¥3520(税込)コジマ録音ALCD-9268 ¥2970(税込)収録:2023年9月&10月、サントリーホール(ライブ)エイベックス クラシックスAVCL-84160〜1(2枚組) ¥3300(税込)ドヴォルザーク:チェロ協奏曲/堤剛&小林研一郎&日本フィルモーツァルト:ピアノ・ソナタ集 Vol.7 四手作品/友田恭子&笠原純子フォーレ:レクイエム グノー:クロヴィスのミサ 他/エルヴェ・ニケ&ル・コンセール・スピリチュエルフォーレ:レクイエム/グノー:クロヴィスのミサ/オベール:ああ 救いのいけにえ/カプレ:ヴァイオリンとピアノのためのアダージョエルヴェ・ニケ(指揮)ル・コンセール・スピリチュエルエメーケ・バラート(ソプラノ) フィリップ・エステフ(バリトン) 他ブラームス:交響曲第2番、第4番/三浦文彰&ARK PHILHARMONIC

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