eぶらあぼ 2024.8月号
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第658回 定期演奏会〈トリフォニーホール・シリーズ〉 9/21(土)14:00 すみだトリフォニーホール〈サントリーホール・シリーズ〉 9/22(日)14:00 サントリーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp53 トッパンホールが毎年、開館記念日の10月1日に開催してきた「バースデーコンサート」が、今年から「シーズン オープニングコンサート」と名を変え、新たなスタートを切る。第1回はベートーヴェンに焦点をしぼり、日本の俊英アーティスト5人が、この偉大な作曲家のさまざまな顔に光を当てていく。 開幕は、笹沼樹と兼重稔宏によるチェロ・ソナタ第4番。トッパンホールのプログラミング・ディレクターの西巻正史が、ショッキングな出来事に日本がみまわれた今年元日の夜に手にとったのは、この曲の楽譜だったという。闇笹沼 樹 ©Taira Tairadate兼重稔宏 ©Taira Tairadateら大成功を収め、ブルックナーの名を世に知らしめた。佐渡は今年2月にウィーン楽友協会大ホールでのトーンキュンストラー管の定期でも取り上げ、録音もされた。準備万端で今回の演奏会に臨むことになる。昨年新日本フィルを指揮した交響曲第4番「ロマンティック」は、オーケストラの重量感と厚みのある豊かな拡がりを持った音が批評家から絶賛された。 佐渡がムジークフェラインの優れた音響の中でトーンキュンストラー管と10年にわたり演奏を重ね会得したウィーン伝統の音は、新日本フィルとのコンサートにも生かを呪いたくなるあの夜に、心を照らし、灯をともすような音楽。他者を信じることを希求し、思索を続けたベートーヴェンこそ、そのような音楽の作り手だった。 続いて山根一仁と大井駿による、若き日の意欲的なヴァイオリン・ソナタ第1番と第2番。トッパンホールと縁の深い出演者の中で、ただ一人初登場となる大井がフォルテピアノを弾くのも興味深い。新シーズンのトッパンホール山根一仁 ©K.MIURA大井 駿 ©Great The Kabukichoされ、豊潤な響きとなって花開くことだろう。©Peter Rigaud c/o Shotview Artists大西宇宙 ©Simon Paulyにはシュタイアーやベザイデンホウトなど、優れたフォルテピアノ奏者たちが登場するから、その予告篇でもある。 後半は、華やかなスター性をもった大西宇宙が兼重のピアノで歌う〈アデライーデ〉と〈遥かなる恋人に寄す〉に始まり、最後は再び笹沼と兼重のデュオによるチェロ・ソナタ第3番。この雄渾な音楽は、きっと行く手を照らしてくれることだろう。 ベートーヴェンと、明日への一歩を。文:長谷川京介文:山崎浩太郎10/7(月)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.comトッパンホール24周年 2024/25シーズン オープニングコンサートベートーヴェン―その多様さを聴く新シーズン幕開けは俊英たちと描く楽聖の軌跡佐渡 裕(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団音楽の都伝統のサウンドを追い求めて 昨年、新日本フィル音楽監督に就任した佐渡裕は、「ウィーン・ライン」を柱に掲げ、オーケストラの土台を築くウィーンゆかりの作曲家を積極的に取り上げている。9月の定期では、昨年に続きハイドンの交響曲と生誕200年を迎えるブルックナーの交響曲を指揮する。 佐渡の新日本フィル・デビューは、1988年カザルスホールでのハイドン交響曲全曲演奏会シリーズ第3回で、第7番「昼」・第8番「晩」・第9番を指揮した。即ち、今回の第6番「朝」で三部作が完成することになる。「朝」は当時流行っていた、交響曲と協奏曲の中間にあたるコンチェルトーネのような性格をもち、ソロ楽器が活躍する楽しい作品。佐渡はトーンキュンストラー管弦楽団とCD録音も行っており、得意とする曲でもある。 交響曲第7番はブルックナーの特長である対位法と旋律美が絶妙にブレンドされた交響曲の金字塔。初演か

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