eぶらあぼ 2024.09月号
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CDCDCDSACD1242021年のエリザベート王妃国際コンクールの優勝者ジョナタン・フルネルの、Alphaレーベルからのアルバム第3弾。ショパンとシマノフスキという二人のポーランド人の作品を並べた。ショパンのソナタ第3番を、シマノフスキの初期作品にあたる2つの変奏曲(op.3とop.10)で挟むように配置。フルネル特有の深い影を宿した低音の和音と、燦然たる輝きを放つ高音パッセージで彩るショパンの終楽章は圧巻だ。シマノフスキのop.10は繊細で集中度の高い演奏。第8変奏「葬送行進曲」の闇は深い。技巧的な要素を前面に押し出さず、若き作曲家の濃密な詩情を伝える。(飯田有抄)延原武春の見事なメンデルスゾーン。協奏曲で小栗まち絵のヴァイオリンが爽やかで美しい。イントネーションも清潔だ。ふくよかで甘い旋律の歌と、きっぱりとした切れ味のよいリズムの楽想とのバランスが良い。技巧的なパッセージも丁寧に仕上げられ、情熱的な高揚でのオケとの息もぴったり。「スコットランド」では日本センチュリー響の弦と管の美しさが際立っている。メンデルスゾーンの複雑に入り組んだテクスチュアを、延原は整然と振り分け、聴き応えがある響きを生み出している。フィナーレでも生き生きと躍動するリズムと豊かなメロディがロマンティックな情感を焙り出して、実に魅力的だ。(横原千史)日本のオペラ界を担う3人の歌手によるユニットのアルバム第2弾は歌謡ポップスの名曲集。それぞれの声の個性を活かしながら歌い継ぐスタイルが基本だが、アンサンブルの美しさを際立たせるアレンジの妙に聴き惚れた。特に宮沢賢治の「星めぐりの歌」や谷村新司の「昴」、松田聖子が創唱した「瑠璃色の地球」といった壮大な宇宙の広がりを想わせる曲のファンタジックなスケールが素晴らしい。夜の浜辺で“若大将”がギター片手に歌うイメージの「君といつまでも」(台詞入り)もナポリ民謡のようで素敵だ。締めの「上を向いて歩こう」の合唱からは昭和の若者の息吹を感じた。(東端哲也)今年30歳の太田弦が九響首席指揮者に就任。その記念公演となった4月のショスタコーヴィチのライブ録音が早くもリリース。その期待の大きさも納得の快演だ。交響曲でテンポを揺らさず歩みを続ける胆力、ワイルドな奏法が慣例の場面も丁寧に奏でる判断などに、誠実にスコアと向き合う太田の方向性が示される。虚心に美音で構築することで、ソロは冴え冴えと響き、弱音は精妙に鳴り、そしてクライマックスは楽員の気迫が収斂して突き抜けた音響となる。祝典序曲の推進力と開放感も華やか。交響曲結尾の大見得など、太田の表現はまだ底が知れない。新コンビに期待が募る。(林 昌英)シマノフスキ:変奏曲 op.3、ポーランド民謡の主題による変奏曲 op.10/ショパン:ピアノ・ソナタ第3番ジョナタン・フルネル(ピアノ)Alpha/ナクソス・ジャパンNYCX-10484 ¥3300(税込)宮沢賢治:星めぐりの歌/武満徹:めぐり逢い/村井邦彦:翼をください/弾厚作:君といつまでも/谷村新司:昴/平井夏美:瑠璃色の地球/中村八大:上を向いて歩こう(以上廣瀬充編) 他カントキューブ【隠岐速人(テノール) 高橋洋介(バリトン) 後藤春馬(バスバリトン)】木村裕平 廣瀬充(以上ピアノ)キングレコードKICC-1617 ¥3300(税込)ショスタコーヴィチ:祝典序曲、交響曲第5番太田弦(指揮)九州交響楽団収録:2023年9月、豊中市立文化芸術センター(ライブ)ナミ・レコードWWCC-8014 ¥3300(税込)収録:2024年4月、アクロス福岡シンフォニーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00853 ¥3850(税込)ショパン シマノフスキ:ピアノ作品集/ジョナタン・フルネルメンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲&「スコットランド」/延原武春&日本センチュリー響メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調、交響曲第3番「スコットランド」延原武春(指揮)日本センチュリー交響楽団小栗まち絵(ヴァイオリン)日本のうた/カントキューブショスタコーヴィチ:交響曲第5番、祝典序曲/太田弦&九響

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