eぶらあぼ 2024.8月号
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第373回 定期演奏会 10/3(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp62ごほうびクラシック 第11回 加耒 徹 バリトン・リサイタル映画音楽からオペラまで、俊英の美声に酔いしれる至福の1時間 古楽、オペラ、歌曲、ミュージカルナンバーなど、あらゆるジャンルを歌いこなす注目のバリトン、加耒徹が第一生命ホールの人気シリーズ「ごほうびクラシック」に登場。ビゼーの《カルメン》より〈闘牛士の歌〉からはじまり、武満徹の歌曲、往年の映画音楽の名曲、そしてメノッティのミニオペラ《電話》まで、1時間とは思えないほど大充実のプログラムを披露する(ピアノ:松岡あさひ)。 加耒は同ホールで開催された林美智子プロデュースによる「室内楽ホール de オペラ」に出演して好評を博したが、有名なアリアだけではないオペラの魅力を届けたかったとのこと。そこでソプラノの宮地江奈を迎え、プロポーズを電話に阻まれる若い男女のコミカルなやり取りが楽しい全1幕のミニオペラ《電話》(日本語字幕付)を軸にプログラムを構成した。 《電話》は1947年にアメリカで初演年の今年、10月にさらなる再演を決断。コロナ禍中の川崎での同作はもちろん大切な機会だったが、記念の年の定期、しかも就任公演時と同じ東京オペラシティでの再演は、彼らの9年半の総決算ともなる、覚悟の選曲のはず。 高関は若い頃にチェコ・フィル等の同作録音を聴きまくり、慣例的な譜面の改編などを聴き取り、逐一スコアにメモしてきたそうで、それらを踏まえた「高関版」というべき独自の譜面も用意してきた。理知的にして熱狂的。耳のきこえされた作品だが、アメリカといえば映画ということで、『ニュー・シネマ・パラダイス』より〈愛のテーマ〉(モリコーネ)、『ひまわり』より〈失われた愛〉(マンシーニ)、『慕情』のテーマ曲(フェイン)など、プログラム前半には映画音楽の歴史に残る名曲たちが並ぶ。同じく前半に置かれた武満の〈翼〉〈明日ハ晴レカナ、曇リカナ〉〈小さな空〉といった歌曲もそうだが、クラシックに限らずさまざまな歌い手たちによってつむがれてきたメロディを、加耒がどのように歌うのか。そこには、広い視野で音楽を捉え、知的探究心をもって作品に取り組んできた加耒の音楽家としての豊かな経験がそのまま映し出されることだろう。高関 健 ©大窪道治なくなったスメタナが、母国チェコの独立への思いを詰め込んだ大傑作。その神髄に迫る、アニバーサリーを象徴する名演がここに実現する。文:林 昌英文:原 典子11/16(土)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 https://www.triton-arts.net高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団メモリアルイヤーに聴く名匠渾身の「わが祖国」 マエストロ高関健とスメタナ「わが祖国」。彼はチェコ・フィルの演奏に触れて以来この曲を愛し、指揮者として節目の度にとりあげてきた。2015年の東京シティ・フィル常任指揮者の「就任披露演奏会」に選んだ演目も「わが祖国」。このとき、誤解を恐れずに言えば、想像をはるかに超える高水準かつ感動的な名演が実現して、彼らの明るい未来を確信させるパフォーマンスに会場も沸いた。果たして、それから9年、楽団の機能面は飛躍的に向上、内容も充実、なにより心に深く訴える演奏が連続し、聴衆の熱い支持を得るに至っている。 高関と同楽団は、21年のフェスタサマーミューザ KAWASAKIで「わが祖国」を再演しており、やはりすばらしい熱演で絶賛された。その際のインタビューでは、定期ではなるべく同じ演目を選ばないようにしていると語っていた。その高関が、スメタナ生誕200

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