eぶらあぼ 2024.8月号
48/145

45Interviewシャルル・リシャール=アムラン(ピアノ)2人のアムランが織りなす唯一無二のピアノデュオ 2015年のショパンコンクールで第2位に入賞したシャルル・リシャール=アムランを知ったとき、「もしやあのマルク=アンドレ・アムランの息子?」と思った方は少なくないだろう。実のところ血縁関係はないというが(出身地・ケベックでこの苗字は珍しくないらしい)、来る9月、二人による2台ピアノ公演が神奈川県立音楽堂で実現する。 「マルク=アンドレは超絶技巧作品の名手として1990年代半ばから注目されたので、89年生まれでピアノを習う僕は、彼の親戚かと聞かれ続けて育ちました。一方、9年前に僕がコンクールに入賞して以降、マルク=アンドレのほうも僕と親戚かと聞かれるようになったそうです(笑)。 彼は最高峰のテクニックの持ち主であると同時に、優れたピアノの声と知性、洗練された音楽性を持ち合わせています。あるとき彼を紹介してもらえることになり、1時間くらいランチをしながら会うことになったのですが、気づいたら3、4時間も話し込んでいました!」 “2人のアムラン”公演は、思いついたところで他人がやろうとは言い出しにくい企画に思えるが、実際、やりたいと提案したのはシャルルだそうだ。 「僕も彼も幅広い音楽の影響を受け、ケベックの人特有のユーモアのセンスも共通していたので、すぐ打ち解けたをベースにした箏曲家・半田弘の「さくら替手五段」から、坂本龍一「戦場のメリークリスマス」、そして自作(今野玲央名義)「Deep Blue」まで多彩。独自のグルーヴが、古典に興味があってもなくても、箏の世界をスタイリッシュに楽しませてくれるはず。共演はピアノのロー磨秀(マシュー)とチェロの伊藤ハルトシ。昨年のアルバム『GRID//OFF』でも共演している仲間たちだ。9/14(土)15:00 三鷹市芸術文化センター 風のホール問 三鷹市スポーツと文化財団0422-47-5122 https://mitaka-sportsandculture.or.jpのです。やがて、いつか共演できないかと提案したところ、喜んで受け入れてくれました。2022年にケベックの音楽祭でモーツァルトの2台ピアノのための協奏曲で共演し、これがうまくいったので、今度は2台ピアノ公演をすることになりました」 モーツァルトの定番曲やグレインジャー「ガーシュウィンの歌劇《ポーギーとベス》による幻想曲」に加え、珍しいショパンやメトネルの2台ピアノ曲も取り上げる。“知られざる名曲好き”の彼ららしいプログラムだ。 「ショパンは僕にとって大切な作曲家ですし、メトネルは聴くほど真の魅力に取り憑かれる名曲です。音楽の喜びは、娯楽として楽しむことだけでなく、新たな発見にもあると思うので、華やかでなじみやすい曲と初めて聴くような曲をバランスよく取り入れました」 ソロでは感じられない「大スケールなステレオ効果」を存分に味わってほしいと話す。 「20本の指で巨大なサウンドスケープが生まれるでしょう。ヴィルトゥオーゾ開館70周年記念/音楽堂ヘリテージ・コンサート2人のアムラン デュオリサイタルマルク=アンドレ・アムラン & シャルル・リシャール=アムラン9/14(土)15:00 神奈川県立音楽堂問 チケットかながわ0570-015-415 https://www.kanagawa-ongakudo.com他公演 9/10(火) 福岡シンフォニーホール(092-725-9112) 的な作品も多いですが、なにしろ名手マルク=アンドレと一緒なので何の不安もありません!」 故郷カナダで好評を博す“2人のアムラン”企画が日本で聴ける、嬉しい機会だ。LEO ©NIPPON COLUMBIA取材・文:高坂はる香©Elizabeth Delage文:宮本 明LEO 箏リサイタル SHIFT ~新しい伝統~新世代の名手が紡ぐ百花斉放の響き 古典の世界に新しい地平を拓くLEOの音楽は、まさに、公演名の副題にもなっている「新しい伝統」だ。でもそれは「伝統」を保守的な旧弊と決めつけて否定するものではない。むしろ逆で、彼がいつも心に留めていると話す、日本の伝統芸能の言葉「守破離(しゅ・は・り)」に集約されている。師の教えを「守」り、それを「破」り、伝統から「離」れて自分の表現を見い出してゆく。彼の中ではそれが螺旋状にループして、次のフェイズへと昇華していく。 プログラムは、おなじみの日本古謡

元のページ  ../index.html#48

このブックを見る