eぶらあぼ 2024.8月号
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第549回日経ミューズサロン アンティ・シーララ ピアノ・リサイタル北欧の至宝が紡ぐ楽聖の最終章 これまでに数多くの名演奏家が出演してきた「日経ミューズサロン」。第549回の出演者はアンティ・シーララである。1997年のウィーン・ベートーヴェン国際コンクールで第1位(最年少)、2003年リーズ国際ピアノコンクール優勝という快挙を重ね、すでに名匠の域に達しているピアニストだ。これまでにヘルベルト・ブロムシュテット、エサ=ペッカ・サロネンらの指揮のもと、ベルリン・ドイツ響、チューリヒ・トーンハレ管、ウィーン響、N響に読響など世界各国の一流オーケストラと共演してきた。 「公演の主旨はリラックスしていただくことですので、大曲ではなく、耳馴染みの良い作品を選び、新しい本との出会いのような喜びを感じてもらえればと考えました」 「音に包まれる感じの」Hakuju Hallで、「聴衆と自然に共有できるようなコンサートを」と語る彼女。初共演にも注目しつつ、“知られざる名曲と出会う喜び”を享受したい。第173回 リクライニング・コンサート瀬崎明日香(ヴァイオリン) & イリーナ・メジューエワ(ピアノ)10/11(金)15:00 19:30 Hakuju Hall問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 https://hakujuhall.jp50Interview瀬崎明日香(ヴァイオリン)尊敬するピアニストと奏でる“隠れた名曲” ソロや室内楽等を国内外で意欲的に行い、「コバケンとその仲間たちオーケストラ」のコンサートミストレスも務めるヴァイオリンの瀬崎明日香。彼女はこの10月、Hakuju Hallの「リクライニング・コンサート」で、ロシア出身の名ピアニスト、イリーナ・メジューエワとのデュオ・リサイタルを行う。 当ホールには意外にも初出演。そのタイミングで絶好のパートナーと巡り合った。 「ソロのお話をいただいた時に偶然、音楽に対する誠実さに共感し尊敬の念を抱いていたメジューエワさんを紹介されたので、共演をお願いしました。彼女は作品の内側にあるものを大切にする演奏家だと思うので、私もそうした表現を目指したいですね」 それゆえプログラムはすべてロシアもの。しかも演奏機会の少ない作品が中心だ。 「メジューエワさんはメトネルを中心に埋もれた作品の紹介に尽力されていますし、私も隠れた作品を掘り下げていきたいと考えていました。ロシアには西洋とは趣の異なる優しさや日本と近しい部分を持った作品が多々ありますので、同世代のメジューエワさんと同志のような気持ちでレパートリーを深めていけたら、そして日本で知られていないロシアの作品を紹介できればと 彼はソロに協奏曲、室内楽それぞれで幅広いレパートリーを誇るが、最も大切にしている作曲家はベートーヴェン。特にピアノ・ソナタはこれまでに全曲演奏も含め何度も披露してきた。なかでも今回のリサイタルで取り上げる後期の三大ソナタは演奏機会が多く、録音もしており、いずれも高い評価を受けている。猛暑となりそうなこの夏、卓越した演奏で名曲を堪能しよう。8/5(月)18:30 日経ホール問 日経公演事務局03-5227-4227 https://stage.exhn.jpの思いでプログラムを組みました」 ロシア5人組の中でも隠れがちなキュイの2曲で始まる構成は実に興味深い。 「キュイのソナタと『オリエンタル』は美しく聴きやすい作品。父がフランス人のキュイの曲にはそうしたテイストが含まれていますので、今フランスのレアな作品に挑戦している私は親しみやすさを感じます。次の『シェエラザード』第3楽章は珍しいクライスラー編。クライスラーお馴染みの小品とは違った奥行きのある世界を持っています。ここはそんな一面を知ってもらいたいなと。グラズノフの『瞑想曲』はメロディが綺麗で聴き応えがあり、今回最も有名なラフマニノフの『ヴォカリーズ』は人声と楽器の魅力をともに表現したい。そしてメトネルのソナタ第1番。メトネルは“ロシアのブラームス”と呼ばれるだけあって、構成感がある中に独自の魅力が隠れています。私もちょうど演奏したいと思っていたところにメジューエワさんとの出会いがあったので、ぜひ入れようと思いました」 この選曲には「リクライニング」も意識されている。取材・文:柴田克彦文:長井進之介©Tibor Bozi©studio MaaR

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